急性毒性
経口
ラットを用いた急性経口毒性試験のLD50値40 mg/kg、670 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008))、 約2,000 mg/kg (OECD TG 401、GLP)(厚労省報告 (Access on October 2008)) との記述がある。OECD TG 401及びGLP準拠試験のLD50値約2,000 mg/kgが区分4の範囲内にあり、また、区分4に存在するデータが多いことから、区分4とした。
経皮
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値1,000-1,580 mg/kg (ATSDR (1999)) と記述されているので、区分4とした。なお、ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値が740-2,670 mg/kg (HSDB (2005))との記述があるが、一次文献(Toxicol. Appl. Pharmacol. 42(1977))を確認した結果、本物質ではなくフェノールについての記述であったので、採用しない。
吸入
吸入(ミスト): データがないので分類できない。
吸入(蒸気): ラットを用いた4時間吸入ばく露試験(OECD TG 403)のLC50値2.05 mg/L(換算値390 ppm)(IUCLID (2000))と記述されている。本物質の飽和蒸気圧濃度(20℃)は2,270 ppmなので、気体基準を適用し、区分2とした。ATSDR(1999)には、ラットを用いた4時間吸入ばく露試験において908 ppmで死亡が見られなかったとの記述がある。
吸入(ガス): 本物質はGHS定義上の液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
皮膚腐食性・刺激性
動物については、ウサギの皮膚への直接投与試験で「紅斑、浮腫、変色等のsevereな皮膚損傷を伴う腐食性」 (ATSDR (1999)) と記述されている。ヒトについては、「接触性皮膚炎を生じる懸念」(HSDB(2005)) と記述されている。以上から、区分1とした。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
皮膚腐食性物質であり、「眼を強く刺激し、眼に入ると発赤、痛み、かすみ眼などを生じる」(環境省リスク評価第6巻(2008))、ウサギの眼に対して「腐食性」(ATSDR (1999))との記述に基づき、区分1とした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:データがないので分類できない。なお、ヒトについて「接触性皮膚炎を生じる懸念」(HSDB(2005))との記述がある。
呼吸器感作性:データがないので分類できない。
生殖細胞変異原性
体細胞in vivo変異原性試験(マウスを用いた小核試験)で「陰性」 (IUCLID (2000)) との記述に基づき、区分外とした。体細胞in vivo遺伝毒性試験(マウス骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験)は「陰性」(ATSDR (1999))であるが、in vitro変異原性試験(チャイニーズ・ハムスター培養細胞を用いた染色体異常試験 (OECD TG 473、GLP))は「陽性」(厚労省報告(Access on October 2008))と記述されている。
発がん性
主要な国際的評価機関による評価がなされていないため分類できない。 なお、マウスやラットを用いた試験で「発がんプロモーション作用がある」が、「イニシエーション作用を有するという証拠はない」(EHC 93(1989))と記述されている。
生殖毒性
ラットを用いた飲水投与試験で「一腹あたり胎仔数の減少、死産仔数の増加が見られた」(環境省リスク評価 第6巻(2008))と記述されており、一次文献(Environ. Health Perspect. 46(1982))には「ばく露された母動物の体重増加、赤血球数などの血液指標に影響はない」旨の記述があることから、区分1Bとした。ラットを用いた飲水投与試験で「催奇形性は見られなかった」(EHC 93(1989))との記述がある。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ヒトについては、List1の情報源である環境省リスク評価第6巻(2008)に、「気道を強く刺激し、経口摂取すると脱力感、し眠、痙攣、吸入すると咳、息切れ、咽頭痛などを生じる。エーロゾルを吸入すると、肺水腫を起こすことがある」との記述、List2の情報源であるHSDB (2005)に、急性ばく露で「中枢神経系への影響、肺浮腫」との記述がある。また、ラットを用いた吸入ばく露試験(OECD TG403)で「肺組織の肉眼的変化」(IUCLID (2000))が区分1のガイダンス値の範囲内で見られた。以上から、区分1(呼吸器系、中枢神経系)とした。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットを用いた反復経口投与試験で「肝臓重量の高値、肝細胞肥大、振戦、自発運動の低下、歩行異常」(厚労省報告 (Access on October 2008))が見られたが、区分2のガイダンス値の範囲外での影響である。マウスを用いた経口投与試験において、区分2のガイダンス値の範囲内の用量で「肝臓、脾臓及び脳の重量の低下」が見られたが、「形態や組織に異常は認められない」(ATSDR(1999))旨、記述されている。他のばく露経路による試験データがないので、分類できない。
吸引性呼吸器有害性
40℃での動粘性率は14 mm2/s以下と推算されるが、本物質は炭化水素ではないため、分類できない。