安全データシート

クロロ酢酸

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: クロロ酢酸
  • CB番号: CB2854397
  • CAS: 79-11-8
  • EINECS番号: 201-178-4
  • 同義語: クロロ酢酸,モノクロロ酢酸

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: カルボキシメチルセルロース原料、2,4-ジシクロフェノキシ酢酸原料、チオグリコール酸及び両性界面活性剤原料 (NITE初期リスク評価書)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
H27.10.31、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改定版 (ver1.1): JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
健康に対する有害性
急性毒性(経口)   区分3
急性毒性(経皮)   区分2
急性毒性 (吸入:粉塵、ミスト)   区分2
皮膚腐食性/刺激性   区分1A
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分1
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分2 (心臓、肝臓、腎臓)
分類実施日(環境有害性)
平成24年。政府向けGHS分類ガイダンス (H22.7版) を使用 GHS改訂4版を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性 (急性)   区分1
水生環境有害性 (長期間)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS05GHS06GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H301 + H311 + H331 飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合や吸入した場合は有毒。
H314 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷。
H335 呼吸器への刺激のおそれ。
H400 水生生物に非常に強い毒性。
注意書き
安全対策
P260 粉じんを吸入しないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
P301 + P330 + P331 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
P304 + P340 + P310 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 直ちに医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P361 + P364 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P391 漏出物を回収すること。
保管
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Monochloroacetic acid
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C2H3ClO2
  • 分子量: 94.50 g/mol
  • CAS番号: 79-11-8
  • EC番号: 201-178-4
  • 化審法官報公示番号: 2-1145
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 ただちに眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ場合は水を飲ませる(多くても2杯)。ただちに医師の診察を受けること。1時間以内に治療が受けられないという例外的な状況のみ、嘔吐させ(相手に完全に意識のある場合のみ)、活性炭(10%懸濁液に20~40g)を投与してできるだけ早く医師の診察を受ける。 中和させようとしないこと。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
塩化水素ガス
可燃性。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: いかなる場合も、ほこりを生じさせたり吸い込んだりしないようにすること。触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 慎重に行うこと。適切に廃棄すること。関連エリアを清掃のこと。 ほこりが生じないようにすること。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1A: 可燃性、急性毒性カテゴリー1および2 / 猛毒性危険物
保管条件
密閉のこと。 乾燥。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
TWA: 0.5 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 密着性の高い安全ゴーグル
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ラテックス製手袋
最小厚: 0.6 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Lapren® (KCL 706 / Aldrich Z677558, Size M)
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.4 mm
破過時間: 30 min
試験物質:Camatril? (KCL 730 / Aldrich Z677442, Size M)
身体の保護
耐酸性の防護衣類
呼吸用保護具
ほこりが生じた際に必要。 次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。
DIN EN 143、DIN 14387および使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
潮解性結晶 (Merck (15th, 2013))
無色~白色 (HSDB (2015))
臭い
酢に類似した鋭い臭い (HSDB (2015))
臭いのしきい(閾)値
0.045 ppm (ACGIH (7th, 2006))
pH
< 1 (800g/L) (20℃) (GESTIS (2015))

融点・凝固点

61~63℃(商用) (α、β、γ型があり、それぞれの融点は63℃、 55~56℃、 50℃である。) (Merck (15th, 2013))

沸点、初留点及び沸騰範囲

189℃ (Merck (15th, 2013))

引火点

259°F (126 ℃) (密閉式) (NFPA (13th, 2002))

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

データなし

燃焼性(固体、気体)

データなし

燃焼又は爆発範囲

下限: 8.0 vol% (NFPA (13th, 2015))

蒸気圧

0.065 mmHg (25 ℃) (HSDB (2015))

蒸気密度

3.26 (空気 = 1) (HSDB (2015))

比重(相対密度)

1.58 (20℃/20℃) (Sax (12th, 2012))

溶解度

858,000 mg/L (25℃) (HSDB (2015)) エタノール、ジエチルエーテル、ベンゼン、クロロホルム: 可溶 四塩化炭素: ほとんど溶けない (HSDB (2015))

n-オクタノール/水分配係数

log Pow: 0.34 (ICSC (2003))

自然発火温度

932°F以上 (500℃以上) (NFPA (13th, 2002))

分解温度

データなし

粘度(粘性率)

2.16 mPa・sec (70℃) (HSDB (2015))

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
引火点より下のおよそ15ケルビンからの範囲は危険とみなされている。
可燃性有機物質及び製剤に概ね該当:微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性が
通常想定される。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

次との反応で有毒ガスや煙を生じる
炭酸ナトリウム
過酸化水素
フルフリルアルコール
次との反応で爆発のおそれ
過酸化水素
硫化物
強酸化剤
還元剤
塩基類
アミン
次により発熱反応を生じる
金属
硫化物
炭酸カリウム
炭酸カルシウム

10.4 避けるべき条件

強力な熱

10.5 混触危険物質

強酸化剤

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
GHS分類: 区分3 ラットのLD50値として、55~580 mg/kgの範囲内で11件 (55~165 mg/kg (IPCS, PIM 352)、55~200 mg/kg (ECETOC TR081 (2001))、55~580 mg/kg (ACGIH (7th, 2006))、90.4~450 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008))、55 mg/kg (EU-RAR (2005)、環境省リスク評価第3巻: 暫定的有害性評価シート (2004))、76.2 mg/kg (ACGIH (7th, 2006)、ECETOC JACC 038 (1999)、NTP TR396 (1992))、90.4 mg/kg (EU-RAR (2005)、SIDS (2004)、ECETOC JACC 038 (1999))、100~300 mg/kg (SIDS (2004))、102 mg/kg (ECETOC JACC 038 (1999))、108 mg/kg (NTP TR396 (1992))、277.5 mg/kg (EU-RAR (2005)、SIDS (2004))) の報告がある。最も多くのデータ (7件) が該当する区分3とした。なお、4件のデータは複数データをまとめた値であるため該当数に含めずに分類した。
経皮
GHS分類: 区分2 ラットのLD50値として、145 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2006))、305 mg/kg (EU-RAR (2005)、SIDS (2004)、ECETOC JACC 038 (1999)) との2件の報告がある。区分2及び区分3にそれぞれ1件づつ該当するので、ラットについては、LD50値の最小値が該当する区分2となる。ウサギのLD50値として、178 mg/kg (SIDS (2004))、230 mg/kg (IPCS, PIM 352)、250 mg/kg (EU-RAR (2005)、SIDS (2004)、ECETOC JACC 038 (1999)) との3件の報告がある。1件が区分2、2件が区分3に該当するので、ウサギについては、最も多くのデータが該当する区分3となる。ラットとウサギの区分を比較し、危険性の高いラットの区分を採用し、区分2とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。なお、ラットのLC50値 (1時間) として、> 66 ppm (4時間換算値: > 33 ppm) との報告 (初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2005)、SIDS (2004)) があるが区分を特定できない。20℃における飽和蒸気圧濃度 (137 ppm) (EU-RAR (2005)) よりLC50値が低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 区分2 ラットのLC50値 (4時間) として、0.18 mg/Lとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2006)、EU-RAR (2005)、SIDS (2004)) に基づき、区分2とした。なお、20℃における飽和蒸気圧濃度 (0.53 mg/L) (EU-RAR (2005)) よりも低いが、試験はエアロゾルで行われたとの記載 (ACGIH (7th, 2006)) に基づき、ミストの基準値を適用した。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

GHS分類: 区分1A 本物質は強酸性である (pH < 1 (800 g/L 20℃) (GESTIS (2015)))。ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、500 mgを24時間の閉塞適用した結果、2匹が死亡し、重度の紅斑および浮腫がみられ皮膚一次刺激指数は7.66 (最大値8) であった (ECETOC JACC 38 (1999)) との報告や、本物質の75%溶液0.5 mLを適用した結果30秒後に壊死がみられたとの報告がある (SIDS (2009))。その他に、ラットやマウスを用いた試験において本物質適用による腐食性が報告されている (EU-RAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008))。また、ヒトの接触事故により化学火傷を引き起こしたとの報告が複数ある (EU-RAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008))。以上より、ウサギにおいて適用後30秒後に壊死がみられたことから区分1Aとした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Corr. 1B H314」に分類されている (ECHA CL Inventory (2015))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

GHS分類: 区分1 ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質100 mgを0.9%食塩水0.01 mLに溶解して適用した結果腐食性がみられたとの報告や、本物質の高濃度溶液を適用した結果腐食性がみられたとの報告がある (EU-RAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008)、ECETOC JACC 38 (1999))。また、本物質は皮膚腐食性/刺激性の区分で区分1Aに分類されている。以上より区分1とした。

呼吸器感作性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ウサギを用いた皮膚感作性試験 (Open epicutaneous試験) で感作性なしとの報告 (EU-RAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008)、ECETOC JACC 38 (1999)) があるが、ガイダンス従い分類に用いなかった。

生殖細胞変異原性

GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウス骨髄細胞の染色体異常試験で陽性及び陰性の結果 (初期リスク評価書 (2008)、ECETOC JACC 038 (1999))、マウスの肝臓、脾臓、十二指腸、胃のDNA損傷試験及びラットの肝臓のDNA損傷試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2005)、ECETOC JACC 038 (1999))。In vitroでは、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性結果があるが、それ以外のデータ、すなわち、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、遺伝子突然変異試験 (HGPRT)、DNA損傷試験で陰性の結果である (初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2004)、EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2006)、ECETOC JACC 038 (1999)、NTP TR396 (1992))。なお、in vivoのマウス骨髄細胞染色体異常試験の陽性結果については、十分な評価ができないと記載されている (ECETOC JACC 038 (1999))。また、SIDS (2004)、EU-RAR (2005)、ECETOC JACC 038 (1999) ではいずれも本物質に変異原性はないと結論している。

発がん性

GHS分類: 分類できない ヒトでの発がん性に関する情報はない。実験動物では、ラット、又はマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験において、ラット、マウスの雌雄ともに対照群と比べ生存率の低下がみられる用量 (ラット: 30 mg/kg/day、マウス: 100 mg/kg/day) まで投与しても、腫瘍発生の増加はみられなかった (ACGIH (7th, 2006)、EU-RAR (2005)、NITEI初期リスク評価書 (2008)) との記述、並びにマウスに本物質を46.4 mg/kg/dayで21日間強制経口投与後、さらに17ヶ月間混餌投与 (149 ppm: 24.8 mg/kg/day相当) した試験でも腫瘍発生がみられなかった (ACGIH (7th, 2006)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との記述がある。また、経皮経路では、雌マウスに本物質2 mg/動物を3回/週、63週間皮膚へ塗布した結果、皮膚の腫瘍は乳頭腫を含め発生しなかった (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2006)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との記述、及び雌マウスに同0.5 mg/動物を1回/週、63週間皮下注射した結果、投与群では局所の肉腫が3/50例 (対照群: 1/50例) にみられたが、統計的に有意な増加ではなかった (EU-RAR (2005)、ACGIH (7th, 2006)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との記述がある。すなわち、実験動物では経口及び経皮経路で発がん性を示す証拠はないが、吸入経路での発がん性に関する情報はない。ACGIHは本物質の発がん性分類をA4としている (ACGIH (7th, 2006)) が、他の国際機関による分類結果はない。 以上、区分外とするにはヒトで利用可能な情報がないことも含め、データが不足していると判断し、本項は分類ガイダンスに従い分類できないとした。

生殖毒性

GHS分類: 分類できない ヒトの生殖影響に関する情報はない。 実験動物では、妊娠ラット (例数不明) の器官形成期 (妊娠6~15日) に強制経口投与した結果、最高用量の140 mg/kg/dayで、母動物に体重増加抑制、胎児に心血管系の奇形 (主に左胸心 (levocardia)) がみられたと報告されている (ACGIH (7th, 2006)、EU RAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008))。しかし、本報告は原著確認の結果、学会の講演要旨としての簡略な記述のため分類に用いるには不適切な試験結果と判断された。この他、妊娠ラット (10匹/群) の妊娠期間を通して飲水投与した発生毒性試験では、母動物、胎児ともに異常はみられていない (ACGIH (7th, 2006)、EU RAR (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との記述、並びにin vitroの胎児培養実験の結果、神経管欠損、心臓奇形など奇形発現頻度の増加がみられた (EU RAR (2005)、ACGIH (7th, 2006)) との記述がある。以上、本項はデータ不足のため、分類できないとした。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

GHS分類: 区分1 (神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓) 本物質は、腐食性を有し、眼、皮膚、気道に激しい局所刺激症状を引き起こす。本物質による複数のばく露中毒例 (経口、吸入、経皮を含む) が報告されている。吸入ばく露で気道刺激性、肺水腫、経口ばく露では中等度~重度の急性全身毒性、経皮ばく露では重度の急性全身毒性を示す (以上、ACGIH (7th, 2006))。中毒例のうち多くの事例は、経皮ばく露によるものであり、8件が死亡例、15件が生存例であるが、いずれも臨床症状ならびに (血液) 生化学的特徴は類似する。すなわち、急性症状としては、皮膚腐食性による火傷、皮膚傷害に始まり、全身毒性が現れる。全身毒性発症の早期には、嘔吐、下痢を呈し、その後、興奮、見当識障害、痙攣、昏睡などの中枢神経系障害、重度の代謝性アシドーシス、低カリウム血症、低カルシウム血症、ミオグロビン血症、白血球増加症、(血液) 凝固障害、高血糖、血圧低下、不整脈、頻脈を伴う心臓障害、心筋障害、心血管ショック、それに起因する腎不全 (12時間以内との記載あり)、腎尿細管壊死などを引き起こす (ECETOC TR081 (2001)、ECETOC JACC 038 (1999)、ACGIH (7th, 2006)、初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2006)、EU-RAR (2005)、環境省リスク評価第3巻: 暫定的有害性評価シート (2004))。 実験動物では、ラットの55~580 mg/kgの経口投与で、呼吸数減少、間代性・強直性痙攣、ラット、マウス、ウサギの経口投与または経皮適用で、神経行動学的影響や前肢の麻痺など神経毒性影響が報告されている。ラット、マウス、ウサギの経皮適用で重度の毒性が認められ、40%溶液0.5 mLの経皮適用では、表皮及び内皮組織の膠原線維束の変性、急性全身影響として肝臓の肝細胞傷害、腎不全、糖新生障害、アンモニア代謝障害などを引き起こすとの報告がある (EU-RAR 52 (2005)、初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2006)、EU-RAR (2005)、SIDS (2004))。 以上より、本物質は中枢神経系及び末梢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓に影響を与え、区分1 (神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓) とした。なお、中枢神経系及び末梢神経系をまとめ「神経系」、また、肝臓、腎臓への影響については、代謝や血液系などに起因した影響とも考えられるが、本物質投与により急性的に現れる臓器障害であり、区分対象とした。 新しい情報を追加し旧分類を見直した。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

GHS分類: 区分2 (心臓、肝臓、腎臓) ヒトに関する情報はない。 実験動物では、ラットを用いた13週間強制経口投与毒性試験において、60 mg/kg/day (90日換算: 43 mg/kg/day) 以上で心筋症、心筋症による死亡、血清BUN・ALT・ASTの増加、肝臓・腎臓の相対重量増加がみられた (NTP TR396 (1992)、初期リスク評価書 (2008)、ECETOC JACC 038 (1999)、EU-RAR (2005))。また、ラットを用いた90日間反復経口投与毒性試験 (飲水投与) において、19 mg/kg/dayで肝臓の絶対重量減少、肝臓門脈域の胆管増殖、浮腫、炎症性細胞増加が報告されている (初期リスク評価書 (2008)、ECETOC JACC 038 (1999)、EU-RAR (2005))。また、単回投与において腎尿細管壊死などがみられている。以上のように心臓、肝臓、腎臓に対する影響が区分2の範囲でみられた。 したがって、区分2 (心臓、肝臓、腎臓) とした。

吸引性呼吸器有害性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
止水式試験 LC50 - Poecilia reticulata (グッピー) - 369 mg/l - 96 h
備考: (ECHA)
ミジンコ等の水生無脊
止水式試験 EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 74.2 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(OECD 試験ガイドライン 202)
藻類に対する毒性
止水式試験 ErC50 - Desmodesmus subspicatus(セネデスムス・サブスピカ
トゥス) - 0.033 mg/l - 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)
止水式試験 最大無影響濃度 - Desmodesmus subspicatus (緑藻) - 0.006 mg/l
- 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 28 d
結果: 69 % - 易分解性。
備考: (ECHA)

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1751    IMDG (海上規制): 1751    IATA-DGR (航空規制): 1751

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Chloroacetic acid, solid
IMDG (海上規制): CHLOROACETIC ACID, SOLID
ADR/RID (陸上規制): CHLOROACETIC ACID, SOLID

14.3 輸送危険有害性クラス

(8) (8)
ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1 (8)    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

該当
ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

強酸化剤

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9) 名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)

化審法

優先評価化学物質 旧第2種監視化学物質

水道法

有害物質

港則法

その他の危険物・毒物類

航空法

毒物類・毒物 輸送禁止

道路法

車両の通行の制限

毒物及び劇物取締法

劇物

消防法

貯蔵等の届出を要する物質

船舶安全法

毒物類・毒物

大気汚染防止法

揮発性有機化合物 法第2条第4項 (平成14年度VOC排出に関する調査報告) 有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質

海洋汚染防止法

有害液体物質

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

第1種指定化学物質

外国為替及び外国貿易管理法

輸入貿易管理令第4条第1項第2号輸入承認品目「2の2号承認」 輸出貿易管理令別表第1の16の項 輸出貿易管理令別表第2

特定廃棄物輸出入規制法(バーゼル法)

廃棄物の有害成分・法第2条第1項第1号イに規定するもの

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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