急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(6)より、区分4とした。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50:473 mg/kg(MOE初期評価 (2021)、ACGIH (2020)) (2)ラット(雌)のLD50:642 mg/kg(ACGIH (2020)) (3)ラットのLD50(雌):< 720 mg/kg(CLH Report (2010)、EU RAR (2009)) (4)ラットのLD50(雄):720 mg/kg(CLH Report (2010)、EU RAR (2009)) (5)ラットのLD50:735 mg/kg(CLH Report (2010)、EU RAR (2009)、ACGIH (2020)) (6)ラット(雌)のLD50:550~880 mg/kgの間(CLH Report (2010)、EU RAR (2009)、 ACGIH (2020))
経皮
【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。なお、(2)、(3)については、30%DMSO溶液でのデータであるため、根拠データとして採用していない。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)ウサギのLD50:> 2,000 mg/kg(EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (2020))
【参考データ等】 (2)ウサギのLD50:> 900 mg/kg(MOE初期評価 (2021)、EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (2020)) (3)ラットのLD50:300 mg/kg(MOE初期評価 (2021)、EU RAR (2009))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1~3には該当しないが、区分を特定できず、データ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1)ラットのLC50(粉塵、4時間):> 1.8 mg/L(EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (2020)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021)) (2)ラットのLC50(粉塵、4時間):> 1.9 mg/L(MOE初期評価 (2021)、ACGIH (2020))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n = 6)を用いた皮膚刺激性試験(GLP、半閉塞、4時間適用、72時間観察)において、皮膚反応は全くみられなかったとの報告がある(EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。なお、データを見直し、分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n = 6)を用いた眼刺激性試験(GLP、72時間観察)において、24時間後に全例で軽微な結膜発赤がみられたが、72時間後には全ての反応が消失した(24/48/72時間後の角膜混濁スコアの平均:0.3、虹彩炎スコアの平均:0、結膜発赤スコアの平均:0.5、結膜浮腫スコアの平均:0.1)との報告がある(EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)モルモット(n = 10)を用いたMaximisation試験(OECD TG406、GLP、皮内投与:25%溶液)において、惹起後に全例で皮膚反応はみられなかった(EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (8th, 2020)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)In vivoでは、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験(OECD TG475、単回経口投与)で陰性であった(EU RAR (2009)、MOE初期評価 (2021)、ACGIH (8th, 2020)、AICIS IMAP (2013)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021))。 (2)In vitroでは、細菌復帰突然試験で陰性、ほ乳類培養細胞(チャイニーズハムスターV79細胞)を用いた小核試験で弱陽性(+S9)又は陰性(-S9)であった(EU RAR (2009)、MOE初期評価 (2021)、ACGIH (8th, 2020)、AICIS IMAP (2013)、REACH登録情報 (Accessed Sep. 2021)、安衛法変異原性試験 (Accessed Sep. 2021))。
発がん性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)より、体重増加抑制がみられた高用量(41 mg/kg/day)では精巣毒性に起因する雄性不妊が全例にみられ、体重増加抑制のみられない用量(7.9 mg/kg/day)でも受胎能喪失例が1/10例みられたことから、区分1Bとした。
【根拠データ】 (1)雄ラットを用いた混餌投与による生殖毒性試験(0.002~0.05%(換算値:1.6~41 mg/kg/day)、70日間投与後に未処置雌と交配)において、投与期間中に0.05%(換算値:41 mg/kg/day)群で体重増加抑制がみられた以外に一般毒性影響の記述はない。未処置雌と交配させた結果、0.01%(換算値:7.9 mg/kg/day)群の雄1/10例、及び0.05%群の雄全例(10/10例)が雌を妊娠させることができず、受胎能の低下が顕著に認められた。0.05%投与群を70日間休薬維持(通常飼料給餌)し、再度未処置雌と交配させた結果、受胎能の回復が認められた。試験終了時の0.05%群の精巣重量は0.01%群の88%に低下し、7/10例に精細管の精上皮に軽度の傷害が検出された(MOE初期評価 (2021)、ACGIH (8th, 2020)、AICIS IMAP (2013)、CLH Report (2010)、ECHA RAC (Background Doc.) (2011)、EU RAR (2009)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。 (2)ラットを用いた経口及び経皮経路での反復投与毒性試験において、精巣毒性がみられており、精巣は本物質の標的臓器の1つである(特定標的臓器毒性(反復暴露)の項参照)。
【参考データ等】 (3)米国の化学工場で本物質にばく露された90人の男性労働者を対象にして精巣機能への影響を調べた調査では、精巣毒性があると考えられる化学物質へのばく露履歴がない男性労働者を対照群として実施された。その結果、精巣機能への影響はみられず、本物質のばく露が不妊を引き起こしたという証拠もなかった。その後、対照群の例数を増やして再評価した研究でも精巣機能に対する影響は認められなかった(MOE初期評価 (2021)、ACGIH (8th, 2020))。 (4)EU CLP分類(Accessed Sep. 2021)ではRepr. 1Bに分類されている。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1(神経系、精巣)とした。
【根拠データ】 (1)ラット、マウスを用いた単回経口投与試験において、 LD50は550~880 mg/kgであり、致死量付近及びそれ以下の用量で、低活動性、運動失調、接触による冷感、疼痛反射消失、腹部と肛門領域の黄色汚染、前肢の障害、精巣の精子形成低下がみられ、ラットでは、痙攣に次ぐ側臥位、振戦、精巣萎縮がみられたとの報告がある(MOE初期評価 (2021)、AICIS IMAP (2013)、EU RAR (2009)、CLH Report (2010)、ACGIH (2020))。 (2)ラットを用いた単回吸入ばく露試験(4時間)において、0.495 mg/L(区分1の範囲)で、精巣と脊髄への影響がみられたとの報告がある。なお、精巣への影響は精子数の減少等、前肢の神経障害は顕微鏡検査より、多巣性多発性脊髄症によるものとの報告がある(EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、ACGIH (2020))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)より、ヒトのデータでは影響はみられなかったが、(2)~(4)より、動物では神経系、腎臓、雄性生殖器への影響がみられたことから、区分1(神経系、腎臓、雄性生殖器)とした。なお、旧分類で標的臓器とされていた肝臓、血液系については、根拠データで用いられていた物質が混合物であったことから、本分類では採用していない。
【根拠データ】 (1)アメリカの化学工場で本物質にばく露された 90 人の男性労働者を対象にして精巣機能への影響を調べた調査では、精巣機能への影響はみられなかった。また、肝臓や腎臓の機能、赤血球の生成にも影響はなかったとの報告がある(MOE初期評価 (2021)、ACGIH (2020))。 (2)ラットを用いた混餌投与による90日間反復経口投与試験において、100 ppm(6 mg/kg/day(雄)、8 mg/kg/day(雌)、区分1の範囲)以上で、肝臓相対重量増加、腎臓尿細管及び腎乳頭の壊死、精巣に精上皮の脱落による萎縮(雄)が、316 ppm(21 mg/kg/day(雄)、27 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)以上で、腎臓相対重量増加(雄)、精巣相対重量減少(雄)、体重増加抑制(雄)が、10,000 ppm(75 mg/kg/day(雄)、89 mg/kg/day(雌)、区分に該当しない範囲)で血清尿素窒素の増加、体重増加抑制(雌)がみられた。死亡例は316 ppm(15.8 mg/kg/day、区分2の範囲)で死亡又は切迫と殺(8/10例(雄)、3/10例(雌))がみられたとの報告がある。(MOE初期評価 (2021)、ACGIH (2020)、EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、CLH Report (2010))。 (3)ラットを用いた28日間反復経皮投与試験において、60 mg/kg/day(90日換算:18.7 mg/kg/day、区分1の範囲)で精巣絶対・相対重量減少(雄)、精巣の生殖上皮の変性(雄)がみられたとの報告がある(EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、CLH Report (2010)、ACGIH (2020))。 (4)ラットを用いた28日間反復吸入ばく露試験(粉塵、6時間/日、5日/週)において、0.0047 mg/L(90日換算:0.00104 mg/L、区分1の範囲)で運動場所にいる間の覚醒状態の低下(雄)、排尿/排便回数の減少する例数の増加(雄)が、0.0157 mg/L(90日換算:0.00349 mg/L、区分1の範囲)で活動度の低下(雄)、立ち上がり回数の減少(雄)、振戦の発生頻度増加(雄)、顔面の被毛汚染や脱毛の増加(雄)、肝臓重量増加(雌)がみられたとの報告がある(MOE初期評価 (2021)、ACGIH (2020)、EU RAR (2009)、AICIS IMAP (2013)、CLH Report (2010))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。