急性毒性
経口
【分類根拠】 (1) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 574 mg/kg (MAK (DFG) vol.21 (2005)、AICIS IMAP (Access on April 2020)、GESTIS (Access on April 2020)、HSDB (Access on April 2020))
経皮
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(4) の記載はあるが、試験結果など具体的な証拠に基づく確実な情報はなく、分類できないとした。
【参考データ等】 (1) 本物質に関する研究はないが、関連物質の性質から容易に皮膚から浸透し、刺激を起こす可能性がある (MAK (DFG) vol.6 (1994))。 (2) 情報は限られているが、過剰量のばく露は皮膚刺激を起こす可能性がある (AICIS IMAP (Access on April 2020)、NTP TR107 (1978))。 (3) 本物質の皮膚ばく露には皮膚を刺激し、皮膚炎を生じる可能性がある (Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on April 2020))。 (4) 本物質は皮膚と眼に刺激性を有すると考えられている (GESTIS (Access on April 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) の記載はあるが、試験結果など具体的な証拠に基づく確実な情報はなく、分類できないとした。
【参考データ等】 (1) 利用可能なデータは無いが、構造類似物質は眼刺激性を示さない (AICIS IMAP (Access on April 2020))。 (2) 本物質は皮膚と眼に刺激性を有すると考えられている (GESTIS (Access on April 2020))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。データを精査し分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、経口投与したマウス骨髄細胞の小核試験において陰性の報告がある (MAK (DFG) vol. 6 (1994))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性及び陰性 (IARC 48 (1990)、ACGIH (7th, 2019)、MAK (DFG) vol. 6 (1994))、ほ乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、ラット培養肝細胞によるUDS試験で陰性の報告がある (MAK (DFG) vol. 6 (1994))。また、分類に利用可能な標準的な試験法ではないが、マウスの胚を用いた形質転換試験で陽性及び陰性の報告がある (MAK (DFG) vol. 6 (1994))。
発がん性
【分類根拠】 ヒトでの発がん性に関する情報はない。(2)、(3) の実験動物での結果及び (1) の既存分類結果のうち、最新のACGIHの分類結果に基づき区分2とした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCで3 (IARC 48 (1990))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2019))、EU CLPでCarc.2 (EU CLP分類 (Access on April 2020))、MAK (DFG) で2 (MAK (DFG) vol.21 (2005)) に分類されている。 (2) ラット又はマウスに本物質を78週間混餌投与した後、ラットで30週間後、マウスで20週間後に剖検した結果、ラットでは高用量の雄で肝細胞がんの増加傾向がみられたのみであったが、マウスでは雌雄ともに肝細胞がんの用量依存的な増加が認められた (ACGIH (7th, 2019)、NTP TR107 (1978)、IARC 48 (1990))。 (3) C-Ha-ras遺伝子を導入した遺伝子改変マウスを用いた24週間混餌投与試験において、用量依存的な肝臓悪性腫瘍の誘発が認められた (ACGIH (7th, 2019))。
生殖毒性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1 (血液系、肝臓) とした。新たな情報を追加し、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ヒトでは、本物質の主たる影響は、メトヘモグロビン血症であり、唇、指の爪の青色化、頭痛、吐き気、倦怠感の記載がある (NTP TR107 (1978))。 (2) 本物質を甘味料目的で経口摂取後に肝不全 (主に劇症) で死亡した症例 (複数) で、高熱、吐き気、嘔吐、肝腫大、黄疸、出血傾向がみられた。病理組織学的所見では小葉中心性壊死、偽胆管形成など肝臓に変化がみられた。また、内皮細胞の傷害を伴う血栓もみられた (AICIS IMAP (Access on April 2020))。 (3) 本物質は動物試験において急性毒性を示し、メトヘモグロビン血症及び貧血、中枢神経障害 (歩行不調、痙攣、流涎、尿失禁) を生じる (MAK (DFG) vol.6 (1994))。
【参考データ等】 (4) ネコに100~500 mg/kgを腹腔内投与した結果、メトヘモグロビンレベルは1~3時間以内に約60%となり、低酸素症により死亡した。1 mg/kgの腹腔内投与でもメトヘモグロビンレベルは8%となり、赤血球の損傷 (ハインツ小体の形成) がみられた (MAK (DFG) vol.6 (1994)、GESTIS (Access on April 2020))。 (5) モルモットに100~600 mg/kgを腹腔内投与した結果、明らかな中枢神経障害 (痙攣、流涎、尿失禁) がみられ、概ねばく露4~10時間後に死亡した。メトヘモグロビンレベルは14.5%であった (MAK (DFG) vol.6 (1994)、GESTIS (Access on April 2020))。 (6) ヒトおよびネコは、げっ歯類と比較してメトヘモグロビン形成への感受性が高いとの記載がある (AICIS IMAP (Access on April 2020))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1 (肝臓) とした。
【根拠データ】 (1) 労働環境におけるばく露例で、15人中 3人が急性肝機能障害で入院、7人に血液検査により肝機能障害が認められた。なお治療による回復期間中に採取した肝生検の病理組織学的所見で、急性肝炎と類似した組織像 (脂肪性変化、線維症、巣状壊死) がみられた (ACGIH (7th, 2019)、HSDB (Access on April 2020))。 (2) 本物質への職業ばく露 (おそらく吸入による) に関連する肝機能障害がいくつかの工場労働者で報告されている。観察された損傷の重症度は、ばく露回数及び/または期間に依存していた。影響を受けた労働者では、肝障害に加えて高熱、腰痛、疲労、食欲不振、暗色尿、上腹部の不快感が報告されている (AICIS IMAP (Access on April 2020))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。