安全データシート

4-クロロニトロベンゼン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 4-クロロニトロベンゼン
  • CB番号: CB1726260
  • CAS: 100-00-5
  • EINECS番号: 202-809-6
  • 同義語: 1-クロロ-4-ニトロベンゼン,p-クロロニトロベンゼン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: アゾ染料・硫化染料・医薬中間体/アゾ染料中間体 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用
物理化学的危険性
自己反応性化学品   タイプG
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1(血液系)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(血液系)
生殖毒性   区分1B
発がん性   区分1B
生殖細胞変異原性   区分2
急性毒性(経皮)   区分3
急性毒性(経口)   区分4
分類実施日(環境有害性)
ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
環境に対する有害性
水生環境有害性 長期(慢性)   区分2
水生環境有害性 短期(急性)   区分2

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS06GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H411 長期継続的影響によって水生生物に毒性。
H373 長期にわたる、又は反復ばく露により臓器 (全身毒性) の障害のおそれ。
H351 発がんのおそれの疑い。
H341 遺伝性疾患のおそれの疑い。
H301 + H311 + H331 飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合や吸入した場合は有毒。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護衣を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
応急措置
P391 漏出物を回収すること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
P304 + P340 + P311 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
P302 + P352 + P312 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P301 + P310 + P330 飲み込んだ場合:直ちに医師 に連絡すること。口をすすぐこと。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C6H4ClNO2
  • 分子量: 157.55 g/mol
  • CAS番号: 100-00-5
  • EC番号: 202-809-6
  • 化審法官報公示番号: 3-442
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
医師に相談する。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸い込んだ場合、新鮮な空気の場所に移す。 呼吸していない場合には、人工呼吸を施す。 医師に相談する。
皮膚に付着した場合
石けんと多量の水で洗い流す。 直ちに被災者を病院に連れて行く。 医師に相談する。
眼に入った場合
予防措置として、水で眼を洗浄する。
飲み込んだ場合
意識がない場合、口から絶対に何も与えないこと。 口を水ですすぐ。 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

適切な消火剤
水噴霧、耐アルコール泡消火剤、粉末消火剤、二酸化炭素を使用すること。

5.2 特有の危険有害性

塩化水素ガス
窒素酸化物(NOx)
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

消火活動時には必要に応じて 自給式呼吸装置を装着する。

5.4 詳細情報

データなし

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

呼吸保護(服)を着用。 粉じんの発生を避ける。 蒸気、ミスト、またはガスの呼吸を避ける。 十分な換気を確保する。 安全な場所に避難する。 粉じんを吸い込まないよう留意。個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環境への放出は必ず避けなければならない。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

粉じんを発生させないように留意して回収し、廃棄する。 掃いてシャベルですくいとる。 廃棄に備え適切な容器に入れて蓋をしておく。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
皮膚や眼への接触を避けること。 粉じんやエアゾルを発生させない。
火災及び爆発の予防
粉じんが発生する場所では、換気を適切に行う。
衛生対策
皮膚、眼、そして衣服との接触を避ける。 休憩前や製品取扱い直後には手を洗う。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1A: 可燃性、急性毒性カテゴリー1および2 / 猛毒性危険物
保管条件
容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
ACL: 0.6 mg/m3 - 作業環境評価基準、健康障害防止指
TWA: 0.1 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
皮膚、眼、そして衣服との接触を避ける。 休憩前や製品取扱い直後には手を洗う。
保護具
眼/顔面の保護
顔面シールドおよび保護メガネ NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規
格で試験され、認められた眼の保護具を使用する。
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
化学防護服, 特定の作業場に存在する危険物質の濃度および量に応じて、保護装置のタイプを選
択しなければならない。
呼吸用保護具
リスクアセスメントによりろ過式呼吸用保護具が適切であると示されている場所では、工学的
制御のバックアップとして、N100型(US)またはP3型(EN 143)呼吸用保護具カートリッジ
付き全面形呼吸用保護具を使用する。呼吸用保護具が唯一の保護手段である場合、全面形送気
マスクを使用する。 NIOSH(US)またはCEN(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、
認められた呼吸用保護具および部品を使用する。
環境暴露の制御
安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環
境への放出は必ず避けなければならない。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
緑色を帯びた黄色
臭い
強い特徴のある芳香臭

融点/凝固点

83 ℃(GESTIS(2021)) 82~84 ℃(ICSC(1997)) 82.2 ℃(CRC(2018))

沸点、初留点及び沸騰範囲

242 ℃(GESTIS(2021)) 238 ℃(CRC(2018))

可燃性

可燃性(ICSC(1997))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

データなし

引火点

127 ℃(Closed cup)(GESTIS(2021)) 110 ℃(SAX(2000))

自然発火点

510 ℃(Hommel(1996))

分解温度

360~380 ℃(GESTIS(2021))

pH

データなし

動粘性率

データなし

溶解度

水: 225 mg/L(20℃)(GESTIS(2021)) 水: <0.1 mg/mL(75°F)(CAMEO(2021)) アルコール、二硫化炭素、エーテルに可溶(SAX(2000))

n-オクタノール/水分配係数

Log Kow: 2.39(GESTIS(2021)、ICSC(1997))

蒸気圧

20 Pa(30℃)(ICSC(1997)) 16 (20℃)(Hommel(1996)) 0.21 kPa(25℃)(化学物質安全性データブック(1997))

密度及び/又は相対密度

1.37 g/cm³(20℃)(GESTIS(2021)) 1.2979 g/cm³(CRC(2018) )

相対ガス密度

5.44 (空気=1)(ICSC(1997))

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

推奨保管条件下では安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

データなし

10.5 混触危険物質

強酸化剤, 強塩基類

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(9)より、(1)の知見が区分3上限付近であること、その他の知見が区分4範囲であることから総合的に判断し、区分4とした。
【根拠データ】 (1)ラット(雄)のLD50:294 mg/kg(SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016)) (2)ラット(雌)のLD50:565 mg/kg(SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016)) (3)ラット(雄)のLD50:694 mg/kg(SIAR (2002)) (4)ラット(雌)のLD50:664 mg/kg(SIAR (2002)) (5)ラットのLD50:530 mg/kg(ACGIH (7th, 2001)) (6)ラットのLD50:420 mg/kg(DFG MAK (1992)、厚労省委託がん原性試験結果 (1991)) (7)ラットのLD50:650 mg/kg(厚労省委託がん原性試験結果 (1991)) (8)ラット(雄)のLD50:860 mg/kg(厚労省委託がん原性試験結果 (1991)) (9)ラット(雌)のLD50:680 mg/kg(厚労省委託がん原性試験結果 (1991))
経皮
【分類根拠】 (1)~(7)より、有害性の高い区分を採用し、区分3とした。
【根拠データ】 (1)ラット(雄)のLD50:750 mg/kg(SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016)) (2)ラット(雌)のLD50:1,722 mg/kg(SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016)) (3)ウサギ(雄)のLD50:3,550 mg/kg(SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016)) (4)ウサギ(雌)のLD50:2,510 mg/kg(SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016)) (5)ウサギのLD50:> 3,040 mg/kg(ACGIH (7th, 2001)) (6)ウサギのLD50:2,000~3,160 mg/kg(CERI有害性評価書 (2008))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)より区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)ラットのLC50(4時間、粉塵):> 16.1 mg/L(ACGIH (7th, 2001)、SIAR (2002)、AICIS IMAP (2018)、CERI有害性評価書 (2008))

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない(国連分類基準の区分3)とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n= 6)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、閉塞、24時間適用、8日間観察)において、パッチ除去24及び72時間後の全例の平均スコアは、紅斑ではいずれも0、浮腫では2.17及び1.0であった。48時間値は欠測のため、24時間値と同じと仮定して求めた24/48/72時間の全体の平均スコアは紅斑で0.0、浮腫で1.8であった。本物質は軽微な (slightly) 刺激性を有するとの報告がある(AICIS IMAP (2016)、SIAR (2002)、CERI 有害性評価書 (2008)、REACH登録情報 (Accessed Dec. 2021))。 (2)ウサギ(n= 6)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、GLP、原体500 mg、24時間閉塞、72時間観察)において、無傷皮膚では紅斑はみられず、軽微な浮腫(フルスコア4:2.17/4)、有傷皮膚では軽微な紅斑(0.17/4)と軽微な浮腫(1.67/4)がみられ、72時間後には消失した。皮膚刺激指数は0.1(最高8)と算出され、本物質は軽微な (slightly) 刺激性を有するとの報告がある(AICIS IMAP (2016)、SIAR (2002)、REACH登録情報 (Accessed Dec. 2021))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)~(3)より、区分に該当しない。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n= 6)を用いた眼刺激性試験(OECD TG 405相当、8日間観察)では、結膜のみ影響がみられ、平均刺激スコア(フルスコア:110)は24時間後に6/6例で2/110、48時間後に4/6例で2/110、72時間後に2/6例で2/110、8日後に6/6例で0/110となった(SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Accessed Dec. 2021))。 (2)ウサギを用いた眼刺激性試験(OECD TG 405相当、72時間観察)において、各時点における刺激指数(フルスコア:110)の最高スコアは6/110であった(REACH登録情報 (Accessed Dec. 2021))。 (3)ウサギ(n= 2)を用いた眼刺激性試験(20秒後に洗浄(1例)又は非洗浄(1例)、4時間観察)において、洗浄眼では1時間後に軽微な角膜混濁がみられたが、4時間後には消失した。非洗浄眼では角膜、虹彩、結膜への影響がみられなかった(SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【参考データ等】 (1)モルモットを用いたDraize法による皮膚感作性試験(誘導:3%、惹起:0.3%)では陰性であった(SIAR (2002))。 (2)モルモット(n= 10)を用いたDraize変法による皮膚感作性試験(誘導:10%、惹起:10%)では、全例とも陽性反応を示した(SIAR (2002))。 (3)OECDは上記2件のデータの質や情報量の少なさから、感作性の結論を出すことはできないとしている(SIAR (2002))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分2とした。
【根拠データ】 (1)In vivoでは、マウスの脳、肝臓、骨髄を標的としたDNA鎖切断試験(単回腹腔内投与、30~100 mg/kg)で陽性、ラットの肝細胞を用いた付加体形成試験(単回強制経口投与、0.5 mmol/kg)で陰性、ラットの骨髄を用いた染色体異常試験(単回強制経口投与、30~300 mg/kg)で陰性、マウスの骨髄を用いた小核試験(単回腹腔内投与、500 mg/kg)で陽性の結果が得られている(IARC 123 (2020)、AICIS IMAP (2016)、CERI有害性評価書 (2008)、SIAR (2002))。 (2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験で陽性又は陰性、ほ乳類培養細胞(CHL、CHO、ヒトリンパ球)を用いた染色体異常試験で陽性又は陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性、CHO細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陰性の結果が得られている(AICIS IMAP (2016)、CERI有害性評価書 (2008)、SIAR (2002)、安衛法変異原性試験 (Accessed Nov. 2021))。
【参考データ等】 (3)EU CLP (Accessed Nov. 2021) ではMuta. 2に分類されている。

発がん性

【分類根拠】 (1)~(5)より、区分1Bとした。
【根拠データ】 (1)国内外の評価機関による既存分類結果として、IARCでグループ2Bに(IARC 123 (2020))、日本産業衛生学会で第2群Bに(産衛学会許容濃度等の勧告 (2020):2015年提案)、ACGIHでA3に(ACGIH (7th, 2001):1995年提案)、EUでCarc. 2に(CLP分類結果 (Accessed Nov. 2021))、DFGでCategory 3に(List of MAK and BAT values 2020 (Accessed Nov. 2021))、それぞれ分類されている。 (2)ラットを用いた用いた2年間混餌投与(40~1,000 ppm)によるがん原性試験において、雌雄とも脾臓の間葉系組織由来の腫瘍(線維腫、線維肉腫、骨肉腫、肉腫(NOS)、血管肉腫)、副腎の褐色細胞腫の発生増加が認められた。腫瘍発生の用量については、脾臓では雄で200ppm以上、雌では1,000ppmであり、副腎では雌雄とも1,000 ppmと報告された(厚労省委託がん原性試験結果 (1991)、MOE初期評価 (2002)、IARC 123 (2020))。 (3)マウスを用いた2年間混餌投与(125~2,000 ppm)によるがん原性試験において、雄に血管腫、悪性リンパ腫及び肝細胞がん、雌に肝臓の血管肉腫と肝細胞がんの発生増加が認められたが、発生率が低値であることから、がん原性は断定できないと報告された(厚労省委託がん原性試験結果 (1991)、MOE初期評価 (2002)、IARC 123 (2020))。 (4)マウスを用いた21ヵ月間混餌投与(3,000、6,000 ppm)による発がん性試験では、雌雄とも6,000 ppmで血管腫瘍の発生増加が認められた。(IARC 123 (2020) 、MOE初期評価 (2002))。 (5)本物質は厚生労働省化学物質による健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質である(令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第 207号)。
【参考データ等】 (6)本物質の発がん性の作用機序に関しては、遺伝毒性、酸化ストレス、細胞増殖/細胞死/栄養供給の変化などが想定されるが、既存知見からはいずれも決定的な強い証拠はなく、中程度の証拠と判断されている(IARC 123 (2020))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1)、(2)より、母動物に軽微な一般毒性影響がみられる用量で生殖発生影響がみられたことから区分1Bとした。
【根拠データ】 (1)雌ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(5~45 mg/kg/day、妊娠6~19日)において、母動物に体重増加抑制及び脾臓重量増加がみられた最高用量(45 mg/kg/day)で吸収胚数の増加、胎児に骨格異常(湾曲肋骨、前肢の歪曲)の頻度増加がみられたとの報告がある(SIAR (2002)、CERI有害性評価書(2008)、AICIS IMAP (2016))。 (2)マウスを用いた強制経口投与による連続交配試験(62.5~250 mg/kg/day、交配前7日間及び交配期間98日間)において、F0親動物に摂水量の減少、F1親動物にチアノーゼ、肝臓の絶対・相対重量増加、脾臓の腫大及び暗色化がみられる最高用量(250 mg/kg/day)でF0親動物の2回目以降の交配による受胎率の低下が認められた。F1、F2児動物には同腹児数の減少傾向、体重の低値がみられたとの報告がある(SIAR (2002)、CERI有害性評価書(2008)、AICIS IMAP (2016))。
【参考データ等】 (3)ラットを用いた強制経口投与による2世代生殖毒性試験(0.1~5 mg/kg/day、交配14週間前から哺育期間中)において、F0親動物に明確な一般毒性がみられない最高用量(5 mg/kg/day)で妊娠率及び雄の受胎率にわずかな減少がみられたが、F1では同様の影響は再現されず、5 mg/kg/dayまで生殖能への有害影響はないと判断された。F1については、成長後に0.1 mg/kg/day以上で脾臓への影響(髄外造血亢進、褐色細胞を含んだ網内皮細胞)がみられたが、生殖影響はみられなかったとの報告がある(SIAR (2002)、CERI有害性評価書(2008)、AICIS IMAP (2016))。 (4)雌ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験(5~40 mg/kg/day、妊娠7~19日)において、最高用量では母動物に過剰毒性(死亡:8/18例)が発現し影響評価から除外された。中用量(15 mg/kg/day)以下では投与に関連した影響はみられなかったとの報告がある(SIAR (2002)、CERI有害性評価書(2008)、AICIS IMAP (2016))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 (1)~(3)より区分1(血液系)とした。また、(4)の各臓器の病理組織所見は本物質の血液系影響(溶血性貧血)に伴う二次的影響と判断した。
【根拠データ】 (1)ヒトの急性中毒症状としては、メトヘモグロビン血症、嘔吐、頭痛のほか、極めて重篤な症例では虚脱がみられるとの報告がある(SIAR (2002))。 (2)ヒトに対する本物質の急性毒性はメトヘモグロビン形成に起因する溶血性貧血のほか、悪心、嘔吐、頭痛などの自覚症状が発現する。中毒事例では頭重、頭痛、食欲不振、悪心、めまい、息苦しさ等を自覚症状とし、重篤なチアノーゼが認められ、メトヘモグロビン濃度の著しい上昇がみられたとの報告がある(CERI有害性評価書 (2008))。 (3)実験動物に対する毒性症状としては、チアノーゼ、血尿、呼吸障害がみられるとの報告がある(CERI有害性評価書 (2008))。 (4)ラット及びマウスの単回経口投与試験における生存例の病理組織所見として、ラットでは脾臓のうっ血、脾臓・肝臓・腎臓・骨髄のヘモジデリン沈着、骨髄の赤血球造血亢進、マウスでは脾臓の髄外造血の程度の増強・うっ血、脾臓・肝臓・骨髄のヘモジデリン沈着がみられたとの報告がある(厚労省委託がん原性試験結果 (1991))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)の症例報告、(2)~(7)の区分1の用量範囲において、血液系影響(溶血性貧血)がみられることから区分1(血液系)とした。なお、脾臓、肝臓、腎臓、骨髄への影響は血液系影響による二次的影響と考え分類に採用しなかった。
【根拠データ】 (1)本物質に吸入ばく露された作業者でチアノーゼが認められた症例報告がある。これらの症例では血中ヘモグロビン濃度の低下がみられている(AICIS IMAP (2016)、DFG MAK (1992))。 (2)ラットを用いた強制経口投与による90日間反復経口投与試験において、3及び10 mg/kg/day以上(区分1の範囲)で血液影響(メトヘモグロビン濃度の上昇、赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリット値の減少)、肝臓、腎臓のヘモジデリン沈着及び肝臓の髄外造血、30mg/kg/day(区分2の範囲)で雄に骨髄の過形成と精巣萎縮がみられたとの報告がある(CERI有害性評価書 (2008)、SIAR (2002)、AICIS IMAP (2016))。 (3)ラットを用いた強制経口投与による2年間慢性毒性/がん原性併合試験において、0.7及び5 mg/kg/day(区分1の範囲)で血液影響(軽度貧血、血中メトヘモグロビン濃度の上昇)がみられたとの報告がある(CERI有害性評価書 (2008)、SIAR (2002))。 (4)ラット及びマウスを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/がん原性併合試験において、ラットでは200 ppm(10 mg/kg/day、区分1の範囲)で血液影響(貧血を示唆する赤血球パラメータの変化、血小板数増加)、脾臓影響(うっ血、髄外造血等)、1,000 ppm(50 mg/kg/day、区分2の範囲)で脾臓の線維化、骨髄の造血亢進、雌に副腎(皮質・髄質)の過形成等がみられた。マウスでは500 ppm(75 mg/kg/day、区分2の範囲)でラットと同様の血液影響に加え、肺の病変(細気管支上皮の増生、肺胞壁肥厚)がみられたとの報告がある(厚労省委託がん原性試験結果 (1991))。 (5)マウスを用いた13週間反復吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、12及び24 ppm(ガイダンス値換算:0.057及び0.11mg/L、区分2の範囲)で脾臓影響(造血細胞の増殖、色素沈着)、肝臓重量増加、前胃の扁平上皮の過形成(雌)がみられたとの報告がある(CERI有害性評価書 (2008)、SIAR (2002) 、AICIS IMAP (2016))。 (6)ラットを用いた4週間反復吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)において0.9~7 ppm(ガイダンス値換算:0.001~0.01 m/L、区分1の範囲)で血液影響(チアノーゼ、赤血球パラメータの減少、メトヘモグロビン濃度の上昇、白血球数増加)、脾臓影響(重量増加・腫大・うっ血・髄外造血及びヘモジデリン沈着)がみられたとの報告がある(CERI有害性評価書 (2008)、SIAR (2002) 、AICIS IMAP (2016))。 (7)ラットを用いた13週間反復吸入ばく露(試験(6時間/日、5日/週)において、1.5 ppm以上(ガイダンス値換算:0.007 mg/L、区分1の範囲)でメトヘモグロビン濃度の上昇、6~24 ppm(ガイダンス値換算:0.028~0.11 mg/L、区分2の範囲)で脾臓影響(腫大、造血亢進)、腎臓近位尿細管への影響がみられたとの報告がある(CERI有害性評価書 (2008)、SIAR (2002) 、AICIS IMAP (2016))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

ミジンコ等の水生無脊 椎動物に対する毒性
EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 2.7 mg/l - 48 h
藻類に対する毒性
成長抑制 EC50 - Chlorella pyrenoidosa - 4.9 mg/l - 96 h

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 28 d

12.3 生体蓄積性

生物濃縮因子(BCF): 108
- 0.780 μg/l(パラ-ニトロクロルベンゼン)
生体蓄積性 Oncorhynchus mykiss (ニジマス) - 36 d

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
免許を有する廃棄物処理業者に、余剰物で再使用不可の溶液として処理を依頼する。 可燃性溶剤に溶解または混合し、アフターバーナーとスクラバーが備えられた化学焼却炉で焼却する。汚染容器及び包装製品入り容器と同様に処分する。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1578    IMDG (海上規制): 1578    IATA-DGR (航空規制): 1578

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Chloronitrobenzenes, solid
IMDG (海上規制): CHLORONITROBENZENES, SOLID
ADR/RID (陸上規制): CHLORONITROBENZENES, SOLID

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

強酸化剤, 強塩基類

15. 適用法令

労働安全衛生法

特定化学物質第2類物質、特定第2類物質(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2、3号 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) 変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達) 健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項) 作業環境評価基準(法第65条の2第1項)

労働基準法

疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)

化審法

優先評価化学物質(法第2条第5項)

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

毒物及び劇物取締法

劇物(指定令第2条)

大気汚染防止法

有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)

船舶安全法

毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)

航空法

毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)

港則法

その他の危険物・毒物類(毒物)(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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