急性毒性
経口
GHS分類: 区分4 ラットのLD50値として、400 mg/kg (HSDB (Access on June 2017))、> 5,000 mg/kg (BUA 235 (2002)) の2件の報告があり、1件は区分4、1件は区分外に該当する。マウスのLD50値として、800 mg/kg (HSDB (Access on June 2017)) との報告があり、区分4に該当する。件数の多い区分を採用し、区分4とした。
経皮
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。 -
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分外 ウサギを用いた皮膚刺激試験では刺激性なしとの報告 (BUA 235 (2002)) があるが、ヒトにおいて中等度~重度の紅斑 (発赤) や中等度の浮腫を生じるとの報告 (HSDB (Access on June 2017)) がある。以上から区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分外 ウサギを用いた眼刺激性試験 (FDAガイドライン準拠) において、強膜や角膜の一部分の一時的な黄色化があったが結膜への刺激性はなかったとの報告 (BUA 235 (2002)) から 区分外とした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いた感作性試験で、4匹中4匹が陽性反応を示したとの報告 (BUA 235 (2002)) があるが試験方法及び試験結果の詳細が不明であるため採用しなかった。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性 (BUA 235 (2002))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性である (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2017)、NTP DB (Access on June 2017)、BUA 235 (2002))。
発がん性
GHS分類: 区分外 ラット及びマウスを用いた混餌投与による発がん性試験において、ラット、マウスの雌雄ともに腫瘍の発生増加は認められなかった (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on June 2017))。既存分類結果はないが、実験動物2種で発がん性が陰性の結果であったことから、区分外とした。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、血液、脾臓等への影響が認められた300 mg/kg/day まで生殖発生影響は認められなかった (経済産業省による安全性試験結果 (Access on June 2017))。ただし、本試験はスクリーニング試験のため、この結果のみで区分外とはできず、他に利用可能なデータがなく、データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。本物質のヒトでの単回ばく露の情報はない。実験動物では1935年に行われた試験結果の記載として、モルモットに非致死量を単回経口投与後に深麻酔が24時間持続したとの記述 (BUA 235 (2002)) があるが、詳細が不明であり、原典も入手不能で確認できないため、根拠としなかった。また、ラットで一時的な腹臥位、皮膚の黄色化、黄色尿が認められたとの報告 (BUA 235 (2002)) があるが、これらの情報のみでは標的臓器を特定できない。したがって分類できないとした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
また、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、区分2のガイダンス値の範囲内である60 mg/kg/day (90日換算値: 28 mg/kg/day) 以上でヘマトクリット値の減少、脾臓の髄外造血亢進の報告がある (経済産業省による安全性試験結果 (Access on June 2017))。このほか、ラット、マウスを用いた強制経口投与による13週間反復経口投与毒性試験において、ラットでは区分2のガイダンス値の範囲内である50 mg/kg/day以上で脾臓のヘモジデリン沈着、肝臓の重量増加、100 mg/kg/day以上で雄ラット特有の腎臓の近位尿細管における好酸性硝子滴及び再生がみられ、マウスでは区分2のガイダンス値の範囲内である75 mg/kg/dayで脾臓のヘモジデリン沈着の報告がある (BUA 235 (2002))。 以上のように区分2のガイダンス値の範囲内で血液系への影響、血液系への影響に伴う所見、腎臓への影響 (雄ラット特有の所見、2年間試験での雌雄でみられた慢性腎症) が認められているが、腎臓については雄ラット特有の所見や、加齢性の変化であることから標的臓器としなかった。したがって、区分2 (血液系) とした。
GHS分類: 区分2 (血液系) ヒトに関する情報はない。 実験動物については、ラットを用いた混餌による13週間反復経口投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である640 ppm (雄: 38 mg/kg/day、雌: 44 mg/kg/day) 以上で肝重量の増加、総コレステロール・リン脂質・アルブミンの増加、区分2ガイダンス値の上限付近である1,600 ppm (雄: 94 mg/kg/day、雌: 106 mg/kg/day) 以上でヘモグロビン濃度の減少、網状赤血球比率の増加、総ビリルビン・総タンパクの増加がみられ、ラットを用いた混餌による2年間反復経口投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である、雄では1,400 ppm (65 mg/kg/day) 以上で、赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値の減少、総コレステロール・トリグリセライド・リン脂質・尿素窒素・クレアチニン・カルシウム・無機リンの増加、腎臓の顆粒状変化、肺・肝臓・腎臓の絶対及び相対重量増加、慢性腎症、腎盂における尿路上皮過形成等がみられ、雌では800 ppm (46 mg/kg/day) 以上で血小板数・カルシウムの増加、肝臓の相対重量増加、慢性腎症等がみられている (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on June 2017))。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。