急性毒性
経口
ラットのLD50値として、1,500-2,000 mg/kg (雄)、2,000 mg/kg (雌) (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2014)、SIDS (2007))、1,638 mg/kg (SIDS (2007))、1,780 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、SIDS (2007)、環境省リスク評価第第7巻:暫定的有害性評価シート (2009)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮
データ不足のため分類できない。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
ラットのLC50 (4時間) として、2,000 ppm (ACGIH (7th, 2001)、SIDS (2007)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009)) との報告に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (6,618 ppm) より低いため、ppmを単位とする基準値を適用した。新たな情報源 (SIDS (2007)、環境省リスク評価第第7巻:暫定的有害性評価シート (2009)) を追加し、分類を見直した。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG 404相当) において、本物質の1-15分又は20時間適用により、投与後24時間後に赤斑、浮腫等の中等度から重度の刺激性が観察され、8日後には5分以上の適用により壊死が観察された (SIDS (2007))。新たに追加した試験情報から、本物質は腐食性を持つと判断し区分1Bとした。試験情報の追加により区分を変更した。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405相当) において、本物質0.05mLの適用により、紅斑、浮腫、角膜混濁が観察され、紅斑及び浮腫は投与後24時間まで、角膜混濁は投与後8日後まで持続した。また、ヒトにおいて本物質40 ppm以上のばく露により回復性の角膜浮腫がみられたとの報告 (ACGIH (2001)、(SIDS (2007)) や、眼を刺激し視覚の乱れを生じることがある (環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009)) との報告がある。本物質を扱う労働現場において、眼の刺激や角膜障害、色覚への影響等が報告されている。本物質は皮膚腐食性/刺激性の分類で区分1Bとされている。以上の結果より区分1とした。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoのデータはなく、in vitroでは、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性、細菌の復帰突然変異試験では陰性及び弱い陽性である (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2014)、SIDS (2007)、NTP DB (Access on July 2014))。なお、弱陽性の知見はTA1535の代謝活性化系存在下における6667、1,0000 μg/plateでの知見であり、現行のガイドイラインの最高濃度5,000 μg/plateでは陰性である。
発がん性
データ不足のため分類できない。
生殖毒性
ラットを用いた経口経路 (強制) での簡易生殖毒性試験 (OECD TG 421) において、親動物毒性 (一過性の流涎、体重増加抑制、摂餌量低下、雌1例哺育2日に死亡) がみられる用量 (500 mg/kg/day) で有意差はないが着床数、着床率の低下、死亡児2匹を妊娠24日に出産した母動物1例がみられ、有意差はないが出産生児数、生児出産率、出生率の低下がみられた (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2014)、SIDS (2007))。 以上のように、親動物毒性がみられている用量においてわずかな生殖能に対する影響がみられたが統計学的に有意でないことから採用しなかった。この試験は、スクリーニング試験の結果であることから分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ヒトにおいては、吸入経路で、気道への刺激が主な影響である(環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009)、SIDS (2007)、ACGIH (7th, 2001)、HSDB (Access on June 2014))。 ラットでは、飽和濃度 (1,100 ppm) 近傍で吸入ばく露の結果、呼吸困難、粘膜の強い刺激性、震え、よろめき歩行、経口投与により、痙攣、腹及び横臥位姿勢、出血性胃炎、1,000 mg/kg以上の用量で、強直性及び/又は間代性痙攣、その後、自発運動低下がみられた (SIDS (2007))。この影響は、吸入ばく露の場合、区分1、経口投与の場合、区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、ラットでは比較的強い影響が報告されているが、ヒトの知見で同様の影響が報告されておらず、神経系への影響、気道刺激性が主な影響であることを重視し、区分2 (神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ACGIH (7th, 2001) 及び環境省リスク評価第7巻 (2009) には、ヒトでの職業ばく露による有害性の知見がいくつか掲載されているが、殆んどが他物質を含む急性ばく露影響に関する報告であり、SIDS (2007) にはヒトの反復ばく露影響に関し、利用可能なデータはないと記述されている。 実験動物では、ラットに28日間強制経口投与した試験 (OECD TG 407) において、200及び800 mg/kg/day投与群でケージ舐め及び咀嚼様動作がみられ、800 mg/kg/day投与群では振戦、閉眼、うずくまり姿勢、体重増加抑制に加え、肝臓及び腎臓への影響として、相対重量の増加及び組織変化 (小葉中心性肝細胞肥大、尿細管上皮の空胞変性) が認められた (SIDS (2007)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2014)、環境省リスク評価第7巻 (2009))。SIDS (2007) 及び環境省 (2009) の評価では、200 mg/kg/day (90日換算値: 62.2 mg/kg/day) での行動変化を有害性影響として、NOAELを50 mg/kg/day と決定している。しかしながら、200 mg/kg/day 投与群における行動変化 (ケージ舐め及び咀嚼様動作) は雄で5例中1~2例、雌で5例中1-4例に観察される間欠的な症状変化で、毎日連続して観察される所見でなく、この所見だけで神経系を標的臓器として分類するのは過大評価となると考えた。よって、本試験結果からは区分2までの範囲内では分類対象とすべき標的臓器毒性はないと判断した。 経口経路では区分外相当と考えられるが、他の経路での毒性情報がなく、データ不足のため分類できないとした。 なお、旧分類では振戦、閉眼、うずくまり姿勢など区分外の高用量で発現した症状もあわせて、区分2相当の用量で神経症状に含めたため、異なる分類結果となった。
吸引性呼吸器有害性
データ不足のため分類できない。