安全データシート

4,4'-ジアミノジフェニルメタン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 4,4'-ジアミノジフェニルメタン
  • CB番号: CB7718182
  • CAS: 101-77-9
  • EINECS番号: 202-974-4
  • 同義語: 4,4’-ジアミノジフェニルメタン,4,4'-ジアミノジフェニルメタン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアナート)(MDI)・ポリメリックMDIの合成原料、エポキシ樹脂・ポリウレタン樹脂の硬化剤、染料中間体、エポキシ樹脂硬化剤
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
GHS改訂4版を使用
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (心臓、肝臓、腎臓) 区分2 (血液系)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器)
発がん性   区分1B
生殖細胞変異原性   区分2
皮膚感作性   区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2
急性毒性(経皮)   区分3
急性毒性(経口)   区分4
分類実施日(環境有害性)
環境に対する有害性はH26年度、 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版) を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性 (長期間)   区分1
水生環境有害性 (急性)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS06GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H411 長期継続的影響によって水生生物に毒性。
H400 水生生物に非常に強い毒性。
H373 長期にわたる、又は反復ばく露により臓器 (肝臓) の障害のおそれ。
H370 臓器 (肝臓, 眼 - 網膜) の障害。
H350 発がんのおそれ。
H341 遺伝性疾患のおそれの疑い。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H301 飲み込むと有毒。
注意書き
安全対策
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
応急措置
P391 漏出物を回収すること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P308 + P311 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水で洗うこと。
P301 + P310 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
保管
P405 施錠して保管すること。
廃棄
専門的な使用者に限定。
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C13H14N2
  • 分子量: 198.27 g/mol
  • CAS番号: 101-77-9
  • EC番号: 202-974-4
  • 化審法官報公示番号: 4-40
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ場合は水を飲ませる(多くても2杯)。ただちに医師の診察を受けること。1時間以内に治療が受けられないという例外的な状況のみ、嘔吐させ(相手に完全に意識のある場合のみ)、活性炭(10%懸濁液に20~40g)を投与してできるだけ早く医師の診察を受ける。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
可燃性。
窒素酸化物(NOx)
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: いかなる場合も、ほこりを生じさせたり吸い込んだりしないようにすること。触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 慎重に行うこと。適切に廃棄すること。関連エリアを清掃のこと。 ほこりが生じないようにすること。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管条件
密閉のこと。 乾燥。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。保管安定性推奨された保管温度15 - 25 °C湿気に反応する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
OEL-M: 0.4 mg/m3 - 日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告
TWA: 0.1 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
ほこりが生じた際に必要。
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色~淡黄色の薄片 (ICSC (J) (2013))
臭い
かすかなアミン臭 (HSDB (2017))
臭いのしきい(閾)値
情報なし
pH
情報なし

融点・凝固点

91.5~92℃ (ICSC (J) (2013))

沸点、初留点及び沸騰範囲

398~399℃ (102 kPa) (ICSC (J) (2013))

引火点

220℃ (c.c.) (HSDB (2017))

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

可燃性 (ICSC (J) (2013))

燃焼又は爆発範囲

情報なし

蒸気圧

2.03×10-7 mmHg (25℃) (HSDB (2017))

蒸気密度

6.8(空気= 1) (HSDB (2017))

比重(相対密度)

1.1 (NFPA (14th, 2010))

溶解度

水:1.25 g/L (20℃) (GESTIS (2017))

n-オクタノール/水分配係数

1.59 (HSDB (2017))

自然発火温度

> 500℃ (GESTIS (2017))

分解温度

> 270℃ (HSDB (2017))

粘度(粘性率)

8.3 cP (100℃) (HSDB (2017))

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

通常想定される。
可燃性有機物質及び製剤に概ね該当:微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性が
引火点より下のおよそ15ケルビンからの範囲は危険とみなされている。
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

強力な熱

10.5 混触危険物質

酸化剤

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
GHS分類: 区分4 ラットのLD50値として、335 mg/kg (ATSDR (1998))、355 mg/kg、475 mg/kg、547 mg/kg (DFGOT vol. 7 (1996))、830 mg/kg (DFGOT vol. 7 (1996)、ATSDR (1998)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮
GHS分類: 区分3 ラットのLD50値として、1,000 mg/kg (EU-RAR (2001)、SIDS (2002)) との報告に基づき、区分3とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ラットを用いた本物質粉じんの4時間吸入ばく露試験で、区分3に該当する0.837 mg/Lで死亡例はなかったとの報告がある (EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

GHS分類: 区分外 ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、適用時間は不明だが軽度の紅斑がみられ、本物質は軽度の刺激性を示すとの記載 (SIDS (2002)) があることから、ガイダンスの軽度の刺激性に該当する区分外 (国連分類基準の区分3) とした。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

GHS分類: 区分2 ウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の眼刺激性を示し、適用後3~7日で回復したとの記載 (SIDS (2002)) があり、SIDS (2002) は軽度から中等度の刺激性を示すとしていることから、区分2とした。

呼吸器感作性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

GHS分類: 区分1 日本産業衛生学会において、4,4'-メチレンジアニリン (MDA) として皮膚感作性物質第1群に分類されている (産衛学会勧告 (2017))。ポリマーの硬化剤として本物質を取扱うポリウレタン成形工場労働者に、作業開始後1~3週間で衣服に覆われていない部位 (顔、首、前腕) に発疹がみられ本物質 (1%溶液) に対するパッチテストが強陽性となったが、衛生工学的改善 (フードでの作業、保護具の着用、汚染衣服の交換) で皮膚炎は発生しなくなったという事例のほか、本物質の感作性を示す複数の事例報告 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1995)、SIDS (2002)、NITE初期リスク評価書 (2007)) がある。よって、区分1とした。

生殖細胞変異原性

GHS分類: 区分2 In vivoでは、マウスの骨髄細胞及び末梢血を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、ラットの肝臓細胞を用いたDNA損傷試験で陽性、ラット及びマウスの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1998)、DFGOT vol. 7 (1996)、EU-RAR (2001)、環境省リスク評価第10巻 (2012)、NTP DB (Access on September 2017))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いたマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1998)、EU-RAR (2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1995)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 7 (1996)、NTP DB (Access on September 2017))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。

発がん性

GHS分類: 区分1B 本物質の二塩酸塩 (CAS番号 13552-44-8) をラット、又はマウスに2年間飲水投与 (濃度: 150、300 ppm) した発がん性試験において、ラットでは雄に肝臓の腫瘍性結節、甲状腺の濾胞細胞がん、副腎の褐色細胞腫の頻度増加が、雌に甲状腺の濾胞細胞腺腫の頻度増加と甲状腺のC細胞腺腫の用量依存的な増加がみられた。マウスでは雌雄に肝細胞がん、雄に甲状腺濾胞細胞腺腫、雌に悪性リンパ腫の頻度増加、及び肝細胞腺腫の用量依存的増加がみられた (NTP TR248 (1983)、IARC 39 (1986)、ACGIH (7th, 2001)、SIDS (2002))。この他、ラットに本物質20 mg/匹を約8ヵ月間強制経口投与し生涯観察した試験で、雄1/8例に18ヵ月後に肝がん及び腎臓の血管腫様の腫瘍、雌1/8例に24ヵ月後に子宮の腺がんがみられたとの報告などがある (IARC 39 (1986)、ACGIH (7th, 2001))。IARCは本物質の発がん性の証拠は実験動物では十分あるとして、グループ2Bとした (IARC 39 (1986)、IARC Suppl. 7 (1987))。一方、EUはラット及びマウスの長期試験で、本物質の経口投与と甲状腺及び肝臓の腫瘍発生との関連性が示され、本物質は動物実験からヒトでの発がん性の懸念があるとして、カテゴリー2に分類した (SIDS (2002))。このEU分類は旧DSD分類であり、現行CLP分類ではCarc. 1Bとなる (ECHA CL Inventory (Access on August 2017))。この他、NTPでR (NTP RoC (14th, 2016))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2001))、日本産業衛生学会で第2群Bに (許容濃度の勧告 (2017): 1995年提案) それぞれ分類されている。 以上、実験動物2種で悪性腫瘍を含む多臓器発がんがみられていること、及びEUの分類結果を根拠として、本項は区分1Bとした。

生殖毒性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、妊娠ラット (n= 5ないし10) に本物質の塩酸塩を妊娠7~20日に300 mg/kg/dayの用量で、又は妊娠14~20日に50 mg/kg/dayの用量で強制経口投与した結果、前者では母動物1/5例が低活動の異常児を出産し (母動物毒性の記述なし)、後者では母動物、胎児ともに肝臓に異常所見 (母動物に胆管及び門脈域の増生、胎児に肝臓実質の脂肪浸潤) がみられたとの記述があるが、本試験を含め現行の催奇形性試験の要求基準を満たす試験はないと記載されている (DFGOT vol. 7 (1996))。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

GHS分類: 区分1 (中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器) ヒトでは本物質で汚染された小麦粉で作られたパンを食べた84人の中毒例が報告されている。症状として強い右上腹部痛と、黄疸、発熱、肝臓腫大、肝酵素活性上昇が認められ、肝生検では門脈域の炎症と胆汁うっ滞がみられたと報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、DFGOT vol. 7 (1996)、ATSDR (1998)、EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。また、本物質が混入したアルコール飲料を飲んだ男性5人、女性1人が、腹部疝痛、急性黄疸、血中ビリルビンと胆汁うっ滞を示す肝酵素活性の上昇、発熱、筋肉と関節の痛みを示し、そのうち男性1人では蛋白尿と血尿もみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1998)、EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。更に、本物質 (含量不明)、カリウム炭酸塩及びブチロラクトンを含む溶液を飲んだ男性で、黄疸、血清アミノトランスフェラーゼ、ビリルビン値の上昇、血尿、糖尿、心筋への影響 (心電図変化、徐脈、低血圧)、眼網膜損傷が認められたとの症例が1例報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2002)、EU-RAR (2001)、、ATSDR (1998)、DFGOT vol. 7 (1996))。更に、本物質を扱う工場で、エアフィルターの不調が原因で、本物質を含む粉じんを経口、経皮、吸入ばく露した男性1人が、ばく露翌日に上腹部の激しい痛み、上腕部の発疹、黄疸、及び心筋傷害を示すと考えられる心電図の異常を示したとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2002)、EU-RAR (2001)、ATSDR (1998)、DFGOT vol. 7 (1996))。
実験動物では、ラットの単回経口投与試験において、100 mg/kgで出血と中程度の好中球浸潤を伴う肝細胞壊死がみられたとの報告及び100 mg/kg以上でみられる最も顕著な影響は肝臓と腎臓の傷害であるとの報告がある (EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。また、ネコでは25~100 mg/kgの単回経口投与で、網膜の萎縮による失明が生じたとの報告がある (EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。経皮経路では、ラットに1,000 mg/kgの単回経皮ばく露で、無関心、着色涙、黄疸が認められ、10例中5例が7日以内に死亡したとの報告がある ((EU-RAR (2001)、SIDS (2002))。吸入経路では、ラットに本物質の粉じん0.837 mg/Lを4時間吸入ばく露した試験で、眼球突出、振戦、円背位、粗毛がみられたが、死亡例はなく、2日後には回復したとの報告がある (SIDS (2002))。以上の実験動物で影響がみられた用量は全て区分1に相当する。 以上の情報から、本物質は中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器に影響を示すと考えられる。ヒトで網膜の傷害がみられた症例は1例のみであるが、実験動物でも網膜の萎縮がみられていることから視覚器も標的臓器として採用した。したがって、区分1 (中枢神経系、肝臓、腎臓、心臓、視覚器) とした。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

以上、ヒトでは主に急性肝炎がみられ、心臓に対しても影響を及ぼすものと考えられる。実験動物については、区分1のガイダンス値の範囲から甲状腺、肝臓、腎臓、区分2のガイダンス値の範囲から血液、脳下垂体に対する影響がみられている。また、眼や呼吸器に対する影響の可能性もある。このうち、下垂体好塩基性細胞の肥大は、甲状腺刺激ホルモンの産生亢進を示したものと考えられ、甲状腺の所見は肝臓による代謝亢進に対する二次的所見と考えられた。また、眼や呼吸器に対する影響がみられたモルモットの試験はばく露期間が10回と短いこと、反復ばく露後に感作誘発のための経皮投与あるいは吸入ばく露を行っていることからガイダンス値への換算ができないため分類根拠としなかった。 したがって、区分1 (心臓、肝臓、腎臓)、区分2 (血液系) とした。
GHS分類: 区分1 (心臓、肝臓、腎臓)、区分2 (血液系) ヒトについては、本物質を取り扱っていた男性労働者12人に作業開始後1~2週間で上腹部痛や発熱、悪寒、黄疸を主な症状とした経皮吸収が主要なばく露経路と考えられる急性肝炎が発生し、いずれも7週間以内に回復している。また、液状のエポキシ樹脂に本物質を含んだ粉末を混合し、スプレーガン又は手作業で壁に塗布する作業に従事していた労働者300人のうち、6人に急性肝炎を発症したが、全員が作業開始から2日~2週間以内の発症であった。この作業では吸入、経口、経皮のいずれのばく露経路もあったと考えられたとの報告がある (環境省リスク評価第10巻 (2012))。また、急性影響であるが経口、経皮、吸入によりばく露され、ばく露の翌朝、両腕に斑点、発疹、黄疸、心筋障害を示す心電図異常がみられ、心電図の異常は 1年後に正常になったとの報告がある (環境省リスク評価第10巻 (2012)、NITE初期リスク評価書 (2007))。 実験動物については、ラットを用いた13週間飲水投与試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である400 ppm (雄: 25.7 mg/kg/day、雌: 20.4 mg/kg/day) 以上で体重増加抑制、胆管過形成、甲状腺濾胞上皮細胞過形成、800 ppm (雄: 38.7 mg/kg/day、雌: 44.4 mg/kg/day) で脳下垂体好塩基性細胞肥大がみられ、ラットを用いた3ヵ月間飲水投与試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である80 ppm (雄: 7.5 mg/kg/day、雌: 8 mg/kg/day) 以上で腎石灰化、甲状腺濾胞上皮細胞変性、区分2のガイダンス値の範囲内である400 ppm (雄: 23 mg/kg/day、雌: 22 mg/kg/day) 以上で
体重増加抑制、貧血、血清アルカリ性ホスファターゼ・ALT・AST・尿素窒素・胆汁色素・コレステロール濃度の上昇、甲状腺濾胞上皮細胞の巣状結節性過形成、800 ppm (雄: 31 mg/kg/day、雌: 32 mg/kg/day) で白血球増加、好中球増加、プロトロンビン時間延長、肝臓小胆管の過形成、甲状腺濾胞胞上皮細胞肥大がみられ、ラットを用いた103週間飲水投与試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である150 ppm (雄: 9 mg/kg/day、雌: 10 mg/kg/day) 以上で脂肪肝、甲状腺濾胞上皮細胞の嚢腫及び過形成、区分2のガイダンス値の範囲内である300 ppm (雄: 16 mg/kg/day、雌: 19 mg/kg/day) の腎臓の鉱質沈着 (雄) がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。 このほか、モルモットに440 mg/m3 のエアロゾルを2週間 (4 時間/日、5 日/週) 鼻部ばく露し、その2週間後に皮膚及び気管での誘発試験を行った結果、皮膚や呼吸器への刺激やアレルギー反応はみられなかったが、眼の視細胞及び網膜色素上皮細胞の退行性変化がみられ、肺で軽度の肉芽腫性炎が認められたとの報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1995)、環境省リスク評価第10巻 (2012))。

吸引性呼吸器有害性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
半静止試験 LC50 - Oryzias latipes - 20.6 mg/l - 96 h
(OECD 試験ガイドライン 203)
ミジンコ等の水生無脊
止水式試験 EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 0.35 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(OECD 試験ガイドライン 202)
藻類に対する毒性
止水式試験 ErC50 - Pseudokirchneriella subcapitata (緑藻) - 14.4 mg/l - 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)
微生物毒性
EC50 - 活性汚泥 - > 100 mg/l - 3 h
(OECD 試験ガイドライン 209)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 28 d
結果: 46 % - 易分解性ではない。
(OECD テスト ガイドライン 301B)

12.3 生体蓄積性

(OECD 試験ガイドライン 305C)
生物濃縮因子(BCF): 3 - 14
生体蓄積性 Cyprinus carpio (コイ)(4,4'-メチレンジアニリン)

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 2651    IMDG (海上規制): 2651    IATA-DGR (航空規制): 2651

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): 4,4'-Diaminodiphenylmethane
IMDG (海上規制): 4,4'-DIAMINODIPHENYLMETHANE
ADR/RID (陸上規制): 4,4'-DIAMINODIPHENYLMETHANE

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

該当
ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

酸化剤

15. 適用法令

化審法

旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項) 旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)

労働安全衛生法

名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)

大気汚染防止法

有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)

海洋汚染防止法

個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)

労働基準法

感作性を有するもの(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号、平8労基局長通達、基発第182号) 疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)

16. その他の情報

略語と頭字語

IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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