急性毒性
経口
ラットLD50値が283 mg/kg(EPA RED(2006)、農薬評価書(2009))であることから区分3とした。
経皮
ラットLD50値が5000 mg/kg以上(EPA RED(2006)、農薬評価書(2009))であることから区分に該当しないとした。
吸入: ガス
GHS定義における固体である。
吸入: 蒸気
データなし。
吸入: 粉じん及びミスト
ラットLC50(4時間)値が314 mg/L(EPA RED(2006))により区分に該当しないとした。常温に於ける飽和蒸気は0.0064 mg/Lであり、試験は粉塵、又はミストで行われたと見做せる。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギを使用した試験で刺激性なし(not irritant)(EPA RED(2006)、農薬評価書(2009))の報告による。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギを使用した試験で軽度の刺激性(mild irritant)(EPA RED(2006)、農薬評価書(2009))の報告による。
呼吸器感作性
データなし。
皮膚感作性
モルモットを用いたBuehler法による皮膚感作性試験で陽性率0.8%(1/12)で感作性なし(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))との結果、また、30%フロアブル剤及び10%粒剤についてそれぞれMaximization法及びBuehler法による試験の結果、陽性率はいずれも0%(0/25及び0/20)で感作性なし(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))の結果に基づき、区分に該当しないとした。
生殖細胞変異原性
マウスに経口投与による骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)で陰性(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))の報告より区分に該当しないとした。尚、in vitro試験では、エームズ試験及びCHO細胞を用いた染色体異常試験の陰性結果(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))が報告されている。
発がん性
マウスを使用した78週間の混餌投与試験において、催腫瘍性が認められなかった(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))との記載がある一方、ラットを用いた混餌による2年間慢性毒性/発がん性併合試験で、高用量の投与群の雌で肝細胞腺腫、肝細胞腺腫及び肝細胞癌の合計数が増加したとの記載(農薬評価書(2009))があるが、雄では認められず、ラットの雌でしか見られていないため分類できないとした。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(4)より、区分に該当しない。なおEUでは(5)よりイヌの反復投与毒性試験において、精巣毒性がみられたことからRepr. 2に分類されているが、実験動物で受胎能への有害影響の証拠がないことから、分類に採用していない。旧分類からECHA CLPの分類が追加されたため、生殖毒性項目のみ見直したが、分類結果に変更はない(2021年)。
【根拠データ】 (1)ラットを用いた混餌投与による2世代生殖毒性試験(GLP、50~2,000 ppm)において、親動物ではP世代の雌に後肢麻痺・脊椎骨折/脱臼・脊髄出血/壊死、F1雌雄に肝絶対及び/又は比重量増加が認められた2,000 ppm(134~164 mg/kg/day)まで受胎能への影響は認められなかった。児動物に対してはF1及びF2雌児に体重増加抑制がみられたのみであった(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2018)、CLH Report (2016)、ECHA RAC Opinion (Background Doc.) (2017))。 (2)雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与された発生毒性試験(GLP、25~150 mg/kg/day)において、母動物に死亡(6/25例)、体重及び摂餌量の減少、腎盂拡張、水腎症及び脊椎傍出血がみられた最高用量(150 mg/kg/day)まで胎児に発生影響はみられなかった(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2018)、CLH Report (2016)、ECHA RAC Opinion (Background Doc.) (2017))。 (3)雌ウサギの妊娠6~18日に強制経口投与された発生毒性試験(GLP、10~80 mg/kg/day)において、最高用量まで母動物、胎児ともに異常はみられなかった。用量設定のための予備試験では、100 mg/kg/dayで母動物に死亡例がみられたため、本試験の最高用量は80 mg/kg/dayに設定された(食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2018)、CLH Report (2016)、ECHA RAC Opinion (Background Doc.) (2017))。 (4)(1)~(3)から、本物質投与により繁殖能に対する影響も催奇形性も認められなかった(食安委 農薬評価書 (2017))。
【参考データ等】 (5)(1)~(3)からは生殖発生影響は検出されなかったが、イヌの52週間慢性毒性試験において、精巣毒性(精巣の両側性限局性萎縮)がみられ、受胎能に悪影響を及ぼすおそれがある。ラットでは精巣毒性はみられなかったが、種差の可能性も否定できない。ECHA RAC(欧州化学品庁リスク評価委員会)により、イヌの慢性毒性試験における精巣毒性に基づき、Repr. 2に分類された(ECHA RAC Opinion (2017))。 (6)EUではRepr. 2に分類している(CLP分類結果 (Accessed Nov. 2021))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
ヒトでメタアルデヒドの誤飲により痙攣(3日間)、昏睡(7日間)、記憶喪失が観察された(PIMs(1999))。ラットに100~800 mg/kgを経口投与後、曲背位、嗜眠、立毛が見られ、散発的な症状として運動失調、全身の振せん、強直性痙攣などの記載がある(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))。また、マウスに経口投与した試験においても30 及び100 mg/kg(いずれも区分1のガイダンス値内)ではそれぞれ9/10例及び全例の動物に強直性屈曲、伸展痙攣が発現した(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))。以上の記載より区分1(神経系)とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
ラットを用いた107週間混餌投与試験において20~100 mg/kg/day bwで後肢麻痺が観察され、高用量では脊髄損傷も認められている(JMPR WHO/FAO Data Sheets on Pesticides No.93(1996))。また、イヌの52週間混餌投与試験の90 mg/kg/day群で、運動失調、振戦、痙攣および雄で精巣巨細胞を伴う精上皮の限局性萎縮または変性、前立腺の萎縮などの症状が観察されている(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))。これらの症状はガイダンス値区分2の範囲に該当する用量で発現していることから、区分2(神経系、精巣)とした。一方、ラットを用いた90日間混餌投与試験の750及び2500 ppm(約37.5及び125 mg/kg/day相当)で雌雄の肝臓に病理学的変化(小葉中心性肝細胞肥大)が認められ、マウスの90日間混餌投与試験では10000 ppmで肝細胞壊死、肥大、過形成、炎症、核大小不同、肝細胞空胞化等が認められ、100及び300 ppm(15及び45 mg/kg/day)でも軽微ながらこれらの変化が認められたと記述されている(農薬評価書(2009)、農薬抄録(2007))ことから、区分2(肝臓)とした。
誤えん有害性*
データなし。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。