急性毒性
経口
ラットLD50 = 708 mg/kg(PATTY(5th, 2001))により区分4とした。
経皮
ウサギLD50 = 1560 mg/kg(PATTY(5th, 2001)により区分4とした。
吸入: ガス
GHSの定義における固体である。
吸入: 蒸気
データなし。
吸入: 粉じん及びミスト
ラットLC50 > 0.72 g/m3/1h(換算値:0.18 mg/L/4h)(PATTY(5th, 2001))の他にデータなく分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギを用いた試験で皮膚に軽度の刺激性(PATTY(5th, 2001))、モルモットを用いた24時間の適用試験で中等度の刺激性と評価され(PATTY(5th, 2001))、ヒトで著しい刺激を示すとの記載(PATTY(5th, 2001))より区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギ眼に1%あるいは5%溶液を2分間適用した場合は中等度から重度の刺激性と評価され(PATTY(5th, 2001))、ヒトで著しい刺激性を示すとの記載(PATTY(5th, 2001))より区分1とした。
呼吸器感作性
データなし。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)より、EC3値が2%以下と推定されることから、区分1Aとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。REACH登録情報(Accessed Nov. 2021)にて感作性知見が公表されたため、旧分類から皮膚感作性項目のみ見直した(2021年)。
【根拠データ】 (1)マウス(n = 5)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は11.2(1%)、22.0(2.5%)、31.5(5%) であったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2021))。
【参考データ等】 (2)モルモット(n = 10)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406、GLP、皮内投与:1%溶液)において、25%溶液で惹起した1回目における、惹起後24時間後及び48時間後の陽性率はともに100%(10/10例)であった。対照群でも全例で陽性反応がみられたことから、刺激性反応であると判断され、1%溶液で再惹起が実施された。再惹起における、惹起後24時間後及び48時間後の陽性率はともに30%(3/10例)であったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Nov. 2021))。
生殖細胞変異原性
in vivo試験のデータがなく分類できない。なお、in vitroではエームス試験の結果は概ね陰性であった(NTP DB(Access on Aug. 2008)、IUCLID(2000))。
発がん性
ラットに2年間混餌投与した試験では催腫瘍性は報告されていない(PATTY(5th, 2001))が、この結果のみでは分類できない。
生殖毒性
ラットに無水マレイン酸を経口投与した二世代生殖毒性試験と妊娠ラットを用いた試験の結果から、マレイン酸の生殖・発生毒性が陰性であると推測されている(SIDS(J)(Access on Oct. 2008))。しかし、対象物質であるマレイン酸を直接用いた試験データではなく、また、無水マレイン酸を用いた試験の陰性結果についても内容の詳しい記述がない。したがって判断できないので分類できない。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
ラット(雄)に200または400mg/kgを経口投与直後から腎臓の傷害(近位尿細管の傷害と壊死)が現れ、24時間までに広範な壊死に進行した(PATTY(5th,2001))。また、近位尿細管の壊死は、イヌに9 mg/kg以上を経口投与した場合にも観察されている(HSDB(2003))。ラットおよびイヌともガイダンス値範囲区分1に相当する用量で腎毒性を示したことから、区分1(腎臓)とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
ラットを用いた混餌投与試験に関して、28日間ばく露では高用量群(162.5mg/kg/day、換算値:50.5mg/kg)での体重増加抑制と全用量群での副腎重量の変化を除きばく露の影響についての記載はない(PATTY(5th, 2001))。また、2年間ばく露では中および高用量での体重増加抑制と全用量での死亡率の増加があったものの、催腫瘍性、対照群との毒性学的な差および特異的な病理所見は報告されていない(PATTY(5th, 2001))。一方、ラットに無水マレイン酸100mg/kg/日以上を90日間ばく露により腎臓の損傷を引き起こし、体内での加水分解によるマレイン酸の影響が述べられている(SIDS(J)(Access on 10. 2008))が、当該物質(マレイン酸)を直接用いた28日および2年の反復ばく露試験で認められていないので分類に採用しなかった。しかし、単回ばく露の結果を踏まえると発現用量についてなお疑義が残る。ばく露の方法の違い(強制と混餌)もあり、分類にはその点を明らかにしたデータが必要であり、したがって現状では分類できない。
誤えん有害性*
データなし。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。