急性毒性
経口
ラットLD50値: 約2000 mg/kg(雄)、1293 mg/kg bw(雌)(厚労省報告(Access on Aug. 2010))。(GHS分類:区分4)
経皮
ラットLD50値:>2000 mg/kg bw(PATTY (5th, 2001))、ウサギLD50値:1686 mg/kg bw(PATTY(5th, 2001))。(GHS分類:区分4)
吸入
吸入(ミスト): データなし。(GHS分類:分類できない)
吸入(蒸気): ラットに508 ppm/4h (3.04 mg/L/4h)のばく露で死亡はなく、LDLo:>5.08 mg/L/4hとある(PATTY (5th, 2001))。なお、試験濃度が飽和蒸気圧濃度とその90%に相当する濃度の間にあるので、「ミストが混在している蒸気」として蒸気の基準値を適用した。(GHS分類:データ不足で分類できない。)
吸入(ガス): GHSの定義における液体である。(GHS分類:分類対象外)
皮膚腐食性・刺激性
ウサギを用いた試験の結果、刺激性スコア0.3で軽微な刺激(slight irritant)(PATTY (5th, 2001))。(GHS分類:区分外)
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギを用いた試験の結果、中等度または軽度の刺激性(moderate or slight irritation)(PATTY (5th, 2001))。(GHS分類:区分2)
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:モルモットを用いた試験の結果、中等度の皮膚感作物質(moderate skin sensitizer)(PATTY (5th, 2001))。(GHS分類:データ不足で分類できない。)
呼吸器感作性:データなし。(GHS分類:分類できない)
生殖細胞変異原性
エームス試験及びCHL細胞を用いた染色体異常試験で陰性(厚労省報告(Access on Aug. 2010))。(GHS分類:in vivo試験のデータがなく分類できない。)
発がん性
データなし。(GHS分類:分類できない)
生殖毒性
ラットを用いた反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG 422)において、親動物の生殖機能への影響として、平均性周期日数の延長および分娩率の低下が250 mg/kg群の雌で認められたが、親動物の性機能・生殖能に係わる指標、仔の発生に係わる指標、新生仔の生存に係わる指標に被験物質の影響を示唆する変化は認められなかった(厚労省報告(Access on Aug. 2010))。なお、性周期の軽度な延長については、反復投与の影響による雌親動物の全身状態の悪化に伴う二次的な変化の可能性も考えられており、また、250 mg/kg群の分娩率 85.85%は、背景データの下限(86.74%)を僅かに下回る程度であり、雌親動物の生殖機能に対する影響としては軽度なものと推察される(厚労省報告(Access on Aug. 2010))。(GHS分類:データ不足で分類できない。)
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ラットを用いた急性経口毒性試験において、一般状態の観察で、1000 mg/kg bw以上で死亡が発生し、自発運動の低下、歩行失調あるいは歩行異常、側臥位あるいは腹臥位、うずくまり、流涙あるいは紅涙などが認められ、2000 mg/kg群で貧血様症状、体温低下、振戦、易刺激性および流涎が認められた(厚労省報告(Access on Aug. 2010))。これらの症状に加えて、当該物質は中枢神経系に影響を及ぼし、高用量では意識低下を起こす可能性があるとの指摘(HSDB (2006))もある。また、ラットを用いた別の急性経口毒性試験(LD50: 2000~2445 mg/kg)では、し眠と麻酔の症状が記載されている(PATTY (5th, 2001))。なお、その他に前胃のびらんあるいは潰瘍など胃腸管傷害が報告されているが、経口投与された試験物質の粘膜刺激を示唆する変化と考えられている(厚労省報告(Access on Aug. 2010))。(GHS分類:区分2(中枢神経系)、区分3(麻酔作用))
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットを用いた反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG422)において、主な所見として250 mg/kg(90日換算:97.2~117 mg/kg/day)の用量で、一般状態では自発運動低下、歩行異常、体重増加抑制、血液学検査では赤血球数およびヘモグロビン濃度の低値、血液生化学検査ではGPTおよび総ビリルピンの高値、トリグリセライドの低値、剖検では牌臓の暗赤色化および腫大、前胃壁の肥厚が認められた。病理組織学検査では、被験物質に起因する変化として、250 mg/kg群の牌臓および大腿骨骨髄において赤血球系の造血亢進とヘモジデリン沈着の増強、50 mg/kg以上の群において被験物質の刺激性に起因する前胃の肩平上皮の過形成、角化亢進、粘膜下組織の水腫、炎症性細胞浸潤が認められた(厚労省報告(Access on Aug. 2010))。なお、 50 mg/kg(90日換算:19.4~23.3 mg/kg/day)以上での胃の変化については、反復経口投与された試験物質の刺激作用による影響との判断(厚労省報告(Access on Aug. 2010))もある。(GHS分類:区分2(造血系))
吸引性呼吸器有害性
データなし。(GHS分類:分類できない)