安全データシート

マラソン剤

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: マラソン剤
  • CB番号: CB9182444
  • CAS: 121-75-5
  • EINECS番号: 204-497-7
  • 同義語: マラチオン,マラソン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 農薬 (殺虫剤) (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (神経系) 区分2 (呼吸器)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (神経系、呼吸器、心血管系)
発がん性   区分1B
皮膚感作性   区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2B
分類実施日(環境有害性)
平成28年度、GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性
水生環境有害性 (長期間)   区分1
水生環境有害性 (急性)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS07GHS09
注意喚起語
警告
危険有害性情報
H302 飲み込むと有害。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H410 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性。
注意書き
安全対策
P261 ミスト/蒸気の吸入を避けること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋を着用すること。
応急措置
P301 + P312 + P330 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。口をすすぐこと。
P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水で洗うこと。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P391 漏出物を回収すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C10H19O6PS2
  • 分子量: 330.36 g/mol
  • CAS番号: 121-75-5
  • EC番号: 204-497-7
  • 化審法官報公示番号: 2-1963
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 医師に相談する。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後はただちに水を飲ませること(多くても2杯) 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。
可燃性。
リンの酸化物
硫黄酸化物
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 10: 可燃性液体
保管条件
密閉のこと。保管安定性推奨された保管温度2 - 8 °C

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
OEL-M: 10 mg/m3 - 日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告
TWA: 1 mg/m3 - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
黄色~茶色
臭い
特徴的な臭気

融点/凝固点

3.85℃ (HSDB (Access on May 2020))

沸点、初留点及び沸騰範囲

156~157℃ (0.7 mmHg) (U.S.EPA: Mpbpwin v1.43)

可燃性

可燃性 (ICSC (2019))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

データなし

引火点

163℃ (c.c.) (ICSC (2019))

自然発火点

データなし

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

37.1 dynes/cm (24℃) (HSDB (Access on May 2020))

溶解度

水: 143 mg/L (20℃) (HSDB (Access on May 2020)) エタノール、ベンゼン、エチルエーテルに可溶 (HSDB (Access on May 2020))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 2.36 (HSDB (Access on May 2020))

蒸気圧

3.97E-005 mmHg (30℃) (HSDB (Access on May 2020))

密度及び/又は相対密度

1.2076 g/cm³ (20℃) (HSDB (Access on May 2020))

相対ガス密度

データなし

粒子特性

該当しない

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

情報なし

10.5 混触危険物質

強酸化剤, 金属を腐食する

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 8,000 mg/kg (純度: 98.2%) (Canada Pesticides (2010)) (2) ラットのLD50: 8,200 mg/kg (純度: 99.1%) (Canada Pesticides (2010)) (3) ラットのLD50: 8,227 mg/kg (純度: 99.1%) (JMPR (2016)) (4) ラットのLD50: 9,500 mg/kg (純度: 99.3%) (ATSDR (2003)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989)) (5) ラットのLD50: 10,700 mg/kg (再結晶) (産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))
【参考データ等】 (6) ラットのLD50: 2,100 mg/kg (IPCS PIM G001 (1989)) (7) ラットのLD50: 2,800 mg/kg (EHC 63 (1986)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989)) (8) ラットのLD50: 2,830 mg/kg (ACGIH (7th, 2003))
経皮
【分類根拠】 (1)~(6) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (JMPR (2016)、EPA Pesticides RED (2009)、Canada Pesticides (2010)) (2) ラットのLD50: > 4,444 mg/kg (ATSDR (2003)) (3) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2014)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1989)) (4) ウサギのLD50: 4,100 mg/kg (EHC 63 (1986)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020)) (5) ウサギのLD50: 8,790 mg/kg (JMPR (2016)) (6) ウサギのLD50: 8,900 mg/kg (Canada Pesticides (2010))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (7.1E-004 mg/L) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): > 5.2 mg/L (JMPR (2016)、Canada Pesticides (2010)、US AEGL (2009)、Patty (6th, 2012)) (2) 本物質の蒸気圧: 4.0E-005 mmHg (30℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 7.1E-004 mg/L)

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)~(5) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験で軽度刺激性あるいは非刺激物と報告されている (JMPR (2016))。 (2) ウサギを用いた皮膚刺激性試験においてごく軽度の刺激性が認められ (食安委 農薬評価書 (2014))。 (3) EPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で軽度刺激性と報告されている (EPA Pesticides (2009))。 (4) ウサギを用いた皮膚刺激性試験において軽度の刺激性が認められた (ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。 (5) 本物質及び本物質の製剤の皮膚刺激性は低い (GESTIS (Access on May 2020))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)~(5) より、区分2Bとした。
【根拠データ】 (1) 本物質はウサギを用いた眼刺激性試験で軽度刺激性と報告されている (JMPR (2016))。 (2) ウサギを用いた眼刺激性試験において軽度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2014)、ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。 (3) EPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で軽度の結膜刺激性が観察され、7日以内に消失したと報告されている (EPA Pesticides RED (2009))。 (4) 16人のボランティアによる本物質のエアロゾルによるばく露実験で結膜の刺激性がみられたという報告がある (ATSDR (2003))。 (5) ウサギにおいて本物質のばく露により、即時に刺激を示し、結膜炎及び眼瞼の浮腫を示す (GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため、分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 87名のボランティアによる実験で本物質 (10%) は約半数に感作性反応を誘発した (ATSDR (2003))。 (2) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において陽性と報告されている (食安委 農薬評価書 (2014))。 (3) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験において、ビューラー法 では陰性、マキシマイゼーション法 では陽性と報告されている。また、マウス局所リンパ節試験 (LLNA) では陰性と報告されている (JMPR (2016))。 (4) 本物質は高濃度においてモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において、13/24例 (陽性率 54%) に感作性反応を誘発した (GESTIS (Access on May 2020))。
【参考データ等】 (5) 本物質はモルモットに対して感作性を示さない (ACGIH (7th, 2003)、Canada Pesticides (2010)、Patty (6th, 2012))。 (6) EPA OPPTS 870.2600に準拠した モルモットを用いた皮膚感作性試験 において陰性と報告されている (EPA Pesticides RED (2009))。 (7) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317)に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)~(4) より、専門家判断に基づき、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウスを用いた優性致死試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、ラット肝UDS試験で陰性の報告がある(IARC 112 (2017)、JMPR (2016)、ATSDR (2003)、食安委 農薬評価書 (2014))。 (2) in vitroでは、ヒトの末梢血リンパ球あるいはほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験、遺伝子突然変異試験において陽性、細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告がある (同上)。 (3) 本物質の製剤あるいは原体を用いた多くの試験が実施され、陽性結果も多数認められているが、不純物の少ない原体を用い、テストガイドラインに従いGLPで実施されたin vivo試験では陰性知見が得られている(JMPR (2016)、Canada pesticide (2010), EPA Pesticides RED (2009), ATSDR (2003)、食安委 農薬評価書 (2014))。 (4) 食安委、JMPR、Canada、EPAではマラチオンに生体において問題となる遺伝毒性は認められないとしている(JMPR (2016)、Canada pesticide (2010), EPA Pesticides RED (2009)、食安委 農薬評価書 (2014))。

発がん性

【分類根拠】 (2)~(4) の結果及び (1) のIARCの分類に基づき区分1Bとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2A (IARC 112 (2017))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2018年提案))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2003))、EPAでS (Suggestive Evidence of Carcinogenicity, but not Sufficient to Assess Human Carcinogenic Potential) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on July 2020):2000年分類) に分類されている。 (2) IARCはヒトにおいて本物質へのばく露と非ホジキンリンパ腫及び前立腺がんとの間で正の相関がみられ、ヒトで発がん性の限定的な証拠 (limited evidence) があるとしている (IARC 112 (2017))。 (3) 雌雄のマウスに本物質を混餌投与した2つの発がん性試験において、肝細胞腺腫、及び肝細胞の腺腫とがんの合計頻度の増加 (1件は雄のみ、他1件は雌雄で増加) が認められた (IARC 112 (2017))。 (4) 雌雄のラットに本物質を混餌投与した2つの発がん性試験において、雌で肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫、及び肝細胞腺腫と肝細胞癌の合計)、乳腺の線維腺腫及び子宮ポリープの発生頻度の有意な増加が認められた。また雄では鼻咽頭腔に2つの非常に稀な腫瘍が確認された (IARC 112 (2017))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、親世代に影響はなく、F1、F2児動物で軽微な影響 (離乳時の体重低値) のみであった (食安委 農薬評価書 (2014))。 (2) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、P、F1及びF2親動物に交配時の低体重、P親動物に呼吸困難、死亡 (雄: 3/16例、雌: 1/16例) 、F3親動物の雌に呼吸困難、死亡 (1/16) がみられ、P親動物で受胎率低下、出産率低下、F1及びF3児動物に離乳時の低体重、F1児動物で哺育率低下がみられた。なお、受胎率低下、出産率低下、哺育率低下は母動物の毒性に起因するものであり、繁殖能に対する検体の直接的な影響とは考えられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。 (3) 妊娠ラット、妊娠ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験において、母動物毒性がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2014))。
【参考データ等】 (4) ラットを用いた発達神経毒性試験 (母動物に妊娠 6 日~出産後 10日、及び児動物には生後 11~21日に強制経口投与) において、母動物毒性はみられず、児動物では生後11~21日に振戦及び活動性低下が、生後11日に平面立ち直り反応の遅れが認められたが、これらは検体投与の直接的な影響であり、発達神経毒性影響を示すものではないと考えられている (食安委 農薬評価書 (2014))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 (1)~(5) より、ヒトにおいて神経系、心血管系、呼吸器への影響、(6) より、実験動物においても区分1の用量で神経系への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (神経系、呼吸器、心血管系) とした。情報の再検討により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 一般的な徴候や症状として、副交感神経の自律神経刺激で典型的にみられる腹部痙攣、下痢、吐き気、嘔吐、縮瞳、かすみ目、流涎、流涙、呼吸困難、筋痙攣があり、赤血球及び血漿中コリンエステラーゼ (ChE) 活性の阻害がみられたとの報告もある (ATSDR (2003))。 (2) 本物質の中毒による死亡例では、心膜血管の拡張と周囲の組織の顕著な出血、間質性浮腫、炎症性細胞、ヘモジデリン含有マクロファージ及び心筋の脂肪浸潤と心筋への損傷がみられたとの報告がある。高用量での急性中毒では、低用量での反復ばく露と同様に脳波図 (EEG) の変化もみられ、この症状はわずかな追加ばく露で悪化するとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。 (3) 本物質の中毒症例のほぼ全て (推定投与量: 214~2,117 mg/kg) で、迷走神経刺激による徐脈や低血圧、ばく露後数日以内に出現する房室伝導障害などの心血管系への影響がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。 (4) 複数の本物質による中毒症例 (ばく露量は推定可能例で214~1,071 mg/kg) では呼吸困難が報告されている。低用量ばく露と推定される例でも、呼吸困難及び気管支炎が一般的にみられ、多くの患者で人工呼吸器の補助を必要とした。2例では、中毒事故の2週間後に肺線維症の発症もみられた (ATSDR (2003))。本物質の投与に関連した呼吸器影響としては、吸入後の鼻腔及び喉頭の病理組織学的病変の報告もある (EPA Pesticides RED (2009))。 (5) 4人/群の男性被験者を濃度0、5.3、21または85 mg/m3の本物質のエアロゾルに1日につき1時間を2回、42日間ばく露したところ、85 mg/m3群で各ばく露の開始後5~10分間における鼻刺激性の訴えがあった (ATSDR (2003))。 (6) 純度95%の本物質を用いたラットの経口投与試験では、12 mg/kg (区分1の範囲) 以上で赤血球ChE阻害作用、純度不明の本物質を用いた別の試験では約411 mg/kg (区分2の範囲) で重度の呼吸困難がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。
【参考データ等】 (7) ヒトでは、殺虫剤用途で製造された市販品に含まれる複数の不純物により本物質の正常な代謝が阻害され、毒性が増強されるとの報告がある。これは不純物のカルボキシルエステラーゼ阻害作用によると考えられている。本物質の製剤に含まれるイソマラチオン (CAS番号 3344-12-5) が毒性の増強に影響するとの報告があるが、他の不純物の影響も示唆されている (EHC 63 (1986))。 (8) 本物質は、哺乳類や昆虫で代謝によりマラオクソン (CAS番号 1634-78-2) に変換される。マラオクソンは本物質よりも強力なChE阻害作用を示すことが知られている (EPA Pesticides RED (2006))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)~(3) より、ヒトにおいて死亡例を含む神経系への影響がみられるとの情報があり、(4)、(5) より、実験動物においては区分2の用量で神経系及び呼吸器への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (神経系)、区分2 (呼吸器) とした。新たな情報を加えて検討を行い、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質の水溶性製剤を使用した蚊の防除プログラムに参加した噴霧作業従事者5,350人、混合作業従事者1,070人及び監督者1,070人で大規模な職業中毒が発生し、少なくとも5人が死亡した。ばく露経路は主に経皮で、ばく露濃度は1~200 μg/cm3と推定された。コリンエステラーゼ (ChE) の抑制作用は労働期間とともに進行し、症状はかすみ目、めまい、吐き気、嘔吐、腹部痙攣等で有機リン酸塩中毒と一致していた。イソマラチオン (CAS番号 3344-12-5) やその他の不純物を高濃度に含む製剤で最も重篤な症状がみられ、イソマラチオンを2~3%含有する製剤を使用した作業者では作業終了時に赤血球ChE活性が11~20%、39~47%減少したが、イソマラチオンを含まない製剤を使用した作業者では0.8~3.0%の減少にとどまった (ACGIH (7th, 2001)、ACGIH (7th, 2003)、EHC 63 (1986))。 (2) 生後18ヵ月の子供が庭のスプレーで本物質に6週間毎日経皮・吸入ばく露された結果、コリン作動性中毒症状に至り、数日間にわたる広範な弛緩性麻痺を含む長期間の脱力状態が続いた。この症状はアトロピン投与と安静により4週間以内に回復した (ATSDR (2003))。 (3) 5人の男性被験者に純度不明の本物質約0.11 mg/kg/dayを32日間、続いて約0.23 mg/kg/dayを47日間カプセル投与したところ、血漿及び赤血球ChE活性の低下はみとめられず、臨床症状も誘発されなかった。別の5人の被験者に約0.34 mg/kg/dayを56日間投与したところ、臨床症状はみられなかったが、投与終了から約3週間後の血漿中ChE活性が最大25%低下し、その後赤血球ChE活性の低下もみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。 (4) ラットの90日間経口投与試験では、75 mg/kg (区分2の範囲) で脳波 (EEG)、筋電図 (EMG) において興奮性亢進を示す変化がみられたとの報告がある (ATSDR (2003))。 (5) ラットの13週間エアロゾル吸入ばく露試験では、0.1 mg/L (90日換算値: 0.0722 mg/L、区分2の範囲) 以上で赤血球のChE活性阻害、鼻腔及び喉頭の病理組織学的病変、2.01 mg/L (90日換算値: 1.45 mg/L、区分2超の範囲) で流涎がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2003))。
【参考データ等】 (6) ヒトでは、殺虫剤用途で製造された市販品に含まれる複数の不純物により本物質の正常な代謝が阻害され、毒性が増強されたとの報告がある。これは不純物のカルボキシルエステラーゼ阻害作用によると考えられている。本物質の製剤に含まれるイソマラチオンが毒性の増強に影響するとの報告があるが、他の不純物の影響も示唆されている (EHC 63 (1986))。 (7) 本物質は、哺乳類や昆虫で代謝によりマラオクソン (CAS番号 1634-78-2) に変換される。マラオクソンは本物質よりも強力なChE阻害作用を示すことが知られている (EPA Pesticides RED (2006))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害クラスの内容に変更はない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
LC50 - 魚類 - 0.252 mg/l - 96 h
ミジンコ等の水生無脊
EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 0.002 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
備考: (ECOTOX データベース)
藻類に対する毒性
EC50 - Pseudokirchneriella subcapitata (緑藻) - 4.06 mg/l - 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

備考: 水生生物に蓄積されることがある。
生物濃縮因子(BCF): 12
- 12.8 μg/l(マラチオン)
生体蓄積性 Oryzias latipes - 168 h

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 3082    IMDG (海上規制): 3082    IATA-DGR (航空規制): 3082

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Environmentally hazardous substance, liquid, n.o.s. (Malathion)
(Malathion)
IMDG (海上規制): ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, LIQUID, N.O.S.
オン)
ADR/RID (陸上規制): ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, LIQUID, N.O.S. (マラチ

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 9    IMDG (海上規制): 9    IATA-DGR (航空規制): 9

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

該当
ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 該当

14.6 特別の安全対策

14.7 混触危険物質

5 kg / L 以下で、危険物クラス 9 に該当しないパッケージ
詳細情報
強酸化剤, 金属を腐食する

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【268 ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【268 ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル】 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) 作業場内表示義務(法第101条の4)

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【197 ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル】

毒物及び劇物取締法

-

化学物質審査規制法

旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)【旧番号181 ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル(別名マラソン又はマラチオン)(平成23年4月1日をもって廃止)】

航空法

有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】3082 環境有害物質(液体)】

船舶安全法

有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】3082 環境有害物質(液体)】

海洋汚染防止法

個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】3082 環境有害物質(液体)】

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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