急性毒性
経口
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、> 5,000 mg/kg (EPA RED (2006)、農薬工業会 『日本農薬学会誌』第15巻 第2号 (1990))、> 7,000 mg/kg、> 10,000 mg/kg (農薬工業会 『日本農薬学会誌』第15巻 第2号 (1990)) の3件の報告に基づき、区分外とした。
経皮
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、> 5,000 mg/kg (農薬工業会 『日本農薬学会誌』第15巻 第2号 (1990)) の報告があり、区分外に該当する。ウサギのLD50値として、> 2,000 mg/kg (EPA RED (2006)) の報告があり、区分外に該当する。これらの報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ラットのLC50値 (4時間) として、> 1.71 mg/L (EPA RED (2006))、> 2,100 mg/m3 (換算値:> 2.1 mg/L) (農薬工業会 『日本農薬学会誌』第15巻 第2号 (1990)) と2件の報告があり、区分3超と推察されるが、この値からは区分を特定することはできない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分外 ウサギにおいてごく軽度の刺激性が報告されているが (PATTY (6th, 2012))、ウサギの皮膚刺激性試験で刺激性がなかったことも報告されており (ACGIH (2016)、EPA RED (2006))、GHS区分2に相当する刺激性はないと判断されることから、区分外とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分2B ウサギの眼刺激性試験ではごく軽度の刺激性 (ACGIH (2016)、EPA RED (2006))、中等度の刺激性がみられたが (PATTY (6th, 2012))、米国EPAは刺激性なしと評価していることから (EPA RED (2006))、眼刺激性は弱いと判断され、区分2Bとした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない モルモットの皮膚感作性試験でいずれも陰性を示し (ACGIH (2016)、EPA RED (2006)、PATTY (6th, 2012))、ヒトのパッチテストでも感作性は認められなかったとの報告 (PATTY (6th, 2012)) があるが、いずれの情報も詳細が確認できなかったため分類できないとした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウスの末梢血及び骨髄細胞を用いる小核試験で陰性、マウスの白血球を用いるDNA損傷試験で陰性である (IARC 73 (1999)、ACGIH (7th, 2016)、PATTY (6th, 2012))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陽性、染色体異常試験で陰性、陽性の結果、姉妹染色分体交換試験で陰性である (IARC 73 (1999)、ACGIH (7th, 2016)、PATTY (6th, 2012)、農薬工業会 『日本農薬学会誌』第15巻 第2号 (1990))。
発がん性
GHS分類: 区分2 ヒトの発がん性に関する情報はない。実験動物ではラット及びマウスを用いた経口経路 (混餌投与) による発がん性試験において、雌ラットで乳腺腫瘍 (線維腺腫、腺がん) の頻度増加がみられたが、マウスでは雌雄とも腫瘍の増加はみられなかった (IARC 73 (1999))。以上により、IARCは発がん性の証拠はヒトでは不十分、実験動物では限定的としてグループ3に分類した (IARC 73 (1999)) が、ACGIHは雌ラットの乳腺腫瘍を重視しA3に分類した (ACGIH (7th, 2016))。また、EUもCarc. 2に分類している (ECHA C&L Inventory (Access on August 2016))。評価機関により分類結果が異なったが、本評価ではIARCよりも年度の新しいACGIH及びEUの発がん分類結果を採用することとし、区分2とした。
生殖毒性
GHS分類: 区分2 ラットに本物質を100 ppmまで3世代に、又は500 ppm まで2世代に混餌による経口投与した生殖毒性試験で、各世代とも生殖能への影響は認められなかった (ACGIH (7th, 2016)、PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on June 2016))。一方、妊娠ラットに経口又は吸入ばく露した発生毒性試験では胎児には無影響、又は軽微な影響がみられたのみであった (ACGIH (7th, 2016)、IARC 73 (1999)) が、妊娠ウサギに強制経口投与 (妊娠7~19日) した試験では、母動物毒性 (体重増加抑制、振戦、自発運動低下) のみられる用量で胎児に骨化遅延、骨格変異、胎児重量低値に加え、胚/胎児吸収の増加が認められている (ACGIH (7th, 2016)、PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on June 2016))。この他、雌ラットに生後22~42日に経口投与した結果、膣開口の遅延、性周期異常例数の増加、初回発情期の遅延がみられたとの報告 (HSDB (Access on June 2016)、PATTY (6th, 2012))、雄ラットへの生後投与で血清テストステロンレベルの上昇を伴い性成熟期 (puberty) を変化させたとの報告がある (ACGIH (7th, 2016))。 以上、本物質は発生影響及び児動物の性成熟能への影響が懸念されることから、本項は区分2とした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分3 (気道刺激性、麻酔作用) ヒトでは本物質へのばく露により気道刺激作用と、一部の例で吐き気、めまい、頭痛、情動不安などの中枢神経系への影響が認められたとの記載がある (PATTY (6th, 2012)、EPA RED (2006)、HSDB (Access on June 2016))。したがって区分3 (気道刺激性、麻酔作用)とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 区分1 (血液系)、区分2 (神経系) ヒトについて関連する情報はない。 実験動物については、ラットを用いた混餌による104週間反復投与毒性試験において区分1相当の100 ppm (5.2 mg/kg/day) で血液への影響(赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値減少等)、イヌを用いた混餌による1年間反復投与毒性試験において、区分1相当の3.6 mg/kg/dayで血液への影響 (赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値減少等) の報告がある (EPA IRIS Summary (1993)、ACGIH (2016)、IARC 73 (1999))。また、イヌを用いた混餌投与による13週間反復投与毒性試験において、区分2相当の4,000 ppm (ガイダンス値換算:100 mg/kg/day) で振戦の報告がある (農薬工業会 『日本農薬学会誌』第15巻 第2号 (1990))。 したがって、区分1 (血液系)、区分2 (神経系) とした。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。