急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(5)より、有害性の高い区分を採用し、区分4とした。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した。旧分類からEUで新たな知見が追加されたため、急性毒性(経口)項目を見直した(2022年度)。
【根拠データ】 (1)ラット(雄)のLD50:1,394 mg/kg(CLH Report (2018)、 REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022)) (2)ラット(雌)のLD50:1,472 mg/kg(OECD TG 401)(CLH Report (2018)) (3)ラットのLD50:1,850 mg/kg(OECD TG 401)(CLH Report (2018)、 REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022)) (4)ラット(雌)のLD50:2,579 mg/kg(CLH Report (2018)、 REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022)) (5)ラット(雄)のLD50:3,256 mg/kg(OECD TG 401)(CLH Report (2018))
【参考データ等】 (6)本物質はEU CLHにおいて、区分4に分類されている。
経皮
4件のウサギLD50値のデータ、2,000 mg/kg(PATTY(6th, 2012))、2,251 mg/kg(SIDS(2005))、3,815 mg/kg 未満(SIDS(2005))、13 mL/kg(PATTY(6th, 2012))及び1件のラットLD50値のデータ、14,300 mg/kg 未満(SIDS(2005))が報告されている。うち1件が区分4、4件がJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)を含む区分外に該当することから、分類ガイダンスに基づき区分外とした。今回の調査で入手した PATTY(6th, 2012)記載の情報を含めて分類した。
吸入: ガス
GHSの定義による液体である。
吸入: 蒸気
室温における飽和蒸気を7時間吸入したラットの試験で影響なしとの2件の報告(SIDS(2005)、(PATTY(6th, 2012))がある。飽和蒸気濃度の4時間換算値(176.5 mg/L)より、蒸気の基準値(mg/L)を適用して、区分外とした。今回の調査で入手した SIDS(2005)、PATTY(6th, 2012)のデータを基に分類した。
吸入: 粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質の10%溶液では2/6例に、2%溶液では1/6例にそれぞれ一過性の紅斑がみられた(SIDS(2005))。また、他のウサギを用いた皮膚刺激性試験においては、不希釈の本物質を24時間閉塞適用した結果、刺激性はみられなかった(SIDS(2005))。さらに、ヒトへの影響として51人のボランティアに本物質の10%溶液を用いてパッチテストを行った結果、刺激性はみられず、2,736人に本物質の1%溶液を用いてパッチテストを行った結果でも、刺激性はみられなかった。以上の情報に基づき、区分外とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)より、1例で非可逆的な影響がみられたことから区分1とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2022年度)。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(OECD TG 405、21日観察)において、全例で角膜影響がみられ、1例の角膜混濁は21日後まで持続した(角膜混濁スコア:1/1/1/1/1/1、虹彩炎スコア:0.3/0/1/1.7/1.3/0.7、結膜発赤スコア:1/1.3/0.7/0.7/0.3/1.3、結膜浮腫スコア:0.3/0.3/0.3/0/0.3/0)との報告がある(ECHA RAC Opinion (2019)、CLH Report (2018)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2022))。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない
皮膚感作性
PATTY(6th, 2012)では、モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において「皮膚感作性に対する可能性が示されない」との結果が2件報告されている。また、SIDS(2005)では、ヒトへの影響として、501人の患者でパッチテストを行った結果、「感作性なし」の報告があり、2,736人の患者でパッチテストを行った結果、「感作性なし」の報告がある。以上の情報に基づき、区分外とした。
生殖細胞変異原性
分類ガイダンスの改訂により、「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、In vivoではラットの骨髄細胞を用いる染色体異常試験及びマウスの骨髄細胞を用いる小核試験で陰性の結果が報告されている(SIDS(2005))。in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、遺伝子突然変異試験(hgprt遺伝子)で陰性である(SIDS(2005)、NTP DB(Access on June 2013))。
発がん性
国際機関による発がん分類は行われていない。ラット及びマウスを用いた104週間の飲水による発がん性試験において、両種及び雌雄で、投与群に腫瘍あるいは腫瘍に関連した所見の発生増加は認められなかったとの報告がある(厚生労働省委託がん原性試験結果(Access on June 2013))。また、FDA cancer modelsでは、ラット及びマウスで雌雄とも陰性であると推定している(SIDS(2005))。以上の情報により区分外とした。
生殖毒性
マウスの経口投与による2世代繁殖試験において、親動物に一般毒性(体重増加抑制、肝臓相対重量の増加)が発現する用量で児動物に出生時体重低値が、また、親動物が死亡(雄25/32例、雌21/24例)する用量で、児動物に同腹児数及び生存率低下が見られたとの記述(SIDS(2005)、NTP DB(Access on June 2013))があるが、親動物の一般毒性影響が強く、生殖毒性影響の有無は判断できない。また、妊娠ウサギに経皮適用した試験では、母動物毒性が発現する用量で胎児に影響はみられなかったとの記述がある(SIDS(2005))。以上より、データ不足のため分類できないとした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
ラットを用いた経口投与試験で活動低下、反射及び呼吸の抑制、昏睡など中枢神経抑制作用が認められたとの記述(SIDS(2005))、並びに当該物質が魚の麻酔剤として使用されているとの記述(PATTY(6th, 2012))から区分3(麻酔作用)に分類した。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
ラットを用いた13週間の反復経口投与試験において、NOAEL=80 mg/kg/day、LOAEL=400 mg/kg/dayであり、ガイダンスの区分2を超える400 mg/kg/day以上の用量で腎臓の炎症が認められている(SIDS(2005))が、NOAELがガイダンスの区分2の範囲内であり、ガイダンスの区分2の上限での毒性影響は明確ではない。また、ウサギを用いた13週間反復経皮投与試験において、500 mg/kg/dayで皮膚の局所に紅斑が認められた以外に所見はなく、NOAEL=500 mg/kg/dayとしている(SIDS(2005))。以上より経皮では区分外に相当するが、他経路での影響が明確でないことから、データ不足のため分類できないとした。
誤えん有害性*
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。