安全データシート

塩酸アニリン

改訂日:2024-05-09版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 塩酸アニリン
  • CB番号: CB2173166
  • CAS: 142-04-1
  • EINECS番号: 205-519-8
  • 同義語: アニリン塩酸塩,塩酸アニリン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 染料原料、有機合成原料 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1(血液系、神経系)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(血液系、神経系)
生殖毒性   区分2
発がん性   区分1B
生殖細胞変異原性   区分2
急性毒性(経口)   区分4
分類実施日(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性
-

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS05GHS06GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H351 発がんのおそれの疑い。
H341 遺伝性疾患のおそれの疑い。
H318 重篤な眼の損傷。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H301 + H311 + H331 飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合や吸入した場合は有毒。
H400 水生生物に非常に強い毒性。
H372 長期にわたる、又は反復暴露による臓器 (全身毒性) の障害。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P260 粉じんを吸入しないこと。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
応急措置
P391 漏出物を回収すること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304 + P340 + P311 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
P302 + P352 + P312 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P301 + P310 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C6H7N · HCl
  • 分子量: 129.59 g/mol
  • CAS番号: 142-04-1
  • EC番号: 205-519-8
  • 化審法官報公示番号: -
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 ただちに眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ場合は水を飲ませる(多くても2杯)。ただちに医師の診察を受けること。1時間以内に治療が受けられないという例外的な状況のみ、嘔吐させ(相手に完全に意識のある場合のみ)、活性炭(10%懸濁液に20~40g)を投与してできるだけ早く医師の診察を受ける。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
可燃性。
塩化水素ガス
窒素酸化物(NOx)
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: いかなる場合も、ほこりを生じさせたり吸い込んだりしないようにすること。触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 慎重に行うこと。適切に廃棄すること。関連エリアを清掃のこと。 ほこりが生じないようにすること。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1C: 可燃性、急性毒性カテゴリー3 / 毒性化合物または慢性効果を引き起こす化合物
保管条件
密閉のこと。 乾燥。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。光に敏感である。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
許容濃度が設定されている物質を含有していない。

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 密着性の高い安全ゴーグル
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
ほこりが生じた際に必要。
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
白色。空気および光に曝露すると暗色になる。
臭い
データなし

融点/凝固点

196~202 ℃(ICSC(2001)) 198 ℃(GESTIS(2022)、PubChem(2022)) 388 °F(PubChem(2022))

沸点、初留点及び沸騰範囲

245 ℃(ICSC(2001)、GESTIS(2022)) 473 °F(760 mm Hg)(PubChem(2022))

可燃性

可燃性(ICSC(2001))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

データなし

引火点

193 ℃(Open cup)(ICSC(2001)) 193 ℃(Closed cup)(GESTIS(2022)) 380 °F(PubChem(2022))

自然発火点

データなし

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

データなし

溶解度

水: 107 g/100 ml(20℃)(ICSC(2001)) 水: 1070 g/l(25℃)(GESTIS(2022))

n-オクタノール/水分配係数

データなし

蒸気圧

30 mmHg(20℃、測定値)(Howard (1997)) 3.999 Pa(20℃、測定値)(Howard (1997))

密度及び/又は相対密度

1.22 g/cm³(20℃)(ICSC(2001)、GESTIS(2022)) 1.2215 (PubChem(2022))

相対ガス密度

4.46 (空気=1)(ICSC(2001)、PubChem(2022))

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

通常想定される。
可燃性有機物質及び製剤に概ね該当:微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性が
引火点より下のおよそ15ケルビンからの範囲は危険とみなされている。
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

アルカリ金属
次の物質との反応で爆発や有毒ガス発生の危険あり
酸化剤
次と激しく反応

10.4 避けるべき条件

強力な熱

10.5 混触危険物質

データなし

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
本物質のラットのLD50値として、840~1,070 mg/kgとの報告 (CEPA (1994)) に基づき、区分4とした。以下の健康に対する有害性に関する項目については、類縁物質であるアニリン (CAS番号 62-53-3) も参照のこと。
経皮
データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
GHSの定義における固体である。
吸入: 蒸気
GHSの定義における固体である。
吸入: 粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

データ不足のため分類できない。なお、旧分類で採用したGESTIS (Access on May 2016) は、List 3の情報源で試験ガイドラインのばく露時間より長く、ICSC (2001) は、同じくList 3の情報源で元文献の記載がないため、分類に用いなかった。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

データ不足のため分類できない。なお、旧分類で採用したGESTIS (Access on May 2016) は、List 3の情報源で元文献はList 3のRTECSでありデータの信頼性を確認できず、ICSC (2001) は、同じくList 3の情報源で元文献の記載がないため、分類に用いなかった。

呼吸器感作性

データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

データ不足のため分類できない。

生殖細胞変異原性

本物質の分類にはアニリン (CAS番号 62-53-3) のデータを含む。In vivoでは、ラットの腹腔内投与による優性致死試験で陰性及び不明確な結果の報告、マウスの腹腔内投与、経口投与、ラットの経口投与による骨髄細胞小核試験で陽性、陰性の結果、マウスの混餌投与による末梢血の小核試験で陽性、マウスの腹腔内投与による骨髄細胞染色体異常試験で陰性、ラットの経口投与による骨髄細胞染色体異常試験で陽性、陰性の結果、マウスの腹腔内投与による骨髄細胞姉妹染色分体交換試験で陽性、マウス又はラットの腹腔内投与による肝臓、腎臓、脾臓等を用いるDNA鎖切断試験、コメットアッセイで陽性、陰性の結果が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、EU-RAR (2004)、CEPA (1994)、DFGOT vol. 26 (2010)、IRIS (1990)、NTP DB (Access on June 2016))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験の多くで陽性、哺乳類培養細胞の小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験の多くで陽性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、EU-RAR (2004)、IRIS (1990)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 26 (2010)、CEPA (1994)、NTP DB (Access on June 2016))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。

発がん性

【分類根拠】 (1)~(6)より、区分1Bとした。旧分類からIARCの分類が変更されたため、発がん性項目のみ見直した(2021年)。
【根拠データ】 (1)国外の分類機関による既存分類について、IARCは(2)~(6)のデータを踏まえて従来のグループ3(IARC (1987))からグループ2Aに変更した(IARC 127 (2021))。 (2)ラットを用いた2年間混餌投与による発がん性試験において、3,000~6,000 ppmで雄に脾臓や体腔内臓器の線維肉腫又は肉腫(非特定)及び血管肉腫の発生増加がみられた。また、雄に副腎の褐色細胞腫、雌に脾臓や体腔内臓器の線維肉腫又は肉腫(非特定)の増加傾向がみられたとの報告がある(IARC 127 (2021)、NITE初期リスク評価書 (2007)、AICIS IMAP (2013)、EU RAR (2004)、IRIS (1990)、NTP TR130 (1978))。 (3)ラットを用いた2年間混餌投与による発がん性試験において、10~100 mg/kg/dayで雄に脾臓(間質性肉腫、血管肉腫)、精巣鞘膜中皮腫(30 mg/kg/dayのみ)の発生増加がみられた。なお、雌では腫瘍の発生増加がみられなかったとの報告がある(IARC 127 (2021)、NITE初期リスク評価書 (2007)、AICIS IMAP (2013)、EU RAR (2004)、IRIS (1990))。 (4)マウスを用いた2年間混餌投与による発がん性試験において、6,000~12,000 ppmで腫瘍の発生増加はみられなかったとの報告がある(IARC 127 (2021)、NITE初期リスク評価書 (2007)、AICIS IMAP (2013)、EU RAR (2004)、IRIS (1990)、NTP TR130 (1978))。 (5)本物質は生体内において塩基性化合物のアニリン(CAS番号 62-53-3)との間でpH依存性の酸-塩基平衡が成立する。したがって、発がん危険性の分類はアニリンと本物質の双方に適用できる(IARC 127 (2021))。 (6)IARCはアニリンと本物質の発がん性に関して、ヒトの証拠は不十分であるが、実験動物での証拠は十分であり、さらに機序的にヒトに対して発がん性のある芳香族アミンのクラスに属することから、グループ2Aとした(IARC 127 (2021))。
【参考データ等】 (7)アニリン(CAS番号 62-53-3)は機序的に、芳香族アミンのクラスに属し、このクラスの複数の物質(4-アミノビフェニル(p-フェニルアニリン)、2-ナフチルアミン、o-トルイジン(o-メチルアニリン)等)はグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に分類されている(IARC 127 (2021))。 (8)アニリン(CAS番号 62-53-3)のヒトの発がん性に疫学研究として、コホート研究や症例対照研究で膀胱がんの誘発を懸念する報告はあるが、いずれも本物質単独ばく露ではなく、o-トルイジン等、他の膀胱がん誘発物質との共ばく露下における研究報告に限られる(IARC 127 (2021)、DFG MAK (2018)、NITE初期リスク評価書 (2007)、EU RAR (2004)、IRIS (1990))。

生殖毒性

ヒトの生殖影響に関する情報はない。実験動物では本物質を妊娠ラットに対して妊娠7~20日に強制経口投与した試験で、母動物には10 mg/kg/day 以上で体重増加抑制及び脾臓相対重量の増加、100 mg/kg/dayで血中メトヘモグロビン濃度の上昇、赤血球数の減少、網状赤血球の増加がみられたが、胎児には100 mg/kg/day で肝臓相対重量の軽度増加と血液パラメータの僅かな変化がみられたのみで、胎児毒性や奇形は認められなかった (EU-RAR (2004))。また、母ラットに妊娠7日から分娩0日まで同様に投与し、自然分娩させ母動物は生後30日に、出生児は生後60日まで観察後にそれぞれ剖検した結果、母動物には100 mg/kg/day で脾臓相対重量の増加、血中メトヘモグロビン濃度の上昇、MCVの増加がみられたが、出生児には100 mg/kg/day まで明確な毒性影響はみられなかった (EU-RAR (2004))。一方、厚生労働省ではこのデータに対し、100 mg/kg/dayでの胎児の肝臓相対重量の増加と平均赤血球容積 (MCV) の増加が、また100 mg/kg/day投与群の出生児では生後0日にMCVの増加、生後2日に雌の体重減少がみられており、これらは発生影響とされている (厚生労働省有害性評価書 (Access on August 2016))。また、ラットに本物質を195 mg/kg/day で皮下投与した試験で、母動物にメトヘモグロビン血症 (25~42%メトヘモグロビン)、胎児に口蓋裂、心臓及び肋骨の奇形がみられ、メチレンブルーの投与により心臓異常と口蓋裂の頻度が減少することから、胎児への影響はメトヘモグロビン形成による低酸素症によると考察されている (厚生労働省アニリン有害性評価書 (Access on August 2016))。以上、厚労省のアニリン有害性評価における実験動物での発生影響に基づき、本項は区分2が妥当と判断した。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

本物質の単回ばく露のデータはない。アニリンの急性中毒はメトヘモグロビン形成に因るものであり、チアノーゼ、意識障害、呼吸困難、痙攣などを引き起こし死に至る可能性があると記載されている (ACGIH (7th, 2001)、EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2007))。実際にヒトでアニリンの誤飲や自殺企図による摂取、あるいは職業ばく露により、めまい、昏睡、錯乱、蒼白、チアノーゼ、呼吸困難などの症状が報告されており、その症状は総ヘモグロビン中に占めるメトヘモグロビンの量に依存すると記述されている (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2007))。以上より本物質もアニリンと同じ毒性影響を示す可能性があると考えられるため、区分1 (血液系、神経系) とした。なお、旧分類では 本物質がヒトに対して気道刺激作用を有するとの ICSC (2001) 及びHSFS (2003) の記載に基づいて区分3 (気道刺激性) と分類しているが、現在のガイダンスではこれらはList 3の資料となるため、区分を見直した。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

本物質は、アニリンと同様の影響を及ぼすと考えられる。 ヒトにおいて、アニリン製造工場従業員の多くにチアノーゼのほか、頭痛、めまい、嚥下困難、悪心、嘔吐、胸部及び腹部の痛み又は痙れん、脱力、動悸、不整呼吸、瞳孔収縮 (光に対する反応性あり)、体温異常、呼気及び汗のアニリン臭、暗色尿がみられ、重症時には肺浮腫、尿及び便の失禁がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。 実験動物では、本物質の経口経路及びアニリンを用いた吸入経路の試験が複数実施されており、いずれの経路においても区分1の範囲で血液系への影響 (メトヘモグロビン血症、溶血) とそれに関連する二次的影響が認められている。 以上のように主に血液系と神経系に影響が認められた (NITE初期リスク評価書 (2007)、DFGOT vol.26 (2010))。 したがって、区分1 (血液系、神経系) とした。

誤えん有害性*

データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

データなし

12.2 残留性・分解性

データなし
生分解性
結果: - 易分解性。

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1548    IMDG (海上規制): 1548    IATA-DGR (航空規制): 1548

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Aniline hydrochloride
IMDG (海上規制): ANILINE HYDROCHLORIDE
ADR/RID (陸上規制): ANILINE HYDROCHLORIDE

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

該当
ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

15. 適用法令

労働安全衛生法

該当しない

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

該当しない

毒物及び劇物取締法

劇物(指定令第2条)

船舶安全法

毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)

航空法

毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

化審法

優先評価化学物質

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
免責事項:

本MSDS中の情報は指定された製品にのみ適用され、特に規定がない限り、本製品とその他の物質の混合物には適用されません。本MSDSは、製品使用者の適切な専門的なトレーニングを受けた者にのみ製品安全情報を提供します。本MSDSの使用者は、本SDSの適用性について独自に判断しなければならない。本MSDSの著者は、本MSDSの使用によるいかなる傷害にも責任を負わない。

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