急性毒性
経口
データ不足のため分類できない。なお、ラットのLD50値として、5,680 mg/kg との報告 (GESTIS (Access on September 2014)、RTECS (Access on September 2014)) があるが、いずれもList 3の情報であり、原著による確認ができなかったため、分類には採用しなかった。新たな情報源 (GESTIS (Access on September 2014)) を追加し、区分を見直した。
経皮
データ不足のため分類できない。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
ラットのLC50値 (4時間) 120,000 mg/m3 (14,880 ppm) (RTECS (Access on September 2014))、及びマウスのLC50値 (10分間) 22,000 ppm (4時間換算値:4,510 ppm) (Sax's Dangerous Properties of Industrial Materials (2012)) との報告に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (319,842 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。新たな情報源 (RTECS (Access on September 2014)、Sax's Dangerous Properties of Industrial Materials (2012)) を追加し、区分を見直した。なお、本物質は医薬品として使用している物質のため、RTECSはList3で原著確認ができないが、RTECSの情報も含み区分を行った。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
データ不足のため分類できない。なお、過剰ばく露によって皮膚に刺激性を持つ可能性があるとの記載があるが (HSDB (Access on August 2014))、詳細不明であるため分類に用いるには不十分なデータと判断した。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギを用いた眼刺激性試験において、角膜混濁や結膜膨脹等の重度の刺激性がみられたとの報告があるが、非可逆的病変については記載がない (RTECS、元文献 (Federation Proceedings vol. 35 (1976)) 。以上の結果から区分2Aとした。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性である (ACGIH (7th, 2001)、NTP DB (Access on September 2014)、HSDB (Access on August 2014))。
発がん性
ACGIH (7th, 2001) でA4に分類されていることから、「分類できない」とした。なお、IARCでは、「Anaesthetise, volatile (揮発性麻酔剤) (Group 3) 」という分類がある(IARC Suppl 7 (1987))。
生殖毒性
妊娠期間中に10 ppmを吸入暴露したラットを用いた試験において、出生児に肝障害がみられた (ACGIH (7th, 2001)、IARC vol. 11 (1976))。この試験は1用量のみの試験であり。母動物毒性に関する記載がなかった。したがって、区分2とした。 なお、発生早期 (受胎から60日齢) に10 ppmを吸入ばく露したラットを用いた試験において、出生児に学習能の障害を起こすとの記載がある (IARC vol. 11 (1976))。 一方、交配前及び妊娠期間中のマウスに吸入ばく露した結果、妊娠及び胎児の発生の過程に影響はみられていないとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。また、妊娠期間中のラットに吸入ばく露した結果、胎児体重の減少がみられたが同腹児数、胎児の骨化、骨格変異に対照群と差はみられていないとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
本物質は吸入麻酔薬として医薬品に使用される。ヒトにおいては、肝臓への影響 (肝炎、肝機能障害)、中枢神経系の影響 (健忘症、痛覚麻痺、麻酔作用、呼吸抑制)、心血管系の影響 (不整脈、血管拡張、血圧低下、徐脈、呼吸抑制) が急性影響としてみられる。肝機能障害は臨床麻酔で時折発生し、以前にハロタンで麻酔した患者では普通にみられる。また、経口摂取により、嘔吐、胃腸炎、意識喪失、血圧低下、浅呼吸、徐脈、昏睡が報告されている (ACGIH (7th, 2001)、HSDB (Access on August 2014))。 したがって、本物質の急性影響は麻酔作用、心血管系、肝臓への影響と考えられる。実験動物のデータはない。 以上より、区分1 (心血管系、肝臓)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ACGIH (7th, 2001) にヒトでの本物質慢性ばく露による肝障害発症事例が報告されている。チェコスロバキアでの麻酔医を対象とした疫学研究において、ハロタン濃度が 2-4 ppm の手術室でばく露された麻酔医163名中頭痛、疲労などの有症状例の頻度増加がみられ、肝炎の発症例が一般人の発症頻度の3倍多くみられたとの記述、並びにハロタンの製造工場において製造に従事し、平均660 ppm のハロタンにばく露された作業者13名には、麻酔医と同様の症状がみられ、1/3の症例で血清中AST及びALT活性が正常値を上回ったとの記述がある (ACGIH (7th, 2001))。 実験動物では、ラット及びウサギに本物質 (蒸気と推定) 500 ppm を7週間吸入ばく露 (ガイダンス値換算濃度: 2.53 mg/L/6時間) した結果、肝臓に小葉中心性脂肪浸潤が生じたとの記述 (ACGIH (7th, 2001))、モルモットへの反復ハロタンばく露により肝臓に壊死を生じ、肝臓の壊死はラットにおいても肝ミクロソームの薬物代謝酵素誘導後に低酸素 (14%) 条件下でハロタンばく露により誘発できたとの記述 (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)) より、これらは分類には利用できないが、ヒトでの肝障害を支持する知見と考えられた。 以上、ヒト及び実験動物での知見に基づき、区分1 (肝臓) に分類した。なお、旧分類は実験動物での毒性情報のみで分類されたが、今回はヒトの知見も含めて分類した。
吸引性呼吸器有害性
データ不足のため分類できない。