急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(4)より、(1)は区分4上限値であることから、総合的に判断し、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)ラット(雄)のLD50:2,000 mg/kg(CERI 有害性評価書 (2009)) (2)ラット(雌)のLD50:2,200 mg/kg(CERI 有害性評価書 (2009)) (3)ラットのLD50:2,200~5,000 mg/kgの間(食安委 飼料添加物評価書 (2018)、EFSA (2011)、Canada CMP (2010)) (4)ラットのLD50:2,900~3,000 mg/kgの間(食安委 飼料添加物評価書 (2018)、EFSA (2011))
経皮
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2022年度)。
【根拠データ】 (1)ウサギを用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、閉塞適用)において、皮膚刺激性影響はみられなかったとの報告がある(GESTIS (Accessed Sep. 2022))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。なお、(1)の知見は試験条件等の詳細が不明のため、分類に用いなかった。
【参考データ等】 (1)ウサギを用いた眼刺激性試験において、軽度の眼刺激性がみられたとの報告がある(GESTIS (Accessed Sep. 2022))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1とした。
【根拠データ】 (1)慢性蕁麻疹患者における蕁麻疹の再発や悪化と皮膚を介したBHAばく露との関連性が指摘されるとともに、皮膚接触により接触性皮膚炎を生じたとの産業界における多数の症例報告があり、本物質は潜在的な皮膚感作性物質と考えられる(EFSA (2018))。 (2)548名に対するパッチテスト(2%溶液)の結果、11名で皮膚感作性影響がみられたとの報告がある(J. Am. Coll. Toxicol., 3 (5) (1984))。 (3)本物質のばく露により、ヒトの皮膚に感作反応を引き起こす可能性がある(CERI 有害性評価書 (2009))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2)より、本物質は生体にとって特段問題となる生殖細胞変異原性を示さないと考えられていることから、区分に該当しない。なお、新たな情報源が追加されたことから分類結果を見直したが、分類結果に変更はない(2022年度)。
【根拠データ】 (1)In vivoでは、ラットの生殖細胞を用いた優性致死試験及び骨髄を用いた染色体異常試験で陰性であった。また、DNA損傷試験(コメットアッセイ)は胃など一部の臓器で陽性の報告がある(食安委 飼料添加物評価書 (2018))。 (2)In vitroではネズミチフス菌(TA98、TA100、TA1535など)を用いたの復帰突然変異試験8試験及びほ乳類の培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験2試験の結果は全て陰性であった。また、チャイニーズハムスター肺由来細胞または卵巣細胞を用いた染色体異常試験(代謝活性化条件)で陽性の報告がある(食安委 飼料添加物評価書 (2018))。
発がん性
【分類根拠】 (1)のIARCでがグループ2Bとした理由は前胃腫瘍の誘発であること、(2)で実験動物(げっ歯類)における腫瘍発生部位が前胃に限られていること、(3)より、経口経路ではヒトにおける発がん性は区分に該当しないと判断ができることから区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)国内外の評価機関による既存分類として、IARCではグループ2Bに(IARC Suppl. 7 (1987))、NTPでRに(NTP RoC 15th. (2021):1991年分類)、DFGでカテゴリー3に((List of MAK and BAT values 2020):2011年分類)、それぞれ分類されている。 (2)マウス及びラットを用いた2年間混餌投与による多くの発がん性試験において、概ね1%以上で前胃の乳頭腫、2%で前胃の乳頭腫と扁平上皮がんの発生増加がみられた。また、ハムスターでも1及び2%投与群で前胃乳頭腫の発生増加がみられたが、扁平上皮がんは1%投与群の1/13例にみられただけであった(食安委 飼料添加物評価書 (2018)、EFSA (2011)、CERI 有害性評価書 (2009))。 (3)実験動物での腫瘍発生部位は前胃に限られている。本物質を投与したげっ歯類の前胃に認められた発がん性はげっ歯類に特異的なものであり、ヒトとの関連性はないと判断された(食安委 飼料添加物評価書 (2018))。
【参考データ等】 (4)ドイツの評価では、ラットの発がん性試験のうちの1試験において、中間用量の0.5%及び1%群で肝臓に非腫瘍性結節の発生頻度増加(非有意)、0.5%群では加えて肝がんが3例に認められたことから、BHTは前胃の腫瘍(ヒトに外挿できない)の可能性が示唆されることから、カテゴリー3に分類された(DFG MAK (2012)、GESTIS (Accessed Sep. 2022))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)より、区分2とした。
【根拠データ】 (1)ラットを用いた混餌投与による一世代生殖毒性試験において、試験最高用量(0.5%)まで雌雄親動物への有害影響はみられなかった。児動物には中用量(0.25%)以上で離乳時(生後30日まで)死亡率の増加、驚愕反射の遅延(行動検査)、最高用量(0.5%)群では加えて離乳時体重の有意な低下(生後42日まで持続)がみられた(食安委 飼料添加物評価書 (2018)、EFSA (2011)、CERI 有害性評価書 (2009))。
【参考データ等】 (2)ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠7~18日)において、試験最高用量の400 mg/kg/dayまで母動物、胎児ともに異常は認められなかった(食安委 飼料添加物評価書 (2018)、EFSA (2011)、CERI 有害性評価書 (2009))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2)より、(1)でみられる歩行失調状態を神経系の毒性所見と判断し、区分2の用量範囲で影響がみられることから、区分2(神経系)とした。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)マウス及びラットを用いた単回経口投与試験において、マウス、ラットとも投与約10分後から歩行失調状態となり、腹臥、呼吸促迫、運動不能となり、投与後約2時間以降から死亡がみられた。解剖では胃腸の出血と潰瘍形成、肝臓のうっ血がみられた。LD50はマウスで1,100 mg/kg(雄)(区分2の範囲)及び1,320 mg/kg(雌)(区分2の範囲)、ラットで2,000 mg/kg(雄)(区分2の範囲)及び2,200 mg/kg(雌)(区分に該当しない範囲)であったとの報告がある(CERI 有害性評価書 (2009))。 (2)動物実験によるデータは不十分であるが、神経系及び筋緊張の障害(筋力低下、息切れ、麻痺)、肝機能障害の症状が最も起こりやすいとされている。(GESTIS (Accessed Sep. 2022))
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)~(4)より、経口経路では区分に該当しない。ただし、他経路での毒性情報がなくデータ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1)イヌを用いた混餌投与による6ヵ月間慢性毒性試験において、0.25%((54 mg/kg/day(雄)、62 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)以上で肝臓重量増加がみられ、1.0%((219 mg/kg/day(雄)、231 mg/kg/day(雌)、区分に該当しない範囲)で肝機能への影響指標の変化(アルブミンの僅かな減少、アルカリホスファターゼ及びロイシンアミノペプチダーゼ活性の増加)がみられたとの報告がある(食安委 飼料添加物評価書 (2018)、EFSA (2018)、CERI 有害性評価書 (2009))。 (2)イヌを用いた混餌投与による6ヵ月間慢性毒性試験において、1.0%(約250 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)以上で肝臓影響(重量増加、エオジン好性細胞質、脂肪化、滑面小胞体の増殖、渦巻状構造)、薬物代謝酵素(混合機能オキシダーゼ、UDP-グルクロニルトランスフェラーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、エポキシドヒドラターゼ)活性の上昇)がみられたとの報告がある(EFSA (2018)、CERI 有害性評価書 (2009))。 (3)イヌを用いた混餌投与による15ヵ月間慢性毒性試験において、250 mg/kg/day(区分に該当しない範囲)で肝臓影響(肝細胞の変性/散在性の顆粒球浸潤、洞様血管の狭窄を伴う肝細胞変性、ヘモジデリンを多く含むクッパー細胞、門脈周囲に胆汁色素蓄積)がみられたとの報告がある(食安委 飼料添加物評価書 (2018))。 (4)ラットを用いた混餌投与による104週間慢性毒性/がん原性併合試験において、0.125%(54.8 mg/kg/day、区分2の範囲)で1/50例に前胃の過形成がみられたとの報告がある(食安委 飼料添加物評価書 (2018)、EFSA (2011))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。