安全データシート

2,6-ジニトロトルエン

改訂日:2024-05-09版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 2,6-ジニトロトルエン
  • CB番号: CB4223533
  • CAS: 606-20-2
  • EINECS番号: 210-106-0
  • 同義語: 2,6-ジニトロトルエン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 有機合成原料、染料中間体、トルエンジアミン原料、火薬の中間体、染料中間体 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性
自己反応性化学品   タイプG
健康に対する有害性
急性毒性 (経口)   区分3
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)   区分2
生殖細胞変異原性   区分2
発がん性   区分1B
生殖毒性   区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分2 (血液系) 区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (血液系、肝臓) 区分2 (神経系、腎臓、生殖器 (男性))
分類実施日(環境有害性)
平成28年度、GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性
水生環境有害性 (急性)   区分2
水生環境有害性 (長期間)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS06GHS08
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H301 + H311 + H331 飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合や吸入した場合は有毒。
H341 遺伝性疾患のおそれの疑い。
H350 発がんのおそれ。
H361 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い。
H373 長期にわたる、又は反復ばく露により臓器 (全身毒性) の障害のおそれ。
H412 長期継続的影響によって水生生物に有害。
注意書き
安全対策
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P260 粉じんを吸入しないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
P301 + P310 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P302 + P352 + P312 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P304 + P340 + P311 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
保管
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。
専門的な使用者に限定。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C7H6N2O4
  • 分子量: 182.13 g/mol
  • CAS番号: 606-20-2
  • EC番号: 210-106-0
  • 化審法官報公示番号: 3-446
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
医師に相談する。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸い込んだ場合、新鮮な空気の場所に移す。 呼吸していない場合には、人工呼吸を施す。 医師に相談する。
皮膚に付着した場合
石けんと多量の水で洗い流す。 直ちに被災者を病院に連れて行く。 医師に相談する。
眼に入った場合
予防措置として、水で眼を洗浄する。
飲み込んだ場合
意識がない場合、口から絶対に何も与えないこと。 口を水ですすぐ。 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

適切な消火剤
水噴霧、耐アルコール泡消火剤、粉末消火剤、二酸化炭素を使用すること。

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
窒素酸化物(NOx)

5.3 消防士へのアドバイス

消火活動時には必要に応じて 自給式呼吸装置を装着する。

5.4 詳細情報

データなし

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

呼吸保護(服)を着用。 粉じんの発生を避ける。 蒸気、ミスト、またはガスの呼吸を避ける。 十分な換気を確保する。 安全な場所に避難する。 粉じんを吸い込まないよう留意。個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環境への放出は必ず避けなければならない。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

粉じんを発生させないように留意して回収し、廃棄する。 掃いてシャベルですくいとる。 廃棄に備え適切な容器に入れて蓋をしておく。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
粉じんやエアゾルを発生させない。安全取扱注意事項皮膚や眼への接触を避けること。 粉じんやエアゾルを発生させない。安全取扱注意事項曝露を避けるー使用前に特別指示を受ける。
火災及び爆発の予防
粉じんが発生する場所では、換気を適切に行う。
衛生対策
皮膚、眼、そして衣服との接触を避ける。 休憩前や製品取扱い直後には手を洗う。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1A: 可燃性、急性毒性カテゴリー1および2 / 猛毒性危険物
保管条件
容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
許容濃度が設定されている物質を含有していない。

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
皮膚、眼、そして衣服との接触を避ける。 休憩前や製品取扱い直後には手を洗う。
保護具
眼/顔面の保護
顔面シールドおよび保護メガネ NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規
格で試験され、認められた眼の保護具を使用する。
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
化学防護服, 特定の作業場に存在する危険物質の濃度および量に応じて、保護装置のタイプを選
択しなければならない。
呼吸用保護具
リスクアセスメントによりろ過式呼吸用保護具が適切であると示されている場所では、工学的
制御のバックアップとして、N100型(US)またはP3型(EN 143)呼吸用保護具カートリッジ
付き全面形呼吸用保護具を使用する。呼吸用保護具が唯一の保護手段である場合、全面形送気
マスクを使用する。 NIOSH(US)またはCEN(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、
認められた呼吸用保護具および部品を使用する。
環境暴露の制御
安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環
境への放出は必ず避けなければならない。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
黄色または 茶色~赤色
臭い
特徴的な臭気

融点/凝固点

66℃ (HSDB (Access on April 2020))

沸点、初留点及び沸騰範囲

285℃ (分解) (HSDB (Access on April 2020))

可燃性

可燃性 (HSDB (Access on April 2020))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

該当しない

引火点

該当しない

自然発火点

該当しない

分解温度

285℃ (ICSC (2005))

pH

データなし

動粘性率

該当しない

溶解度

水:204 mg/L (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) エタノール、クロロホルムに可溶 (HSDB (Access on April 2020))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 2.10 (HSDB (Access on April 2020))

蒸気圧

5.67E-004 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020))

密度及び/又は相対密度

1.283 (水=1) (液体) HSDB (Access on April 2020)

相対ガス密度

該当しない

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

推奨保管条件下では安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

データなし

10.5 混触危険物質

酸化剤, 還元剤, 強塩基類

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【本物質の健康有害性について、分類結果が「分類できない」の場合、ジニトロトルエン (異性体混合物) (CAS番号 25321-14-6) も参照のこと。ジニトロトルエン (異性体混合物) は、健康有害性への影響を及ぼす異性体の全てを特定できていないが、情報が参考になると考えられる。】
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分3とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 177 mg/kg (MAK (DFG) vol.6 (1994)、MOE初期評価第9巻 (2011)、GESTIS (Access on April 2020)、HSDB (Access on April 2020)) (2) ラットのLD50: 180 mg/kg (ATSDR (2016)) (3) ラットのLD50: 雄: 180 mg/kg、雌: 795 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)) (4) ラットのLD50: 180~795 mg/kg (AICIS IMAP (Access on April 2020)) (5) ラットのLD50: 雄: 535 mg/kg、雌: 795 mg/kg (ATSDR (2016)、MAK (DFG) vol.6 (1994))
経皮
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分2とした。ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (0.0056 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。 旧分類の根拠データは表記ミスであり、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): 360 mg/m3 (0.36 mg/L) (CERIハザードデータ集 98-15② (1998)) (2) ラットのLC50 (6時間): 雄: 240 mg/m3 (4時間換算値: 0.36 mg/L)、雌: 660 mg/m3 (4時間換算値: 0.99 mg/L) (NITE初期リスク評価書 (2005)) (3) ラットのLC50 (6時間): 240 mg/m3 (4時間換算値: 0.36 mg/L) (MOE初期評価第9巻 (2011)) (4) ラットのLC50 (6時間): 430 mg/m3 (4時間換算値: 0.645 mg/L) (NITE初期リスク評価書 (2005)) (5) 本物質の蒸気圧: 0.000567 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 0.0056 mg/L)

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験 (ドレイズ法) で刺激性を示さない (厚労省リスク評価書 (2009)、MAK (DFG) vol.6 (1994)、ACGIH (7th, 2001))。 (2) 本物質 (用量不明) をウサギに 適用した皮膚刺激性試験で、軽度の刺激性を示す (NITE初期リスク評価書 (2005) 、ATSDR (2016))。 (3) 本物質は皮膚刺激物である (HSDB (Access on April 2020))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ウサギを用いた眼刺激性試験 (ドレイズ法) で本物質を含むジニトロトルエンの6 つの異性体は全てウサギの眼に対する刺激性を示さなかった (厚労省リスク評価書 (2009)、MAK (DFG) vol.6 (1994)、ACGIH (7th, 2001))。 (2) ウサギの眼に 2,4-又は本物質 (濃度不明) を適用した眼刺激性試験で、刺激性はみられなかった (NITE初期リスク評価書 (2005))。 (3) 本物質はウサギの皮膚及び眼に対して刺激性を示さない (GESTIS (Access on April 2020))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1) より、陽性率が30%未満のため、区分に該当しないとした。新たなデータが得られたことにより、分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質のモルモット (10 匹、性別不明) を用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) で陽性率は20%と報告されている (厚労省リスク評価書 (2009)、NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016)、MAK (DFG) vol.6 (1994)、GESTIS (Access on April 2020)、AICIS IMAP (Access on April 2020))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)、(2) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、ラット肝細胞の不定期DNA合成試験、ラット及びマウスのDNA結合試験 (複数の臓器)、ラットの肝細胞や末梢血を用いたコメットアッセイで陽性の報告が複数ある (ATSDR (2016)、IARC 9 (1975)、NITE初期リスク評価書 (2005))。また、ラット末梢血及び骨髄細胞を用いた染色体異常試験と小核試験で陰性の報告がある (ATSDR (2016))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性及び陰性の報告、ほ乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陰性の報告がある (同上)。また、ラットのセルトリ細胞を用いたコメットアッセイで陽性の報告がある (ATSDR (2016))。
【参考データ等】 (3) EU CLP分類でMuta. 2に分類されている (EU CLP分類(Access on April 2020))。

発がん性

【分類根拠】 (1) の既存分類では、IARCで2B、産衛学会で第2群Bに分類されている一方、EU CLPでは1Bに分類されている。(2)、(3) の実験動物の結果から本物質は非常に強い肝発がん物質であると示唆されており、IARCの古い分類結果に従えば区分2となるが、実験動物の結果及びEU CLPの分類結果を踏まえて、区分1Bとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCで2B (IARC 65 (1996))、EU CLPでCarc.1B (EU CLP分類 (Access on April 2020)) に分類されている。また、産衛学会では2, 4-(または 2, 6-)DNT (CAS番号 121-14-2) として第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (1998年提案))、EPAで2,4-/2,6-Dinitrotoluene mixtureとしてB2 (probable human carcinogen) (IRIS (1990)) に分類されている。 (2) 雄ラットに、2,4-DNT (CAS番号 121-14-2)、本物質、工業用ジニトロトルエン (2,4-DNT 76%、本物質18%) を52週間混餌投与した試験で、2,4-DNTは1/20に肝腫瘍性結節がみられただけであったが、本物質では肝細胞がん又は肝腫瘍性結節の用量依存的な発生率の増加に加え、肝腫瘍の肺への転移、胆管がんがみられた (IARC 65 (1996)、MOE初期評価第9巻 (2011))。一方、工業用ジニトロトルエンでは、肝腫瘍性結節、肝細胞がん、胆管がんがみられたが、本物質に比べて発生率は低く、肺への転移もなかった。この結果から、本物質には発がん性があり、工業用ジニトロトルエンの発がん作用のほとんどがそれに含まれる本物質で説明できることが示された (MOE初期評価第9巻 (2011)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2016))。 (3) 肝臓のγ-GTP陽性細胞巣を指標とし、ラットにジニトロトルエンの各異性体 (2,3-DNT、2,4-DNT、2,5-DNT、本物質、3,4-DNT、3,5-DNT) 及び工業用ジニトロトルエンを投与して実施したイニシエーション-プロモーション試験の結果、本物質及び工業用ジニトロトルエンで弱いイニシエーション活性を認めたが、その他の異性体でイニシエーション活性はみられなかった (MOE初期評価第9巻 (2011)、NITE初期リスク評価書 (2005))。また、ジニトロトルエンのプロモーション活性の有無を検討するために、雄ラットにN-ニトロソジエチルアミンの単回腹腔内投与2週間後から2,4-DNT、本物質、工業用ジニトロトルエンを混餌投与し、肝臓のγ-GTP陽性細胞巣を指標とした試験系では、いずれの物質もプロモーション活性を認め (MOE初期評価第9巻 (2011)、NITE初期リスク評価書 (2005))、本物質の活性は2,4-DNTよりも約10倍高かった。これらの結果から本物質は肝臓に対する完全発がん物質 (complete hepatocarcinogen) であると考えられた (MOE初期評価第9巻 (2011))。
【参考データ等】 (4) ヒトでは本物質と2,4-DNTの混合物にばく露された作業者の間に肝臓及び胆嚢の発がんリスクの増加が米国の作業者を対象としたコホート研究でみられたとする報告と、このような発がんリスクの増加は検出されなかったとの報告があり、結果に一貫性がなく、IARCでは本物質を含むジニトロトルエン類の発がん性に関するヒトでの証拠は不十分であると結論された (IARC 65 (1996))。

生殖毒性

【分類根拠】 標準的な生殖発生毒性試験データはないが、(1)、(2) より、ラット、マウス又はイヌに雄性生殖器毒性がみられ、(3) より、本物質の異性体である2,4-ジニトロトルエン (2,4-DNT、CAS番号 121-14-2) において、雄性生殖器毒性に関連すると考えられる生殖能に対する影響がみられたことから区分2に分類されている。したがって、本物質についても区分2とした。
【根拠データ】 (1) ラット、マウス、イヌを用いた強制経口投与による13週間反復投与毒性試験において、精巣の変性、精子形成能の低下等がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005)、MOE初期評価第9巻 (2011))。 (2) 種々のDNT異性体 (2,3-DNT、2,4-DNT、2,5-DNT、本物質、3,4-DNT、3,5-DNT) について雄ラットを用いた14日間反復投与毒性試験が実施された。その結果、2,4-DNT、本物質及び3,5-DNTで雄性生殖器に影響 (精巣の矮小、精巣の重量減少、精細管の変性及び精巣における多核巨細胞形成等) がみられ、2,4-DNTでは142 mg/kg/day、本物質では68 mg/kg/day、3,5-DNTでは19 mg/kg/dayで同様な影響がみられた。一方、2,3-DNT、2,5-DNT及び3,4-DNTでは、雄性生殖器に影響 (精巣及び精巣上体の重量及び病理組織学的影響等) はみられていない (ATSDR (2016))。 (3) 2,4-DNTでは、雄性生殖器毒性に関連すると考えられる生殖能に対する影響が親動物毒性用量でみられていることから、本年度 (2020年度) 分類において区分2に分類している。
【参考データ等】 (4) EU CLP分類ではRepr. 2に分類されている (EU CLP分類 (Access on April 2020))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 異性体混合物であるジニトロトルエンのヒトへの影響について、本物質の関与は部分的と考えられ、本項分類に利用可能なヒトの報告はない。(1)、(2) より、区分2 (血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。情報源の情報を見直し、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットに本物質のエアロゾルを6時間吸入ばく露した試験で、0.196 mg/L (4時間換算値: 0.294 mg/L、区分1の範囲) 以上で呼吸異常、運動失調、嗜眠及び死亡例がみられ、死亡動物では肺のうっ血及び相対重量増加が認められた (ATSDR (2016)、NITE初期リスク評価書 (2005))。 (2) 実験動物において本物質の急性毒性は2,4-DNTよりも高く、ネコを用いた試験ではメトヘモグロビン形成は2,4-DNTほど顕著でないが、呼吸中枢の抑制を含む中枢神経抑制は明らかであるとの記載がある (GESTIS (Access on May 2020))。
【参考データ等】 (3) ジニトロトルエンの一般的な組成は、2,4-DNTが約75%、本物質が約20%である (NITE初期リスク評価書 (2005))。 (4) ジニトロトルエンの情報として、ヒトでの急性中毒はメトヘモグロビン形成によって生じ、チアノーゼ、頭痛、過敏症、めまい、虚弱、吐き気、嘔吐、呼吸困難、嗜眠、意識喪失を引き起こし、死に至る可能性もあるとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。 (5) ジニトロトルエンの情報として、実験動物での急性毒性には、中枢神経抑制、呼吸抑制、筋肉協調運動障害、チアノーゼが含まれるとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。 (6) ラットに本物質を腹腔内投与した試験で、55 mg/kg以上で死亡、肝臓では広範囲の小葉中心性の出血性壊死がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。 (7) ネコに本物質を腹腔内投与した試験で、60 mg/kg 以上で嘔吐、伸展痙攣、後肢の硬直、瞳孔散大、糞・尿の失禁などの神経障害、メトヘモグロビン量、ハインツ小体形成の増加がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1 (血液系、肝臓)、区分2 (神経系、腎臓、生殖器 (男性)) とした。
【根拠データ】 (1) マウスに本物質を13週間混餌投与した結果、51~55 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で摂餌量の減少、体重増加抑制、死亡、脾臓の髄外造血の亢進、精巣の萎縮、精子形成能の低下、胆管上皮の過形成がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016))。 (2) ラットに本物質を13週間混餌投与した結果、35~37 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で摂餌量の減少、体重増加抑制、ALTの上昇、メトヘモグロビン血症、血小板の増加、脾臓の髄外造血の亢進、精巣の萎縮がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016))。 (3) ラットに本物質を1年間混餌投与した結果、7 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で体重増加抑制、肝臓重量及びALTの増加、14 mg/kg/day (区分2の範囲) でγGTの増加を認め、胆管上皮過形成、肝細胞の変性及び空胞化は7 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上の群のほとんどでみられた (MOE初期評価第9巻 (2011))。 (4) イヌに本物質を13週間強制経口投与した結果、4 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で脾臓の髄外造血の亢進、20 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上で食欲減退、体重減少、強直、痙攣、麻痺、貧血、メトヘモグロビン血症、血小板の増加、リンパ球の減少、ALPの増加、ALTと尿素窒素の増加、胆管の上皮の過形成、肝臓の変性・炎症、腎臓の変性・炎症、精巣の萎縮がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2016))。
【参考データ等】 (5) ジニトロトルエンの一般的な組成は、2,4-DNTが約75%、本物質が約20%である (NITE初期リスク評価書 (2005))。 (6) 職業ばく露研究及び動物試験の結果から、ジニトロトルエンにより引き起こされる最も敏感な標的毒性は血液毒性 (メトヘモグロビン血症、貧血、及び代償性造血) 及び神経系への影響 (神経毒性を示す臨床所見、運動失調、振戦、脚の衰弱、痙攣) である。動物試験では、高用量では肝臓、気道、及び生殖器への影響も示されている (ATSDR (2016))。 (7) 入手可能なヒトの情報は、適切な対照群が含まれておらず、ばく露濃度も報告されていないため、限定的な証拠である (ATSDR (2016))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
LC50 - Pimephales promelas (ファットヘッドミノウ) - 17.2 - 50 mg/l - 96.0
h
ミジンコ等の水生無脊 椎動物に対する毒性
EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 21.70 mg/l - 48 h
藻類に対する毒性
EC50 - Desmodesmus subspicatus (緑藻) - 11.00 - 20.00 mg/l - 72 h

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

長期継続的影響によって水生生物に有害。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
免許を有する廃棄物処理業者に、余剰物で再使用不可の溶液として処理を依頼する。 可燃性溶剤に溶解または混合し、アフターバーナーとスクラバーが備えられた化学焼却炉で焼却する。汚染容器及び包装製品入り容器と同様に処分する。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 3454    IMDG (海上規制): 3454    IATA-DGR (航空規制): 3454

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): DINITROTOLUENES, SOLID
IMDG (海上規制): DINITROTOLUENES, SOLID
IATA-DGR (航空規制): Dinitrotoluenes, solid

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

酸化剤, 還元剤, 強塩基類

15. 適用法令

労働安全衛生法

-

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【200 ジニトロトルエン】

毒物及び劇物取締法

-

化学物質審査規制法

旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号412 ジニトロトルエン(平成23年4月1日をもって廃止)】 旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)【旧番号25 ジニトロトルエン(平成23年4月1日をもって廃止)】

消防法

第5類自己反応性物質、ニトロ化合物(法第2条第7項危険物別表第1・第5類)【3 ニトロ化合物】

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【5 ニトロ化合物】

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】3454 ジニトロトルエン(固体)】

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】3454 ジニトロトルエン(固体)】

海洋汚染防止法

有害液体物質(X類物質)(施行令別表第1)【35 ジニトロトルエン】 個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】3454 ジニトロトルエン(固体)】

大気汚染防止法

有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【86 ジニトロトルエン】

化審法

(取消)優先評価化学物質

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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