急性毒性
経口
ラットを用いた経口投与試験(OECD TG 401、GLP)のLD50値495 mg/kg(雌) (SIDS (2005)、 NICNAS (2001)、IUCLID (2000)) から区分4とした。 なお、EU分類はXn; R22(EU-Annex I)であり、区分3-4に相当する。
経皮
ラットを用いた経皮投与試験(OECD TG 402、GLP)のLD50値>2,000 mg/kg (SIDS (2005)、NICNAS (2001)、IUCLID (2000)) から区分外とした。
吸入
吸入(粉じん): ラットを用いた4時間吸入ばく露試験(OECD TG 403、GLP)のLC50値は>2.95 mg/L (SIDS (2005)、NICNAS (2001)、IUCLID (2000)) である。固体より、粉じん基準を適用すると、区分を特定できないので分類できない。
吸入(蒸気): データがないので分類できない。
吸入(ガス): GHS定義上の固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
皮膚腐食性・刺激性
動物については、非希釈液をウサギに塗布した4時間皮膚刺激性・腐食性試験(OECD TG 404、GLP)で、「紅斑/浮腫の平均スコア値は0」(SIDS (2005))、「24時間以内に消失する浮腫がみられた」 (NICNAS (2001))旨の記述がある。ヒトについては、本物質の5%水溶液を適用したパッチテスト、本物質の17.5%水溶液を4時間適用した試験でいずれも「刺激性あり」(SIDS (2005)) の旨の記述がある。SIDS (2005)は結論として、ウサギについては「slightly irritating」としているが、ヒトについては本物質の5%以上の水溶液で「can cause skin irritation」と記述している。以上より区分2とした。 なお、EU分類はXi; R36/37/38(EU-Annex I)であり、区分2-3に相当する。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
動物については、ウサギを用いたDraize試験(OECD TG 405、GLP)で、「適用後48時間の間は結膜炎の症状がslight to mildで認められた」(SIDS (2005))旨の記述がある。また、同じ試験について、「結膜炎および虹彩炎がslight to mild で認められた試験結果より、文献の著者は『本物質は眼刺激性である』と結論している」(NICNAS (2001)) 旨の記述もある。以上より区分2Bとした。 なお、EU分類はXi; R36/37/38(EU-Annex I)であり、区分2に相当する。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:動物については、モルモット20匹を用いたmaximization試験(OECD TG 406)で、「経皮では陰性ではあるが、皮下では20匹とも陽性なので疑わしい」(SIDS (2005))旨の記述がある。ヒトについては、パッチテストで「美容師の49人中12人が陽性であった」(SIDS (2005))旨の記述があり、さらに、美容師に職業ばく露として、「湿疹、皮膚病、吹き出物がみられた」(SIDS (2005))、「アレルギー性皮膚炎がみられた」(NICNAS (2001))旨の記述があり、SIDS (2005)は「ヒトでの試験報告は、本物質が職業ばく露で皮膚感作性物質であることを示す」と結論している。以上より、区分1とした。 なお、EU分類はXi; R42/43(EU-Annex I)であり、区分1に相当する。また、ドイツMAKリストの表示はSah(ACGIH-TLV/BEI(2005))である。
呼吸器感作性:ヒトについては、in vivo 免疫学的試験(皮膚プリック試験)で「製造工場従業員の52人中3人が本物質のみに陽性、2人が類縁物質のペルオキソニ硫酸ジカリウム (CAS No. 7727-21-1、以降ジカリウム塩と記述する) のみに陽性、3人が本物質とジカリウム塩両方に陽性であった。陽性結果と肺機能のわずかな低下には相関傾向がみられた」(SIDS (2005)) 旨の記述がある。また、SIDS (2005)では、美容師に職業性喘息の報告もあり、「ヒトでの試験報告は、本物質が職業ばく露で呼吸器感作性物質であることを示す」と結論している。以上より、区分1とした。 なお、EU分類はXi; R42/43(EU-Annex I)であり、区分1に相当する。また、ドイツMAKリストの表示はSah(ACGIH-TLV/BEI(2005))である。
生殖細胞変異原性
in vitroの変異原性試験(チャイニーズハムスター線維芽細胞を用いた染色体異常試験、ネズミチフス菌と大腸菌を用いたAmes試験)でそれぞれ「陰性」(SIDS (2005)、NICNAS (2001)) との記述があるが、in vivo試験のデータがないので分類できない。 なお、類縁物質であるペルオキソニ硫酸ジナトリウム (CAS No. 7775-27-1) では、in vivoの変異原性試験(マウス赤血球を用いた小核試験)、in vivoの遺伝毒性試験(ラット肝細胞を用いたUDS試験) でそれぞれ「陰性」(SIDS (2005)、NICNAS (2001)) との記述がある。
発がん性
主要な国際的評価機関による評価がなされておらず、データが不足しているので分類できない。 なお、雌マウスを用いた51週間経皮投与試験について「本物質には皮膚がんプロモーター活性はない」(SIDS (2005))旨の記述と、「本物質に起因する皮膚がん形成のデータはあるが、試験群の規模が小さく、投与方法がガイドラインに沿ったものではないため、最終的な結論を下すことはできない」(NICNAS (2001))旨の記述がある。
生殖毒性
ラットを用いた生殖・発生毒性スクリーニング試験 (OECD TG 421、GLP) において、「最高用量である 250 mg/kg まで受精能、受精率、胎児異常、胎児生存率、精子形成、精子形成周期に影響はみられなかった」 (SIDS (2005)) 旨の記述がある。 しかし、この試験では児動物の催奇形性のデータが不十分である。他の試験データもないため、分類できない。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ラットを用いた単回経口投与試験(OECD TG 401、GLP)で、「振戦、流涎、流涙、蒼白、自発運動の低下、運動失調が認められた。これらの症状は、生存動物においては5日以内に回復した」(SIDS (2005)) 旨の記述がある。この影響は区分2のガイダンス値の範囲内で見られた。また、ラットを用いた4時間吸入ばく露試験(GLP)で、「呼吸困難がみられた」(SIDS (2005)) 旨の記述がある。結論として、「本物質は職業ばく露で気道刺激性であることを示す」(SIDS (2005))旨の記述もある。以上より、区分2 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。 なお、ICSC(2001)には、「短期ばく露の影響 : ・・・気道を刺激する。粉じんを吸入すると、喘息様反応を引き起こすことがある」旨の記述がある。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
動物については、ラットを用いた13週間吸入ばく露試験(OECD TG 413、GLP)において、区分1のガイダンス値の範囲内で、「雌でラ音の増加、呼吸数の増加」(SIDS (2005))が、区分2のガイダンス値の範囲内で、「雌でヘモグロビン値およびヘマトクリット値の増加、気管の炎症、雄雌でラ音の増加、呼吸数の増加、体重減少、体重増加抑制、摂餌量の減少、肺の絶対および相対重量の増加、脳の相対重量の増加、気管支の炎症、気管支内の過度の粘液分泌、重大な症状として肺胞組織球症」(SIDS (2005))がみられた旨の記述がある。以上より、区分2(呼吸器系)とした。 なお、ICSC(2001)には、「長期または反復ばく露の影響 : 反復または長期の吸入により、喘息を引き起こす」旨の記述がある。
吸引性呼吸器有害性
データがないので分類できない。