急性毒性
経口
ラットのLD50値として、320 mg/kg (環境省リスク評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011))、340 mg/kg (SIDS (2013))、500-1,000 mg/kg (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on July 2014)、SIDS (2013))、200-2,000 mg/kg (SIDS (2013))、2,700 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) との5件の報告がある。ガイダンスの改訂により、最も多くのデータ (3件) が該当する区分4とした。なお、残りは区分3又は区分4、及び区分5にそれぞれ該当する。
経皮
ウサギのLD50値として、5,560 mg/kg (SIDS (2013)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。なお、ラットのLC50値 (4時間) として、> 1.78 mg/L (環境省リスク評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011)、SIDS (2013)) との報告があるが、区分を特定できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG 404) において、未希釈の本物質0.5 mLの3分間適用により、投与後1時間後に中等度から重度の浮腫がみられ、7日後には軽度の浮腫がみられたことから腐食性物質と判断されている (SIDS (2013))。またウサギを用いた別の試験において腐食性の報告がある (SIDS (2013))。さらに、 職業ばく露において薬傷を起こしたとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。以上より、区分1とした。なお、動物試験ではスコア等の詳細について記載がないため細区分はしなかった。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギを用いたドレイズ試験において、未希釈の本物質0.5 mLを眼に適用した結果、腐食性を示した (SIDS (2013))。また、ウサギを用いた別の試験において、眼に重度の損傷がみられた (ACGIH (2001)) との報告がある。以上より、区分1とした。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、ラット骨髄細胞の小核試験で陰性 (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2014)、SIDS (2013))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陽性 (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2014)、SIDS (2013)、NTP DB (Access on July 2014)) である。
発がん性
データ不足のため分類できない。
生殖毒性
ラットを用いた経口投与 (強制) による反復投与毒性・生殖発生毒性併合スクリーニング試験 (OECD TG 422) において、親動物毒性がみられる用量においても、生殖発生 (交尾率、受胎率、雌動物の妊娠維持、分娩及び哺育並びに産児の生存性、性比、発育及び形態) に影響は認められなかったとの報告がある (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2014)、SIDS (2013)) が、スクリーニング毒性試験であること、催奇形性を含む発生毒性に関するデータが不十分であることから分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ヒトにおいては、気道刺激性を有し (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011))、気道の軽度の炎症が生じる場合がある。経口摂取では咽頭や胸部の灼熱感、腹痛、嘔吐、ショック又は虚脱、吸入では咳、咽頭痛 (環境省リスク評価第9巻:暫定的有害性評価シート (2011)) の報告がある。 ラットでは、経口投与500-2,000 mg/kgで、自発運動低下、腹臥位、側臥位、うずくまり、歩行異常、呼吸数減少、異常呼吸音、呼吸促迫、流涎、死亡がみられ、標的器官は呼吸器及び消化器と記載している (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2014)、SIDS (2013))。また、ラットの経口投与2,000-5,000 mg/kgで流涎、眼瞼下垂、昏睡、85-1,370 mg/kgで低迷、眠気、及び呼吸数減少が報告されている (SIDS(2013))。しかし、この試験で、呼吸器への直接的な影響は異常呼吸音のみと考えられ、異常呼吸音の発生については死亡例18例中1例のみであることから、ここでは本物質の投与による影響と判断しなかった。また、消化器への影響は刺激性によるものと考えられた。 以上より、本物質は気道刺激性及び麻酔作用があると考えられ、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ラットに強制経口投与した反復投与毒性・生殖発生毒性スクリーニング試験において、60 mg/kg/day (90日換算: 28 mg/kg/day) では雄に投与期間初期に自発運動の減少が観察された以外に被験物質投与による影響はみられなかったが、300 mg/kg/day (90日換算: 140-163 mg/kg/day) では、雌に自発運動減少、よろめき歩行、腹臥位などの臨床症状、雌雄に肝臓相対重量の増加、雄に小葉中心性の肝細胞の肥大が観察された (厚労省既存化学物質データベース (Access on June 2014)、SIDS (2013))。 300 mg/kg/日投与群では明らかな影響がみられるが、区分2上限の用量での影響の有無が不明であり、この試験結果は分類に利用できない。この他には分類に利用可能なデータはなく、データ不足のため分類できない。
吸引性呼吸器有害性
データ不足のため分類できない。