急性毒性
経口
ラットのLD50値として、> 5,000 mg/kg との報告 (Health Canada REG2006-01 (2006)、EPA pesticide Fact Sheet (1999)) に基づき、区分に該当しないとした。
経皮
ラットのLD50値として、> 5,000 mg/kg との報告 (Health Canada REG2006-01 (2006)、EPA pesticide Fact Sheet (1999)) に基づき、区分に該当しないとした。
吸入: ガス
GHSの定義における固体である。
吸入: 蒸気
GHSの定義における固体である。
吸入: 粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。なお、ラットのLC50値 (4時間) として、> 4.4 mg/Lとの報告 (Health Canada REG2006-01 (2006)、EPA pesticide Fact Sheet (1999)) があるが、この値のみでは区分を特定できない。被験物質が固体であるため、粉じんの基準値を適用した。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギを用いた皮膚刺激性試験で、本物質を4時間半閉塞適用した結果、一次刺激指数PIIは0.1であり、本質的に刺激性はないと結論されている (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2012))。その他、軽度の刺激性ありとの報告 (EPA Pesticide Fact Sheet (1999)) や、本物質は皮膚に対して刺激性を持たない (Health Canada REG2006-01 (2006)) との記載がある。以上、ウサギを用いた皮膚刺激性試験における詳細な試験報告をもとに区分に該当しないとした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質0.1 mLを適用した結果、投与1時間後から軽度の発赤、浮腫又は分泌物がみられたが、48時間後には消失したとの報告がある (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2012))。また、本物質は軽度の眼刺激性を持つとの記載がある (EPA Pesticide Fact Sheet (1999)、Health Canada REG2006-01 (2006))。以上より、区分2Bとした。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】
(1)より、区分1とした。なお、新たな知見及び評価に基づき、分類結果を変更した。ECHA RAC Opinion(2013)にてSkin Sens. 1と結論したため、旧分類から皮膚感作性項目のみ見直した(2021年)。
【根拠データ】
(1)モルモット(n = 20)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406、皮内投与:6%溶液)において、陽性率は85%(17/20例)であったとの報告がある。RACはこの試験について、皮内投与量が1%以下での試験成績がないため、細区分できないとし、区分1と結論した(ECHA RAC Opinion (2013)、CLH Report (2013))。
【参考データ等】
(2)モルモット(n = 20)を用いたMaximisation試験(皮内投与:2.5%溶液)において、2例に評点1(3点満点)の変化が認められ、陽性率は10%(2/20例)と算出されたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2018)、農薬抄録 (2007))。
(3)モルモット(n = 20)を用いたBuehler試験(OECD TG 406、局所投与:100%溶液)において、惹起後30時間後の陽性率は0%(0/20例)であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2013)、CLH Report (2013))。
生殖細胞変異原性
In vivoでは、腹腔内投与によるマウス骨髄細胞の小核試験、経口投与によるラット肝臓の不定期DNA合成試験で陰性である (食品安全委員会農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2007))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験で陰性である (食品安全委員会農薬評価書 (2012)、農薬抄録 (2007))。したがって、ガイダンスに従い分類できないとした。
発がん性
国際機関による既存分類結果としては、米国EPAがNL (Not Likely to be Carcinogenic to Humans) に分類しているだけである (HSDB (Access on October 2015)、EPA (Chemicals Evaluated for Carcinogenic Potential dated on April 26. 2006))。
本物質をラットに2年間、又はマウスに1.5年間、混餌投与した発がん性試験において、高用量群 (ラット:160~200 ppm (9.7 mg/kg/day相当)、マウス:175~225 ppm (35.1~35.7 mg/kg/day相当)) では、投与期間中に雌雄に体重増加抑制、摂餌量の低値 (マウスは雄のみ) がみられたが、ラットには腫瘍発生率の増加は示されなかった。マウスでは雄で肝細胞腺腫の発生頻度が対照群の2倍の値を示した (225 ppm 群の20% (10/50) に対し、対照群では 10% (5/50)) が、統計学的に有意な増加ではなく、ラット、マウスともに発がん性は認められなかったと結論されている (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2012)、HSDB (Access on October 2015))。
以上、EPAの発がん性分類結果を基に、本項はガイダンスに従い、区分に該当しないとした。
生殖毒性
ラットに混餌投与した2世代繁殖毒性試験において、F0世代の高用量 (200 ppm) 群、F1世代の中用量 (80 ppm) 以上の群では親動物に体重増加抑制がみられたが、親動物の生殖能、F1、F2児動物の生後の成長発達に対する有害性影響はみられていない (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2012)、HSDB (Access on October 2015))。また、妊娠ラット、又は妊娠ウサギの器官形成期 (ラット: 妊娠6~15日、ウサギ: 妊娠7~19日) に本物質を強制経口投与した催奇形性試験では、ラットでは母動物に100 mg/kg/day以上で体重増加抑制、摂餌量低値、500 mg/kg/day で四肢の退色、糞量減少、膣からの褐色流出物がみられたが、胎児には被験物質投与の影響はみられなかった。また、ウサギを用いた催奇形性試験では高用量の200 mg/kg/day まで、母動物、胎児いずれも有害影響はみられなかった (食品安全委員会農薬評価書 (2012)、EPA Pesticide Fact Sheet (1999)、HSDB (Access on October 2015))。
以上、実験動物を用いた繁殖試験及び催奇形性試験結果からは生殖毒性を示唆する所見はなく、食品安全委員会の評価結果を踏まえ、本項は区分に該当しないとした。