急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)、(2) より区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:(雌) 300~2,000 mg/kg (食品安全委員会 農薬評価書 (2017)) (2) ラットのLD50:(雄) 367 mg/kg、(雌) 306 mg/kg (食品安全委員会 農薬評価書 (2017))
【参考データ等】 (3) ラットのLD50:149~835 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) (4) ラットのLD50:149~835 mg/kg (WHO, drinking-water quality 2003) (5) ラットのLD50:149 mg/kg (ACGIH (7th, 2019)、HSDB (Access on June 2019)) (6) ラットのLD50:182 mg/kg (WHO, drinking-water quality 2003)
経皮
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50:> 2,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2019)、WHO, drinking-water quality 2003) (2) ラットのLD50:(雄) 5,440 mg/kg (食品安全委員会 農薬評価書 (2017))
【参考データ等】 (3) ラットのLD50:> 1,200 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2019)) (4) ラットのLD50:> 1,200 mg/kg (WHO, drinking-water quality 2003)
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (粉じん、4時間):> 4.35 mg/L (実測濃度 (目標濃度は5.0 mg/L)) (食品安全委員会 農薬評価書 (2017))
【参考データ等】 (2) ラットのLCLo:> 4.9 mg/L (ACGIH (7th, 2019)) (3) ラットの吸入 (1時間):4.9 mg/L で死亡例なし (4時間換算値 : 1.225 mg/L) (PATTY (6th, 2012))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1) より、国連分類基準の区分3に該当し、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ウサギにおいて24時間閉塞適用では軽度の刺激性を示す (PATTY (6th, 2012))。
【参考データ等】 (2) 本物質は刺激物でも、モルモットに対する感作性物質でもない (PATTY (6th, 2012))。 (3) ウサギの皮膚に2,000 mgを適用した結果、軽度 (slight) の刺激性を示したとの報告がある (WHO (2003)、ACGIH (7th, 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) 本物質はウサギの眼に対し、軽度~中等度の刺激を示すという報告及び刺激性を示さないという報告がある (PATTY (6th, 2012))。 (2) 90%調製物はウサギの眼に対し、強い刺激を示すが14日までに回復した (PATTY (6th, 2012))
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法、0.4 gを週1回 x 3回感作、最終感作2週間後に0.4 gで惹起) において皮膚反応は認められず、陰性と判定されている (農薬抄録 (2016)、食品安全委員会 農薬評価書 (2017))。 (2) モルモットの皮膚感作性試験で陰性と報告されている (ACGIH (7th, 2019))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) よりin vitro試験では陽性結果が散見されているが、小核試験等のin vivo試験では陽性がみられていないことから、専門家判断に基づき、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウスの小核試験、染色体異常試験及び優性致死試験、ラットのUDS試験で陰性の報告がある (ACGIH (7th, 2019)、食品安全委員会 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2016))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞又はヒトリンパ球を用いた染色体異常試験で陰性又は陽性、マウスリンフォーマ試験で陽性の報告がある (ACGIH (7th, 2019)、PATTY (6th, 2012))。
発がん性
【分類根拠】 (1) の既存分類結果及び (2) よりラットの雌で乳腺腺がんの発生頻度増加が認められたことから、区分2とした。新たなデータの入手により旧分類から区分を変更した。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2019))、EPAでC (Possible human carcinogen) (EPA Cancer Annual Report (2018):分類年1991年) に分類されている。 (2) ラットに本物質 (1~50 ppm) を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験において、5 ppm以上の雌において乳腺腺がんの発生頻度の増加が認められた (食品安全委員会 農薬評価書 (2017)、ACGIH (7th, 2019))。 (3) マウスに本物質 (10~1,000 ppm) を2年間混餌投与した発がん性試験において、発生頻度の増加した腫瘍性病変は認められなかった (食品安全委員会 農薬評価書 (2017)、ACGIH (7th, 2019))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) より、ウサギで母動物毒性がみられる用量で流産、着床後胚死亡数増加がみられている。したがって、区分2とした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から区分を変更した。
【根拠データ】 (1) 雌ウサギの妊娠6~18日に経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少) がみられる用量で流産、胎児では着床後胚死亡数増加等がみられている。 (食品安全委員会 農薬評価書 (2017))。
【参考データ等】 (1) ラットを用いた経口経路による3世代生殖毒性試験において、親動物に体重増加抑制がみられたが、生殖能、児動物への影響はみられていない (食品安全委員会 農薬評価書 (2017))。 (2) 雌ラットの妊娠期間中に強制経口投与した3件の発生毒性試験では、母動物に体重増加抑制がみられる用量で胎児に影響がみられないか、わずかな影響である骨化遅延あるいは骨格変異がみられている (食品安全委員会 農薬評価書 (2017)、PATTY (6th, 2012))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1) より、区分2 (呼吸器) とした。旧分類の根拠の情報源であるRTECSは、現行ガイダンスではList 3の情報源であり、原典も確認不能のため不採用とした。新たな情報源の使用により、区分を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットの4時間単回吸入ばく露試験において、本物質の粉じん4.35 mg/L (区分2相当) のばく露で、雌雄共に血涙症、透明及び赤色の鼻汁、流涎、難呼吸及びラッセル音が認められた。雄では死亡例はなく、雌のみで死亡がみられた (雌での死亡例数の記載はないが、この試験でのLC50値が> 4.35 mg/Lとされているため、死亡は半数未満と考えられる)。剖検では顕著な肉眼所見の変化は見られなかった (食品安全委員会 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2016))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1) より区分2 (血液系) とした。なお、(2) でみられた脾臓、骨髄の所見、(3) でみられた血液所見も区分2 (血液系) を支持する所見である。新たな情報源を加えて検討を行い、旧分類を変更した。
【根拠データ】 (1) マウスに90日間混餌投与した試験で、300 ppm (ガイダンス値換算: 雄/雌: 44.1/55.1 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌でヘモグロビン、ヘマトクリット値、赤血球数等の減少がみられた (食品安全委員会 農薬評価書 (2017))。
【参考データ等】 (2) ラットに1~50 ppm を2年間混餌投与した結果、25 ppm (ガイダンス値換算: 雄/雌: 0.985/1.37 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で体重増加抑制等のほか雄で活動過多、50 ppm (ガイダンス値換算: 雄/雌: 2.06/2.81 mg/kg/day、区分1の範囲) の雄で脾臓における髄外造血、骨髄における顆粒球過形成、雌で坐骨神経の脱髄 (demyelinization) がみられたと報告されている (ACGIH (7th, 2019))。食品安全委員会農薬評価書には、25 ppm 以上の雌雄で体重増加抑制及び摂餌量減少のみが記載されている (食品安全委員会 農薬評価書 (2017))。 (3) マウスに10~1,000 ppmを2年間混餌投与した結果、1,000 ppm (ガイダンス値換算: 147 mg/kg/day、区分2超) の雌でヘモグロビン減少等がみられた (食品安全委員会 農薬評価書 (2017))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。