急性毒性
経口
GHS分類: 区分外
本物質のラットのLD50値として、2,403~4,207 mg/kg (ACGIH (7th, 2005)) に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、ウサギを用いた本物質の皮膚刺激性試験で刺激性なし (ACGIH (7th, 2005)) との情報があるが、それ以上の記載はなく詳細不明である。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、本物質ではないが、ホウ酸とホウ砂末にばく露された作業者に眼刺激性がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2005)) 。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
発がん性
GHS分類: 分類できない
本物質自体の発がん性情報はないが、ホウ酸をラット又はマウスに2年間混餌投与した発がん性試験で、発がんの証拠はなく (ACGIH (7th, 2005) 、EHC 204 (1998) 、ATSDR (2010))、ACGIHはホウ酸、又はホウ酸ナトリウムに対しA4に分類している (ACGIH (7th, 2005))。よって、本物質についても「分類できない」とした。
生殖毒性
GHS分類: 区分1B
本物質自体の生殖影響に関する報告はヒト、実験動物のいずれもない。本物質の関連物質の情報として、ヒトでは職業的にホウ酸ナトリウムにばく露された既婚男性作業者の集団から生まれた出生児数を米国の一般人既婚者からの出生児数とを標準化出生率 (SBR) により比較調査した研究において、ばく露レベルを5レベルに分けて、SBRとの相関を調べたが、両者に相関はなく、本試験条件下ではホウ酸ダストへの高レベルばく露による生殖毒性影響はみられなかったが、出生児男女の性比が通常と異なる結果 (女児が増加: 意義は不明と記載) であったと報告されている (ACGIH (7th, 2005)、EHC 204 (1998)、ATSDR (2010))。
実験動物でも本物質自体の生殖毒性影響に関する報告はないが、ホウ酸の経口経路 (混餌) での試験成績が多くあり、本物質の生殖毒性の分類に利用可能と考えられる。すなわち、ラットの3世代試験では58.5 mg ホウ素/kg/day投与群では全ペアーで不妊となり、雄の精巣萎縮、無精子症、雌で排卵阻害がみられたとの報告、マウス2世代試験では111 mg ホウ素/kg/day投与群で、同腹児数の減少、児動物の体重低値、222 mg ホウ素/kg/dayでは全例不妊であったとの報告 (ACGIH (7th, 2005)、ATSDR (2010)、EHC 204 (1998)) がある。また、妊娠雌動物を用いた経口経路 (混餌) での催奇形性試験において、マウスで母動物に毒性 (軽度腎傷害) がみられる用量で、胚吸収の増加、胎児重量の低下及び骨格奇形胎児の発生頻度増加が、ラットでは母動物に毒性影響のみられない用量から、胎児に重量低値及び骨格奇形の発生頻度増加が、さらにウサギでも母動物に摂餌量減少、膣出血が生じた用量で、出生前胎児死亡、及び奇形胎児の増加がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2005)、ATSDR (2010)、EHC 204 (1998))。
以上、本物質自体の生殖毒性に関する報告はないが、ホウ酸に関しては実験動物を用いた生殖毒性試験において、高用量投与群で不妊動物の増加がみられ、精巣毒性、卵巣機能との関連性が疑われている。また、妊娠期間中を通して、又は器官形成期に投与した発生毒性試験で、胎児に胎児毒性、及び奇形 (主に骨格) の頻度増加が生じ、ラットでは母動物に一般毒性影響のない用量から奇形の誘発が示されている。しかし、ホウ酸化合物のヒトにおける生殖毒性に関する知見は乏しく、実験動物における生殖発生毒性影響がヒトに当てはまるかどうかは不明である。よって、本項はホウ酸経口ばく露による実験動物での影響を考慮して、区分1Bに分類した。なお、本物質のEUによるCLP分類もRepr.1B とされている (ECHA, CL Inventory (2015))。