急性毒性
経口
ラットLD50値として得られた9件(150, 125, 152, 195, 250, 50, 58, 172, 116, 150 mg/kg bw)のデータ(JECFA (2001)、DFGOT Vol.5 (1993))のうち、1件が区分2、8件が区分3、に該当するため区分3とした。
経皮
ラットLD50値 1057 mg/kg及びウサギLD50値 1056 mg/kg(RTECS (2009);元文献:National Technical Information Service. (Springfield, VA 22161) Formerly U.S. Clearinghouse for Scientific & Technical Information.)はいずれも区分4に該当する。
吸入
吸入(粉じん、ミスト): データなし。
吸入(蒸気): ラットLC50値:88-174 ppm/4h (IUCLID (2000))に基づき区分2とした。なお、飽和蒸気圧濃度は4934 ppmであり「ミストがほとんど混在していない蒸気」であることからガスの基準値を適用した。
吸入(ガス): GHS定義における液体である。
皮膚腐食性・刺激性
データなし。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギの角膜に試験物質原液を適用による傷害の程度はグレード4(1~10の10段階で最も重度の場合グレード10)であり、中等度(moderate)の刺激性との評価(DFGOT Vol.5 (1993))に基づき区分2Aとした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:データなし。
呼吸器感作性:データなし。
生殖細胞変異原性
マウスに腹腔内または経口投与による、およびラットに経口投与による優性致死試験(生殖細胞を用いたin vivo経世代変異原性試験)においていずれも陰性(JECFA (2001))、および、ラットおよびマウスの骨髄を用いた小核試験(体細胞in vivo 変異原性試験)においてもいずれも陰性(JECFA (2001))の結果に基づき、区分外とした。なお、in vitroの試験については、Ames試験およびマウスのリンパ腫を用いた遺伝子突然変異試験で陽性結果(JECFA (2001))が報告されている。
発がん性
ICSCによるIARCとのエキスパートディスカッションで「3-Chloro-1,2-propanediol causes tumors in experimental animals, hence it is considered carcinogen. non-genotoxic mechanism), Agreed in 2007 probable IARC 2B.」との結論により区分2とした。なおラットに104週間飲水投与した試験において、死亡率に影響はなく、用量に関連した変化として、過形成および/または腫瘍の発生頻度が腎臓、精巣、乳腺および包皮腺で増加し、膵臓では減少が報告されているが、著者によれば、腎臓腫瘍の発生は慢性進行性腎症の発生増加に伴う二次的なものであり、精巣や乳腺などの腫瘍はホルモンの不均衡から生じた結果と考えられている(JECFA (2001))。
生殖毒性
雄ラットに10~12日間の経口投与により不妊を呈し、高用量(25 mg/kg/day)を14日間の経口投与では精巣および精巣上体の病変に加え、精子運動能の低下が観察された(JECFA (2001))。また、雄ラットに2または4週間の経口投与試験の高用量(8 mg/kg/day)群で認められた精子運動能の低下は回復したが、無投与の雌との交配では妊娠の成立が全く見られなかった(JECFA (2001))。精子の運動能に対する影響は、ラットに9日間経口投与した別の試験でも見られ、高用量群の雄の精子が雌の卵管に到達せず、卵管中の受精卵の割合の用量依存的な低下が報告されている(JECFA (2001))。以上のようにラットの経口投与により雄で明らかな受胎能の阻害が認められたことから区分1Bとした。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ラットに経口投与により、130 mg/kgで腎機能不全、260 mg/kgで急性糸球体腎炎による死亡の記載(DFGOT vol.5 (1993))があり、また、ラットに100~200 mg/kgを経口投与した別の試験で、組織学的所見として腎臓で尿細管の拡張と蛋白の沈積を伴う尿細管上皮の壊死と変性が報告され(HSDB (2002))、ガイダンス値区分1に相当する用量での変化であることから区分1(腎臓)とした。このラットに100~200 mg/kgを経口投与した試験では、不活発、頭部と足部の弛緩性麻痺、催眠の症状が観察されており、かつマウスに100~220 mg/kgを経口投与した試験でも運動失調、姿勢異常、正向反射の消失、不穏、部分的麻痺が認められている(HSDB (2002))ことに基づき、ガイダンス値からは区分1相当であるが、判定基準1b3)を満たさないList 2のデータのため、区分2(中枢神経系)とした。一方、ラットおよびマウスに吸入ばく露した試験において、両動物種とも毒性症状として軽微な気道刺激性が記載されている(HSDB (2002))ことから区分3(気道刺激性)とした。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットの経口投与試験で慢性進行性腎症が発生し、4週間投与では60 mg/kg/day(90日補正:18.5 mg/kg/day)、また、104週間投与では用量に相関し全群(1.1~35 mg/kg/day)で認められており(JECFA (2001))、その変化はガイダンス値範囲区分1に相当する用量まで及んでいることから区分1(腎臓)とした。一方、サル6匹に30 mg/kg bw/dayを6週間経口投与により、貧血、白血球減少症、重度の血小板減少症を伴う血液学的異常が示され、影響を受けた3匹中2匹が骨髄抑制により死亡したとの報告(JECFA (2001))、かつ、ラットに4週間経口投与した試験の60 mg/kg/day(90日補正:18.5 mg/kg/day)で、ヘモグロビン濃度、赤血球容積、赤血球数の有意な減少が報告されており(JECFA (2001))、これらの用量はガイダンス値範囲区分2に相当していることから、区分2(血液)とした。なお、精巣にも病理組織学的変化が報告されているが、生殖毒性として扱うため本項では分類対象としなかった。
吸引性呼吸器有害性
データなし。